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平成18年1月から、いよいよ全国規模で地方税の電子申告がスタートする。納税者の利便性を考えれば、より多くの市町村ができるだけ早期に、申告受付サービスを開始することが理想だが、「費用対効果」を考えると、なかなか思うに任せないのが現実だ。今後、市町村では目標時期をいつに定め・それまでにどんな準備を行えばいいのか――西村義行・地方税電子化協議会事務局長に聞いた。


◆地方税電子化協議会の概要について教えてください。
西村 
地方税電子化協議会は、地方税に係る電子化の推進と地方公共団体が共同で運営する地方税電子申告システム「eLTAX(エルタックス)」の開発・安定的な運用を目的として、総務省や全国知事会、全国市長会、全国町村会、全国地方税務協議会、日本税理士会連合会の協力を得て平成15年8月に設立された組織です。地方公共団体が主体的に運営している組織で、現在、47都道府県および政令指定都市が会員として参加しています。協議会ではこれまでシステム開発や地方税ポータルサイトの構築に取り組み、平成17年2月には、大阪府、岐阜県、兵庫県、和歌山県、岡山県、佐賀県の6団体において地方税の電子申告受付サービスを開始しました。続いて8月には東京都、埼玉県、神奈川県、静岡県、愛知県、島根県の六団体、さらに10月からは三重県でもサービスを開始しています。そして平成18年1月からは、残る34道府県と13の政令指定都市が申告受付サービスを開始する予定です。また、同じく1月からは「法人都道府県民税」「法人事業税」に加えて、「法人市町村民税」「固定資産税(償却資産)」の申告手続もできるようになります。
◆現在の利用状況はいかがでしょうか。
西村 
12月1日現在の利用届出件数は約6000件で、申告件数は約3000件となっています。いま、TKC全国会においては「電子申告推進プロジェクト」を立ち上げられ、国税と地方税の電子申告の普及促進にご尽力いただいていますが、「eLTAX」の利用状況を見ると、利用者のほとんどは税理士さんが関与している中小企業と推測されます。おそらく中堅・大企業では、全国の市町村へ申告できるようになるのを待っている状態ではないでしょうか。

「給与支払報告書」も電子化へ

◆いよいよ、1月からは市町村民税の電子申告がスタートするわけですね。
西村 
はい。これを機に、市町村の方にも「電子申告」をぐっと身近に感じてもらえるようになるでしょう。すでに相模原市などが協議会への参加を表明しており、早いところでは平成19年1月から申告受付サービスを開始する予定です。納税者の利便性を考えても、できるだけ多くの市町村に参加していただくことが重要で、協議会では今年度の重点活動に市町村への理解促進を掲げ、全国各地で「eLTAX」の説明会を開催しています。これまでに18か所で開催し、1500名・634団体(対象団体数は807団体)が参加されました。18年春までに市町村合併を控えているところも多く、担当者にしてみれば「説明会どころではない」というのが本音かもしれませんが(笑)、そうしたなかで8割の参加率というのは、やはり電子申告への関心が高いということでしょうね。説明会は、1月末までに予定する28地域でひと区切りし、課税事務が落ち着く初夏より再開する計画です。


◆参加者の反応はいかがですか。
西村 
やはり、費用対効果に関する質問が多いですね。地方税の電子化の目的は、「納税者の利便性向上」と「地方公共団体の税務事務の効率化」です。市町村の具体的なメリットとしては、(1)窓口受付業務の効率化、(2)容易かつ迅速な申告データの審査・検索、(3)入力事務の軽減と入力ミスの抑制、(4)基幹システムとのデータ連係による業務の効率化、(5)リアルタイムな統計処理、(6)ペーパレス化による費用削減、保管スペースの縮小――などが挙げられます。とはいえ、費用対効果の点で現状では、まだあまりメリットを感じてもらえないでしょう。そこで第2次開発では「給与支払報告書」をシステム化する計画です。19年度中の稼働を目指していますが、そうなるとほとんどの市町村で課税事務の作業軽減が図れるだけではなく、地方公共団体自身も特別a徴収義務者として職員の給与事務に活用することができます。特に「給与支払報告書」では一定期間に大量の処理が集中するため、大勢の臨時職員を雇用して対応にあたる団体も少なくありませんが、これが電子化されることで、ある政令市では臨時職員の人件費とデータ入力費用で4億円削減できると試算していますし、別の政令市でも入力費用だけで3000万円削減できると話しています。
◆確かに「給与支払報告書」が電子化される効果は大きいですね。
西村 
そうですね。同じく19年度中には「電子納税」の導入も検討しており、これらを機に20年度以降サービスを開始する市町村が急速に拡大すると見ています。なお、第2次開発については今年度中に詳細な報告書をまとめる予定ですので、ぜひそちらもご覧いただければと思います。

サービス開始に何が必要か

◆ところで、地方税の電子申告サービスを始めるために、市町村ではどんな準備が必要になるのでしょうか。
西村 
主に、ニつのシステム対応が必要となります。まずは「審査システム」の構築ですね。これは地方公共団体に設置して、「eLTAX」で受け付けた申告データなどを受信して審査などを行うシステムです。アプリケーションは協議会から提供しますので、市町村には「審査サーバ」など必要機器を用意していただくことになります。また、もう一つが「既存の税務情報システムとのデータ連係」です。これについては標準システムというわけにいきませんので、協議会が公開するインタフェース仕様に合わせて個々の団体で対応していただくことになります。また現在、ポータルセンターと各団体との間は専用回線でつないでいるため、この準備も必要ですが、これは協議会側で整備します。


◆ポータルセンターとの間は専用回線でなければならないのでしょうか。LGWANへの対応はどうですか。
西村 
LGWANへの対応は当然、視野に入れていますが、技術的な問題などもあって当面は専用回線で運用することになります。しかし、ひと口に市町村といっても、人口70万人の市から1000人以下の村まであります。そこで、できるだけ多くの団体が参加しやすいよう、これらの機器の設置については「単独導入」以外に「共同利用による導入」も可能としています。後者の「共同設置型」は、複数団体で共同利用センターを構築して審査サーバなどを設置し、各市町村にはクライアントを置いてLGWAN経由でアクセスする――いわばLGWAN―ASPに近いイメージですね。これにより個々の団体の費用負担が軽減されるのはもちろん、システムの運用・保守を民間企業等へアウトソーシングすることで小規模団体でも容易に24時間・365日のノンストップ・サービスを実現できます。ただ、いずれの場合でも、現在の地方財政の状況を考えると決して安い投資額ではありません。市町村で本格的に申告受付サービスが始まるであろう20年度に向けて、いまのうちから費用や組織体制など計画を立てておいていただきたいと思います。
◆費用という点では、協議会の会費や負担金なども発生しますね。
西村 
はい。政令指定都市を除く市町村の場合、年会費は住民基本台帳の住民一人当たり1円で算出し、最低額は1000円と定めています。また、そのほかの負担金としては、第1次開発関係費と運用関係費があります。これらは「eLTAX」の構築・運営費とシステムの開発費ですが、市町村は人口規模や税収を考慮して応能負担とし、最終的にすべての市町村が参加した場合には総額の2分の1にあたる額を負担してもらう計画です。一概にいくらと表現しづらいのですが、より具体的なモデルケースを例示するなどして、理解に努めたいと考えています。また、費用対効果の点から市町村が、よりメリットを感じられるサービスについても検討していきます。さらに、市町村からは「任意団体には入りづらい」という意見もあり、納税者の信頼確保や社会的に組織を安定させるためにも4月1日をめどに社団法人化する計画です。一方、電子申告の利用促進を図るためには納税者の理解を深めることも大切で、18年度は税理士会や商工会議所などを通じて納税者への説明会を全国で開催する計画です。
◆なるほど。電子申告を普及させるためには、納税者の利便性と市町村の利便性の両方を考えなければなりませんね。
西村 
ただ、“鶏と卵”ではありませんが、どちらが先かと問われれば、まずは納税者の利便性向上が先だと思います。納税者にとって、一度のデータ送信で複数の自治体に税金を申告できるようになれば、時間と労力を大幅に節約でき大変便利です。市町村としては、費用対効果のことを考えるとまだ参加するメリットは少ないかもしれませんが、電子申告できるところと、できないところがあるのは納税者にとって非常に不便です。昨今、「電子申請」などの利用者も増えつつありますが、その延長線上に「電子申告」「電子納税」のニーズは確実に存在しており、のんびり構えていると納税者から催促されることにもなりかねないでしょう。
◆おっしゃる通りですね。
西村 
税制調査会の『平成18年度の税制改正に関する答申』(平成17年11月25日)において、〈個人住民税については、徴収の効率化を図る観点から、所得税や介護保険料と同様に、公的年金等からの特別徴収を速やかに実施する必要がある〉という方針が掲げられ、政府も具体的な検討に入りました。協議会としても、地方税の電子化の観点からどう連携できるか検討を始めます。今後5年間で地方の税務業務は様変わりするでしょう。地方税の電子申告の実現は地方税務行政にとって画期的なことですが、これはほんのプロローグに過ぎません。納税者の利便性向上と、より高度な税務事務の執行を図るため、「eLTAX」が “地方税の総合窓口・地方税の総合ネットワーク”としてより多くの市町村に有効活用されるようになることを期待しています。

プロフィール
にしむら・よしゆき 1939(昭和14)年、福井県敦賀市出身。早稲田大学卒後、東京都庁へ入庁。主税局電子計算センター室長、世田谷都税事務所長、主税局資産税部長、主税局税制部長などを歴任。2003年8月より現職



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