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特集タイトル


今年1月に発表された「IT新改革戦略」は、2010年度までに国・地方公共団体に対する申請・届出等手続きにおけるオンライン利用率50%以上の達成を目標として掲げた。まだ時間があると、ゆったり構えている暇はない。フロントとバックオフィスのシステム連携や情報セキュリティの確保など、具体的な検討を急ぎ始める必要がある。そして何よりも大切なのは、利用者・生活者の視点で企業や住民が使いたくなるサービスをどう創造していくかだ。


もう“にわとりと卵”の話は止めよう

 「IT新改革戦略」が掲げる“オンライン利用の申請・届出等手続き”とは、公的個人認証対応の電子申請だけではなく、ID・パスワードや氏名・電話番号などによる電子的な行政手続を総称したものだ。つまり、施設案内・予約や講座・イベント申込みなど“なりすまし”問題が起こりにくい手続も含めて、オンライン利用率50%以上達成を目指すというのが本計画の意図するところなのである。
 一般に、電子申請などオンラインによる申請・手続の利用が伸びないのは「公的個人認証の普及率が低い」ためで、その公的個人認証の取得が伸びないのは「利用できるサービスが少ない」ためといわれている。認証が先か、サービスが先か、まるで“にわとりと卵”の話のようだが、本当にそれが原因なのだろうか。いま、公共施設案内・予約などのオンライン利用率は確実に高まっているが、それは“厳格な本人確認が不要”だからではなく、これらのサービスが利用者・生活者のニーズにかなったためだ。
 古いデータになるが、総務省が昨年5月に公表した「平成16年通信利用動向調査」によれば、2004年のインターネット利用者数は7948万人(前年比218万人増)で、人口普及率は62.3%、世帯普及率では86.8%に達している。世代別では、すでに90%前後が利用する13歳〜49歳のほか、50歳〜59歳が65.8%、60歳〜69歳が49%、65歳以上が17.5%と、50代以上の利用率の急伸が目立つ。
 年収別や性別、都市規模別による格差は依然として存在するものの、この調査からも分かるように電子申請・手続の“潜在ユーザー”は着実に増加しているのである。多くの市町村にとって、住民の半分以上がインターネットから申請・手続を行うなど、まるで夢物語のようだろう。だが、この潜在ユーザーたちが利用したくなるサービスを展開できれば、50%も決して達成不可能な目標ではない。

大切なのは利用者・生活者の視点

 すでに一部の市町村では「住民が利用したくなるサービス」を探るための試みがスタートしているが、個々の事例が報道等で取り上げられることはめったにない。そこで全国の市町村へ参考にしてもらおうと本特集を企画した。事例として紹介するのは、静岡県裾野市、静岡県牧之原市、沖縄県那覇市である。「TKC行政ASP/かんたん申請・申込システム」の導入団体のなかでも、特に個性的なサービス展開を指向しているところだ。
 とはいえ、ここで紹介するのはシステム利用事例ではない。あくまでも3市が取り組む「オンラインを利用した申請・届出等手続きサービス」を紹介するものだ。なお、本文中では便宜上、公的個人認証に対応した電子申請から、オンラインによる公共施設案内・予約、講座などへの申込み手続などを総括して「電子申請・手続」と表現させていただいた。
 結論から先に述べると、比較的住民から利用され、いずれの市町村でも容易に取り組める「電子申請・手続」は、講座やスポーツ教室の申込みなどだが、住民が利用したくなるサービスに「唯一の正解はない」ということだ。3市の例を見ても、他団体の模倣ではなく、また逆に奇抜さを狙うのでもなく、生活者・利用者の視点にたって地に足が着いたサービスを展開し、それが住民から受け入れられていることが分かる。
 裾野市(ケース1)では、講座申込みをはじめ「不用品バンク」や「各種行政相談」の申込みなど住民に身近な電子申請・手続サービスを指向する一方で、住民自身がボランティア登録するためのエントリーシート受付など、幅広いサービスメニューを検討している。また、そのために、全庁のクライアントパソコンへ「手のひら静脈認証装置」を順次配備するなど、電子自治体と情報セキュリティ整備を両輪で推進している事例だ。
 また、まちづくりへ住民を巻き込んでいくため、電子申請・手続の仕組みを有効活用しようとしているのが牧之原市(ケース2)だ。地域活性化策の一つとして取り組むフィルムコミッションでの映画のエキストラ募集もユニークだが、「協働推進市民フォーラムまきのはら」では参加者募集だけでなく、地域の課題解決に向けて市民と行政が一体となって考えるため、数百名を予定する参加者(市民)とのコミュニケーション手段としての活用も考えている。
 この2市と比べても、さらに一歩先行くのが那覇市(ケース3)だ。県を挙げて電子自治体構築へ力を注ぐ沖縄県のなかでもリーダー的存在だけに、電子申請・手続の利用件数も多く、今春以降さらなるサービス拡充を計画している。また、市民へのICカードリーダライタの無償配布などで利用促進を図るほか、住民参加でインターネットを活用した防犯・防災の情報共有の実証実験を行うなど、その取り組みは他団体へ一つの未来像を示しているといっても過言ではない。
 3市に共通しているのは、(1)利用者・生活者の視点にたっていること、(2)柔軟なサービス展開とともに、業務の効率化・簡素化の実現も指向していること、(3)ITを戦略的ツールとして積極活用していること――である。これぞまさに電子自治体のあるべき姿といえるだろう。こうした事例を参考に、より多くの市町村で、そのまちならではの、個性がキラリと光る電子申請・手続サービスを創造していただきたい。


―住民がITの恩恵を実感できる社会へ―
電子自治体ITセミナー開催

 3月15日、東京・麹町会館において「電子自治体ITセミナー」(主催・財団法人地方自治情報センター)が開催された。講演テーマは以下の通り(カッコ内は役職/開催当時)。▼「IT新改革戦略について」(内閣官房情報通信技術担当室・細田大造主幹)▼「第1次情報セキュリティ基本計画について」(内閣官房情報セキュリティセンター・山崎琢矢参事官補佐)▼「地方公共団体における情報セキュリティ対策について」(総務省自治行政局地域情報政策室・村岡嗣政課長補佐)
 冒頭のトークセッションでは、細田主幹が「IT新改革戦略」の概要を説明した後、対話形式で講演を進行。市町村が達成すべき目標として「オンライン利用率50%以上」「公的個人認証に対応した電子申請・受付システムの整備」を意識してほしいと強調した。
 また、「情報セキュリティ対策」について、山崎参事官補佐と村岡課長補佐の両氏が講演。情報セキュリティ事故・事件が急増している現状を踏まえ、「対処療法ではなく事故が起こることを前提に、事業継続計画も視野に入れた対策を」(山崎参事官)、「個人情報保護と情報セキュリティ対策について組織的・総合的な取り組みの一層の強化を」(村岡課長補佐)と安心・安全な電子自治体実現へ対策の拡充を求めた。





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