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“立派な舞台装置”だけじゃ使われない
電子申請で業務の簡素化・効率化はかる
CASE1 静岡県裾野市


静岡県
裾野市
DATA
住所 静岡県裾野市佐野1059番地
電話 055-992-1111
面積 138.39平方キロメートル
人口 5万3436人(H18.4.1現在)
URL  http://www.city.susono.shizuoka.jp/


右:企画部情報システム室 廣瀬篤室長 
左:企画部情報システム室 勝又晃一係長


◆このほど電子申請・手続サービスを開始されましたが、成果はいかがですか。
勝又 
以前から、厳格な本人確認を必要としない“簡易な電子申請・手続”には興味を持っていました。しかし、我々もまったく初めての経験なので、まずは市民の反応やニーズ、業務の方向性などを探ろうと、実験的に東西公民館が実施する16講座でインターネットから受講申込みを行えるようにしました。そのため特にPRも行わず、『広報すその』(3月1日発行号)へ「ホームページからも申込みができます」とアドレスを掲載しただけだったのですが、2日午前中には50代の女性から申込みが届き、1週間で40件を突破したのには驚きましたね。また、講座の特長もあるのでしょうが、申込者の年齢層も10代から60代までと幅広く、男女別でも偏りがありません。今回の結果から、行政が気づいていないところに市民のニーズがありそうだなという大きな手応えを感じました。

PRせずに、1週間で40件を突破

◆今後、どのような電子申請・手続サービスを計画されているのでしょうか。
廣瀬 
静岡県では平成19年から公的個人認証に対応した電子申請・手続をスタートする予定で準備が進んでいますが、裾野市ではこれと併行して「不用品バンク」「広報誌への写真・記事の投稿」「各種行政相談」など市民に身近な申請・手続サービスを充実させようと考えています。ほかにも、社会教育室が実施している「生涯学習人材登録」でも活用できますね。これは「私はパソコンの環境設定が得意」「植木の剪定はプロの腕前」といった特技を持つボランティアを募るもので、市民自身を登録してもらうエントリーシートの受付を研究しています。まずはこうした課金処理が発生しないものから、準備が整い次第順次スタートしようと思います。ただ、アイデアはいろいろありますが、当然、電子申請・手続には向き・不向きもあります。例えば、極端に募集人員が少ないものは公平性の点から難しいでしょう。何でもかんでもオンライン利用できるようにするのではなく、たくさんの候補のなかから何に絞るか見極めていくことが重要ですね。
勝又 そのためにも、まずは職員へ申請様式が簡単に作成できることを認知してもらう必要があります。そこでデモンストレーションを兼ねて、電子申請・手続の適用業務のアイデアを募集したのですが、こちらの申込みはゼロですね(笑)。庁内でも人事室が実施する講座・研修などでの利用が考えられるのですが…。そのため5月に実施する「電子自治体推進会議」でプレゼンテーションを行う一方、スポーツ振興室など利用効果が高い部門へ「こんなものをやってみたら」と個別に売り込んでいるところです。職員の反応を見ると戸惑いながらも関心度は高いようで、すでに健康推進室からは「健康相談」や「糖尿病予防料理教室」の参加募集をしてみようかという相談も来ています。

並行してセキュリティ体制の整備も

◆市町村にとって、電子申請・手続サービスを実施するメリットは何でしょうか。
勝又 
多くの市町村が、敬老会や検診等の各種の事業参加の確認などで郵便を利用しているかと思いますが、郵便の代わりにインターネットで返信してくれれば、後納料金が1件あたり40円以上削減できます。全体の1割でも「コスト削減」効果は高いですよね。あるいは、はがきに印刷された二次元コードを携帯電話で読み取ることで簡単に返信できるようにするなど、市民からの申請を待つのではなく、こちらから“参加を働きかける”仕掛けづくりも可能です。そして最大の利点は、フロントからバックエンドまでつながることで「情報の共有化や業務の簡素化・効率化の実現」が期待できる点でしょう。先行団体のなかには、電子申請データを紙に印刷して一般の申請と同様に処理しているところもあるようですが、それでは単なる“舞台セット”ですよね。観客から見ると豪華でも裏方の職員は大変です。メニューをいくら増やしても、職員が積極的に使いたくなるものでなければ、結果的に市民の利用率も向上しません。市民にも職員にも便利に安心して使ってもらうには、電子決裁や文書管理などとシームレスにつながる環境の整備と同時に、情報セキュリティの整備を両輪で進めることが大切だと思います。そのため裾野市では、平成17年度にクライアントへデータを保存させない“疑似シンクライアント”を構築し、また、今年度から庁内のすべてのパソコン500台へ「手のひら静脈認証装置」を順次配備するなど、サービス拡充と環境整備の両面から取り組んでいます。
◆情報システム室の仕事も変わりますね。
廣瀬 
情報システム室とは、基本的には行政の政策や市民ニーズをどう実現していくか、そのための道具は何かといった情報政策を考える部署だと思います。市民のニーズは確かにあります。これまで行政は、“電子申請”というと「本人確認をどうしよう」「誰が使うんだ」と構えていましたが、そうやって自分自身で市民との間に“見えない壁”を作っていたのかもしれませんね。また、電子申請・手続サービスは市民向けだけではなく、業務の効率化・簡素化のため市町村と県や国とのやりとりでも利用促進されることを期待しています。LGWANならば電子メールでやりとりするよりも格段に信頼性・安全性が高まりますからね。電子申請・手続は今後、全国で急速に普及していくと思いますが、従来にない取り組みだからこそ他団体の例も参考にしながら、今後もポジティブ発想でいろいろなことに挑戦して、市民の潜在ニーズを発掘していきたいと考えています。


記者の目
ITを行政経営の“武器”として有効活用する裾野市。「将来のことを考える余裕があるのも脱レガシーの効果」と勝又係長。また、廣瀬室長は「職員に電子申請・手続を使ってもらうため押し売りにも行く」と笑う。個人情報保護の観点からコンビニ収納納付書の改善を試みるなど、その発想の柔軟さは民間企業も思わず脱帽するほどだ。



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