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 昨年秋に公表された『地方自治情報管理概要』によれば、平成17年4月1日時点で「公共施設案内・予約」のオンライン化を「実施済み・開始予定」とする市町村は947団体(全体の39.2%)だった。つまり1年前までは半分以上の市町村がまったく意識していなかったわけだ。それがいまや状況は一転。にわかにサービスへの注目度が高まっている。
 背景には、やはり〈申請・届出等手続におけるオンライン利用率50%以上〉の達成を掲げた「IT新改革戦略」があるだろう。だが、最も大きな要因は「市町村の意識変化」にあったと考えられる。
 一般に、事業体がサービス戦略を見直すべきタイミングは「市場の変化が予想される時」と「市場との乖離が危機レベルに達した時」だといわれている。
 いまや多くの人々が旅行や出張へ行く際に、インターネットで切符や宿泊先の利用予約を行う。映画や娯楽施設などのチケット予約も同様だろう。もはや人々の認識では、各種施設の利用予約はネットで“できて当たり前”なのだ。
 加えて、いま市町村は、少子高齢化や財政難、あるいは団塊世代が一斉退職する2007年問題など、数多くの経営的な課題と直面している。旧態依然のままの行政スタイルでは、たちまち立ち行かなくなり、“小さな行政”への転換は必須要件となっているわけだ。
 こうしたことから、市町村のなかにサービス戦略を見直す気運が高まりつつあったところへ、「IT新改革戦略」が起爆剤となり公共施設案内・予約サービスの導入検討へ一気に火がついたのだろう。この動きは決して一部市町村に限るものではなく、今後、全国へ加速度的に拡大していくことが予想される。

住民にとっては“当然”のサービス

 さて、公共施設案内・予約サービスを検討する市町村は、3つのタイプに大別される。1つは現在、実施しているサービスのリニューアルを検討するケースだ。また、新たにサービスの開始を検討する場合は、地域特性や考え方によって「住民の利便性」と「業務の標準化の実現」のどちらに主軸をおくかで、2つのタイプに分けることができる。ともに最終的に目指すところは「住民サービス向上」であることに違いはない。ただ、そこに至るプロセスが異なるだけだ。
 本特集で紹介するのは、秋田県秋田市、静岡県富士市、埼玉県鳩ヶ谷市である。「TKC行政ASP/公共施設案内・予約システム」の導入団体のなかでも、先の3タイプの代表例といえるだろう。そのため、多くの市町村の参考となるべく、システムの利用事例ではなく、3市が考える行政のあり方と住民サービス、課題と展望へ焦点を当て紹介している。
 秋田市(ケース1)では、すでに10年前から公共施設の案内・予約サービスを実施していた。しかし、市町村合併によって増えた施設へのサービス拡大やコスト削減、また携帯電話への対応などのためシステムを刷新し、今年5月から新サービスを開始した。最初のひと月は事実上、一部のサービス提供だったにも関わらずアクセス数は1万件を突破、利用者層の裾野も確実に拡がったと話す。
 今年1月から新たにサービスを開始したのが、富士市(ケース2)だ。住民の利便性向上を重視して、最初から43施設でサービスを立ち上げた。その成果のほどは、リピーターが毎月100件ペースで増加していることからも見て取れる。また、公が管理運営する施設と併行して指定管理者についてもASPシステムの導入を進め、利用者が同じ手順で施設予約をできるようにしていくという。
 同様に新しくサービスを開始した例でも、鳩ヶ谷市(ケース3)の場合は業務の標準化・簡素化をより重視している。昨年、共通基盤システムを利用した「電子市役所」構想を打ち出し話題となったが、そうした取り組みの一環として電子市役所を市民にも“見える化”するため、市民センターで先行的にサービスを開始した。その未来像として“点から面”のサービス展開も視野に入れている。
 人口規模も地理的条件もまったく異なる3市だが、共通するのは、(1)「住民の価値の最大化」を組織の行動原理としていること、(2)そのため「住民の価値」に合わせて、行政のあり方や組織を柔軟に変えていることだ。公共施設案内・予約サービスもそうした取り組みのうちの一つであり、3市ともにいたってシンプルに“できて当たり前”だから実施しただけだと語っている。
 電子自治体の実現へ向けて、いよいよ大きく舵を切るときがきた。だが、単に各種手続の電子化を行うことばかりに目を向けると目標を誤る。重要なのは「いかに電子申請を使ってもらうか」ではなく、ここで紹介した3市のようにITを道具として「いかに住民に付加価値の高いサービスを創造するか」だ。オンライン利用率の50%以上達成は、その結果に過ぎないのである。


●こぼれ話●
情報の流出・消失への備えも

 事例記事では触れなかったが、3つの市が異口同音に指摘したのが「情報セキュリティ対策」だ。住民から送信されるデータはまさに「個人情報」で、“情報流出”への配慮は当然ながら、一方で“情報消失”への備えも欠かせない。
 そのために、庁内へ仕組みを構築するのか、ASP方式によりデータセンターを活用するのか――個々の考え方によって選択肢は異なるが、各種「電子申請・手続サービス」を始めるにあたっては、同時に情報セキュリティ体制の強化・拡充の視点も欠かせない。



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