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納税者が待ち望む「地方税の電子申告」



飯島將史税理士


地方税の電子申告が5月末で1万2000件を超えた。申告件数全体に占める割合はまだわずかとはいえ、秋田市や相模原市などが早期実施を表明するなど申告受付サービスへの関心は確実に高まっている。そうした市町村にとって最も気になるのは納税者の動向だろう。早くから国税と地方税の電子申告普及促進へ取り組んできたTKC全国会電子申告推進プロジェクトリーダー・飯島將史税理士へ現状を聞く。

◆現在の活動状況を教えてください。
飯島 
TKC全国会では〈電子申告を率先して推進することが「税理士としての社会的使命」を果たすことになる〉との認識から、平成16年4月に「電子申告推進プロジェクト」を立ち上げました。以来、全国で20のTKC地域会において、その普及促進に努めています。主な活動としては、会員(税理士・公認会計士)への電子申告実践支援ツールの提供や情報発信をする一方、16年12月と翌年6月には国税庁と地方税電子化協議会へ「電子申告制度普及のための御提案」を行いました。また、一般社会への普及啓蒙として各地の商工会議所や法人会と連携してセミナーを開催しているほか、今年4月からはテレビCMも始めました。さらに最近では電子納税の普及にも注力しており、金融機関に対してインターネット・バンキング利用料の減免措置などの協力要請を展開しています。

高まる納税者の利用ニーズ

飯島 そうした活動の成果として現在、国税の電子申告累計件数に占めるTKC会員の実践件数は、法人税申告で約82%に達し、地方税の電子申告ではほぼ100%と推計されています。また、電子申告を実践した会員が今年3月単月で2512事務所(累計では3610事務所)となりました。ここで注目されるのは1年前と比べて実践事務所が900件も増えたことですね。4月以降もこの傾向は変わらず、これは決算業務における電子申告が定着しつつあることを示していると考えています。さらに、TKC全国会のホームページ「電子申告Q&Aコーナー」へのアクセス数も20万件を突破し、これも納税者の関心の高さを示すものといえるでしょう。
◆「IT新改革戦略」では、2010年度までに申請・届出等手続のオンライン利用率50%以上達成という目標を掲げ、その重点課題に電子申告を掲げています。
飯島 
そうですね。例えば、国税では申告件数全体に占める電子申告の割合は、まだ0.3%程度ですが、今後は利用促進へ努め、法人税・所得税の申告や給与の所得税徴収高計算書など利用ニーズの高いものについては計画を前倒しして、2008年度の目標達成を目指すとうかがっています。現在、そのためのインセンティブ措置も検討されており、これらが具体化すると利用件数は一挙に高まると予想されます。ただ、納税者の利便性という点では、地方税こそ電子申告・納税の実施効果が高い。特に、複数市町村に事業所を持つ納税者にとって、申告受付サービスの早期実現は切実な願いです。全国の市町村で一斉にサービスが開始されるのが理想ですが、せめて市クラスだけでも急ぎ取り組んでほしいですね。
◆その点では、秋田市や相模原市が電子申告導入を打ち出し、藤沢市などは納付のカード決済の実証研究も始めています。
飯島 
意欲的な市町村がどんどん増えてくれることを期待しています。電子申告・納税は納税者の利便性向上となるだけでなく、市町村にとっても収税業務にかかるコスト軽減や業務の効率化・簡素化につながりますからね。サービスが開始されたら、TKC会員はこぞって利用しますよ(笑)。


まずは行動することが大事

◆電子申請という観点では、公共施設案内・予約などインターネットを利用した新サービスも徐々に広まり、住民や企業の利用件数も着実に増えています。
飯島 
そうした市町村では、申告受付サービスを実施する下地はあるわけですね。あとは意思決定だけです。のんびり構えていると納税者から催促されますよ。実際に、TKC会員でも顧問先からいわれて慌てて取り組んだという例がありましたが、同様に市町村へも納税者から「電子申告をやらないのか」との問い合わせが増えるのではないでしょうか。何か新しいことを始めようとすると必ず抵抗があります。うちの事務所でも最初はそうでしたが(笑)、「住基カードが普及していない」「費用対効果が見えない」などできない理由を並べるのではなく、まずは行動することが大切です。また、現状では残念ながら行政や公的機関であっても電子申告・納税への理解が不十分で、その対応についても広く合意されているとはいえません。国として「IT新改革戦略」を掲げる一方で、納税者が各種手続をしようとすると未だに公的機関から「受領印のある納付書」の提出を求められる。これでは矛盾していますよね。市町村職員の方には、ぜひ自分自身でも住基カードを取得して、電子申告・納税への理解を深めていただきたいですね。
◆電子申告の仕組みは理解できても、具体的なイメージが湧かない市町村も多いようで、最近、TKC全国会の活動について質問されることが増えてきました。
飯島 
ありがたいことですね。ご興味があれば、ぜひ研修会へ参加していただければと思います。また、職員研修の講師なども各地域会が喜んで支援させていただきます。市町村にとってみれば、即効的な効果が期待できないかもしれませんが、電子申告・納税は一過性の流行ではありません。その証拠にTKC全国会だけではなく、日本税理士連合会でも普及促進へ積極的に取り組み始めました。もはや電子申請実現は社会の要請であり、市町村もそうした“顧客”の変化にしっかり目を向けるべきです。市町村が応えてくれないと、地方税の電子申告・納税は普及しません。大切なのは電子申請を出発点として、よりよい地域経営を行うことであり、ぜひ早期の電子申告・納税の実現をお願いしたいと思います。



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