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公会計制度改革とは何か
新潟大学経済学部・大学院経済学研究科 助教授
桜内文城
さくらうち・ふみき 1988(昭和63)年、東京大学法学部卒、大蔵省(現財務省)入省、財政、国際通貨などを中心とした政策形成に携わる。米・ハーバード大学公共政策学修士、マレーシア・国立マラヤ大学公共政策学博士。02年より現職。『公会計革命』『公会計』など著書多数。



 新しいテクノロジーの登場によって、世の中の風景が一変することがある。古くは火薬や羅針盤の発明に始まり、蒸気機関、ガソリンエンジン、飛行機、原子力、そして近年のITなど、その影響の大きさは計り知れない。これと同様に市民革命期以降、民主的な政治制度や資本市場の発達によって人々の生活も一変した。我々が生きる現代社会は、このようなハード(テクノロジー)とソフト(社会制度)双方のたゆまざる革新の成果といえよう。
 現在、静かに進みつつある公会計制度改革は、「政府の意思決定をいかにして国民の利益の方向性に合致させるか」という古くからの政治的課題に対して、複式簿記のロジックとITのシステムによって一つの答えを出そうという試みである。
 誤解を恐れずに言えば、従来、アナログ的な感性に頼ってきた財政・金融政策について、その意思決定のプロセスとロジックを「可視化」するハードおよびソフト双方の革新ともいえる。
 その最大の目的は、国民の政府に対するガバナンスを確立すること、言い換えれば政府の財政・金融政策上の意思決定を国民の利益に合致するよう規律付けることにある。
 このような歴史的文脈のなかで、昨今の公会計制度改革の流れを見てみよう。筆者が委員等の立場で関わった主なものだけでも、2003年、『公会計概念フレームワーク』(日本公認会計士協会)、『公会計に関する基本的考え方』(財務省)、2004年、『省庁別財務書類作成基準』(財務省)、2006年、『新地方公会計制度研究会報告書』(総務省)などを挙げることができる。
 そこでは確かに、従来の予算編成の仕組みや組織の権限を維持するため、公会計制度改革を単なる決算情報の見せ方の工夫といった側面に矮小化しようとする立場、あるいは企業会計のロジックを短絡的に公会計に持ち込もうとする立場も見られた。相当厳しい意見の対立や議論の混乱もあったのは事実だが、最終的にはむしろ、上記のようなよりダイナミックな歴史的展開のなかで公会計制度改革を捉える立場から、公会計理論の精緻化と実務の蓄積が進みつつあることを評価したい。
 公会計制度改革のスピードが加速するにつれて、中央省庁や自治体における予算編成プロセスや政策決定のあり方そのものが大きく変わっていく可能性が高い。公会計制度は、いわば政府の意思決定の制度的インフラであり、その制度設計と運用の巧拙が国民生活や社会経済に大きな影響をもたらす。
 今後、中央省庁や自治体職員をはじめ、会計専門職やIT技術者の方々のより積極的な取り組みが求められている。



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