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個性豊かな“地域自治”の創造へ
始まった新生・大崎市の挑戦
宮城県大崎市


宮城県
大崎市
DATA
住所 宮城県大崎市古川七日町1番1号
電話 0229-23-2111
面積 796.76平方キロメートル
人口 13万8887人(H18.3.31現在)
URL  http://www.city.osaki.miyagi.jp/


総務部市政情報課・中村広志課長補佐


◆脱レガシーという観点から、情報システムの統合・再構築に悩む市町村が少なくないなか、今年3月に1市6町が合併して誕生した大崎市の取り組みが注目されています。改めてシステム統合の成功の秘訣を教えてください。
中村 
ポイントは、2つあると思います。まず1つ目が、合併協議会において『電算システム統合基本計画書』を策定し、6項目からなる「電算システム統合上の基本方針」を明確に打ち出したことです。具体的には、(1)合併時点でのシステムの安定稼働を最優先として統合を進める、(2)極力低コストで電算システム統合を達成する、(3)個人情報保護をはじめとするセキュリティの確保を図る、(4)統合された電算システムは、住民サービスの向上、行政事務の効率化に資するものとする、(5)合併市町の住民サービスに地域格差の生じないシステムを目指す、(6)電子自治体、地域情報化推進の基盤となるシステムを目指す――の6項目です。業者選定から実際の統合作業まで、すべてこの「基本方針」に則って行いました。
◆なるほど。
中村 
また、もう1つが、統合作業にあたって各市町1名ずつ職員を選出し、事務局の中に「専従スタッフ」を置いたことです。スタッフは、出身市町全体の取りまとめを行うとともに、それぞれが住民情報、税務情報、あるいはネットワークといった分野ごとの統括担当者として、各分科会の下部組織である業務検討会(兼任職員のチーム)やTKCとの調整を行うようにしました。つまり、縦にも横にも連携する“マトリックス型組織”とすることで、全体の意思統一を図ったわけです。これによりミスや重要なトラブルの発生を防ぐとともに、住民サービスが低下しないよう考慮しながらプロジェクトを推進することができました。

情報システムはライフライン

◆本計画では情報セキュリティの確保についても言及しています。
中村 
はい。情報セキュリティ対策については、合併後に考えるという例が多いようですが、現状を考えるとそれでは遅いと思います。例えば、合併後「業務上この情報へアクセスしたいが権限がなく困った」という場合、明確な基準がないと誰も判断できませんよね。そこで大崎市では、基本計画の段階から新システムに合わせた対策方針を決め、それに沿った情報セキュリティポリシーも策定しました。
◆そこまで徹底してシステムを重視した理由は何ですか。
中村 
いまやシステムは100%動いて当たり前で、職員にとっては“ライフライン”と同じような感覚です。それだけにシステムを構築する大変さはなかなか理解されにくいのですが、統合がうまくいかないと事務の効率が落ち、住民サービスへも支障を来します。これはシステムを再構築する場合でも同様で、重要な“ライフライン”だからこそ決してベンダー任せとせず、行政自らが考え、責任を持って実行しなければならないと思います。また、システムの開発や構築について考えてみても、これまでは主に庁内業務を意識したものでしたが、これからは住民や企業へのサービスという視点が欠かせません。特に大崎市の場合、面積が約797平方キロメートルと広大で、住民サービスの拡充にはITの有効活用が不可欠です。一方で、市内には山間部など物理的なデジタルデバイドの地域も存在するため、住民票や戸籍などの電子申請・届出等手続の環境整備と合わせて、例えば、自動交付機のように“すでに実施されている方法”を有効活用しながら、さらに住民の利便性が高まる仕組みも考えていかなければならないでしょう。

7つの魅力が調和するまちづくりへ

◆新市として「大崎ブランド」の確立などいろいろユニークな構想を掲げています。
中村 
そうですね。非常にエリアが広い分、大崎市には全国に誇れる地域資源が豊富にあります。例えば、日本を代表する「ササニシキ」や「ひとめぼれ」の発祥の地であり、「仙台牛」の産地です。また、ラムサール条約登録湿地となった「蕪栗沼」やこけしで知られる「鳴子温泉郷」を擁する一方、東北新幹線や東北自動車道など交通の要所として県内屈指の産業拠点という側面もあります。従来はこれらの“宝”が個々に存在していましたが、1市6町がひとつとなり今後は、いままで発想もしなかったような大崎ならではの付加価値を創出していこうというのが「大崎ブランド」の考え方です。また、自立したまちづくりという点では「大崎市流地域自治組織」構想を掲げ、7つの地域が持つ個性や魅力を活かし、行政だけで解決できない課題へ市民とともに取り組み始めています。
◆そうしたなかで、今後、情報システムの役割はどうなるとお考えでしょうか。
中村 
行政の本来業務でITを使うのは当然ですが、「大崎ブランド」の創造や「地域自治組織」の活性化のためのインフラとしてITの活用が十二分に考えられます。また、災害対策や子供たちの安心・安全、あるいは産業分野、医療・福祉分野などでも、いろいろな活用法があるでしょう。これについては1〜2年かけて、行政と地域全体の情報化計画を策定していきたいと考えています。しかし、こうした取り組みは行政だけが担うものではありません。目指すのは市民や企業、ボランティア、NPOなど地域が力と知恵を結集して新生大崎の未来を創造していくこと――大崎市のチャレンジはまだ始まったばかりです。そのためにITがサポートできるのは何か、考えることはまだ山ほどありますね。


担当者から
「基本計画の策定にあたり、各団体のすべてのシステムの現状調査と課題点の抽出を行った」と中村課長補佐。また、「非常に参考となった」と話すのがLASDECの『市町村合併に伴う情報システムのあり方に関する調査研究』報告書だとか。重要なのは組織全体が共通認識に立つこと。最大の成功要因はプロジェクトリーダー・中村課長補佐の視野の広さかもしれない。(井村)



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