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国が進める地方公共団体の行財政改革において、「公会計」とともに重点課題となっているのが「公共サービス改革」だ。平成18年7月に施行された、「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律(公共サービス改革法)」について、内閣府公共サービス改革推進室の佐野正悟参事官補佐へ聞く。


◆「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律(公共サービス改革法)」の狙いを教えてください。
佐野 
「公共サービス改革法」とは、公共サービスの実施について、民間にできることは民間に委ねることなどにより、サービスのあり方を見直そうという法律です。具体的には、民間に委ねるという観点から、(1)公共サービスによって利益を享受する国民・住民の立場に立って、公共サービスの不断の見直しを行い、(2)「官民競争入札」と「民間競争入札」を活用して、民間事業者の創意工夫を適切に反映させることにより、(3)国民のため、より良質で、かつ低コストの公共サービスを実現する――ことを目的としています。ただ、どのような業務であっても民間事業者へ任せるということではなく、この法律は、官と民が対等な立場で競争入札へ参加し、質・価格の面で最も優れた者が、そのサービスの提供を担う、という考え方に立っています。こうした取り組みは、一般に「市場化テスト」と呼ばれています。

すべての公共サービスが対象に

◆どのような業務が対象なのですか?
佐野 
「公共サービス改革法」に基づく官民競争入札等(いわゆる市場化テスト)では、対象業務に制限がなく、公共サービス全般をその対象とすることができます。特に、現状では法律の規制により民間事業者に実施させることができない業務であっても、その規制を解除することで、民間事業者でも業務を実施できるようにする「法律の特例」措置を「公共サービス改革法」の中に設けることを可能としています。こうした、法令の特例措置を講じないと民間事業者が実施することができない公共サービスのことを「特定公共サービス」といいます。現在、地方公共団体の業務のうち「特定公共サービス」として「公共サービス改革法」で規定されているのは、(1)戸籍謄本等、(2)納税証明書、(3)登録原票の写し等、(4)住民票の写し等、(5)戸籍の付票の写し、(6)印鑑登録証明書、それぞれの書類の交付の請求の受付及びその引渡しの6業務です。なお、「特定公共サービス」については、今後も所管省庁との協議が整ったものから順次追加・拡大を図る予定です。平成18年度は7月11日から8月10日までを「集中受付月間」として、民間事業者が実施できると考えられる業務の範囲について意見募集を行ったところ、地方公共団体をはじめ幅広い層から193件の要望をいただきました。このうち地方公共団体の業務に関しては、前述した6業務以外の窓口業務や、税金・国民健康保険料の収納・徴収など公金を取り扱う業務の要望等が提案され、12月1日現在、関係省庁と協議を行っているところです。


◆例えば、コンビニエンスストアの店頭で住民票の写しや戸籍謄本などを取得するといったことも可能となるのでしょうか。
佐野 
「公共サービス改革法」(第34条第2項等)や、各省令でそれぞれ業務を実施する民間事業者の要件等が定められていますので、それらの要件や必要項目等を民間事業者が満たせば可能ということになりますね。

厳格な手続きに基づく官民の競争

◆地方公共団体が官民競争入札等を導入するために必要なことは?
佐野 
「特定公共サービス」を対象とする官民競争入札等を導入するかどうかは、各地方公共団体の自主的な判断に委ねられていますが、これを導入する場合は、公共サービス改革法の定める手続きに基づき実施することが必要になります。具体的には、地方公共団体は「実施方針」や「実施要項」を作成し、これに基づいて入札を実施します。また、実施プロセスの要所要所で必要なチェックを行う、第三者機関である「合議制の機関」を条例に基づき設置する必要があります。
◆そこでのポイントとは?
佐野 
主なポイントとしては、まず情報の開示が求められていることです。地方公共団体は、「実施要項」において、例えば「どのような内容の業務か」「従来どれくらいのコストがかかっていたか」「どれくらいの人員を配置していたか」「どういった施設や設備を用いているか」といった、対象となる公共サービスの内容や従来の実施状況を公表することになっています。2点目が、地方公共団体は対象業務について、確保されるべき公共サービスの質、落札者等の決定のための評価基準等についても「実施要項」で規定することが必要となります。3点目は、官民競争入札等の実施プロセスの透明性・中立性・公正性を確保するために設置される合議制の機関が「実施要項」の策定、あるいは「落札者の決定」等の際に審議やモニタリングを実施することが挙げられます。
◆なるほど。
佐野 
さらに、「公共サービス改革法」では、民間事業者が落札した場合に適正な事業実施を確保する仕組みとして、受託民間事業者に対する守秘義務やみなし公務員、官による監督等が規定されているほか、地方公共団体は受託民間事業者が適切かつ確実に事業を実施しているかを監督し、適切になされていない場合には民間事業者に対する報告徴収、立入検査、指示などを行えることが規定されています。なお、法律の特例を講ずる必要がない業務(特定公共サービスに該当しない業務)を対象に官民競争入札等を実施する場合には、「公共サービス改革法」の定める手続きによらず、地方自治法に基づいて自ら規則等を定めることになりますが、その場合でも「公共サービス改革法」の趣旨を踏まえた対応が望まれます。
◆ということは、地方公共団体が方針を決定し、市場化テストの結果、落札者が事業活動を行い、地方公共団体がミスやトラブルがないことを監視して、何かあればこれを改善するという仕組みにより、公共サービスの品質の維持・向上とその継続的な改善を推進していく活動というわけですね。
佐野 
そうですね。
◆「PFI制度」や「指定管理者制度」との違いはどこでしょうか?
佐野 
大きく異なる点は、まず「対象業務の範囲」ですね。PFI制度では主に刑務所など「公共施設等の整備」が対象であり、また、指定管理者制度では体育館や公立学校といった「公の施設の管理」が対象とされています。つまり、いずれも対象業務が限定されており、この範囲内でしか民間事業者へ業務委託することができませんが、官民競争入札等では先述した通り、すべての公共サービスを対象とすることができます。また、2点目の違いは「事業者の決定方法」です。例えばPFI制度の場合、競争入札の実施が必ずしも求められているのではなく、法律上は「公募の方法」等によって事業者を選定することと規定されています。また、指定管理者制度では“指定”という行政処分によって「監理権限の委任」を行う仕組みとなっており、必ずしも競争入札の手法が用いられていません。しかし、「公共サービス改革法」では、質と価格の両方を評価する「総合評価一般競争入札」で民間事業者を選定することが法律で明記されています。


◆「民間競争入札」と通常の「民間委託」との違いは?
佐野 
「公共サービス改革法」に基づく「民間競争入札」では、適正な事業実施を確保するための措置として、「公共サービスに関する情報の開示」「第三者機関の設置」「みなし公務員」「守秘義務」といった規定を置いています。一方、通常の民間委託の場合、これらの措置は必ずしも求められていません。また、通常の民間委託では「随意契約」も可能ですが、「民間競争入札」では「随意契約」を行なうことはできないことになっています。これは、官民競争入札でも同様で、こういった非常に厳格な手続きがあることが、従来の民間委託とは異なる点といえるでしょう。

制度の活用でより良いサービスを

◆今後の展開について教えてください。
佐野 
平成19年度も、民間事業者が担うことができると考えられる業務の範囲などの意見募集を行うべく、受付期間を設ける予定です。ぜひ、そうした機会を通じて地方公共団体からの意見・要望を出していただきたいと思います。なお、内閣府では「地方公共団体における官民競争入札等のFAQ」など官民競争入札等の実施に関する情報をホームページ(http://www5.cao.go.jp/koukyo/index.html)で公開しています。これらの情報は随時更新していきますので、ぜひ注目していただきたいと思います。「公共サービス改革法」の施行によって、「公共サービス改革」への着実な一歩を踏み出しました。まだ小さな一歩かもしれませんが、この制度は、公共サービス改革の実現にあたり、非常に将来性があり、有効なものだと考えています。今後においても国や地方自治体、民間事業者などが一体となって、サービスの受益者である国民・住民の視点に立ち、民間事業者の創意工夫を適切に反映させ、継続して公共サービスの質の維持・向上、経費削減を図っていくことが大切です。すでに意欲的に行政改革へ取り組む地方公共団体も数多く、改革意識は全国へと拡がっています。こうした動きのなかで、この制度を積極的に活用してもらい、官と民が互いに切磋琢磨することで、住民のため、より良質で低コストのサービスが実現されることが大いに期待されます。



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