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特集タイトル


地方の税務行政を取り巻く環境が、大きな変革期を迎えている。この時代の荒波を乗り切るには徴収率の向上や専門性の向上、情報システムの統合などによる事務の効率化・コスト削減などと併行して、電子申告・納税の促進など納税者の利便性向上を図るための納税環境整備も欠かせない。これらを実現するために自治体はいかにあるべきか――現状と展望についてまとめてみる。


 国から地方への税源移譲が行われ、産業廃棄物に関する法定外税の創設や森林環境税としての超過課税の実施など、地方税制は新たな取り組みを進めながら転換期を迎えています。経済成長による税収の自然増はもはや期待できません。国の財政も破綻状態といわれるなか、自主財源である地方税の確保は自治体にとって死活問題となります。
 税務事務の基本は、適正・公平な課税と確実な徴収です。「税」は、不特定多数の住民へ強制的に、具体的な見返りなしに、金銭の負担を求めるものです。課税庁が税額を決定する賦課税目が多い地方税では、何よりも課税事務を適正に行うことが必要です。また、強力な自力執行権を無駄にしないよう滞納整理を進めるなど、さまざまな工夫により確実な徴収に努力しなければなりません。その上で、納税者の利便性向上を図りつつ、事務の効率化や専門性の向上など庁内における業務改善努力が欠かせません。
 そこで地方税務の分野について、今後の自治体に求められる取り組みについて、私の考えを述べてみましょう。

より便利に、早く、安く、正確に

 徴税業務は権力行政といわれていますが、広く公的サービス提供の一部門でもあり、納税者の利便性を高める努力をしなければなりません。
 税を納付する場合、これまでは役所や金融機関の窓口が中心でしたが、都市部ではATMやコンビニエンスストアでの納付が可能になっています。また、自宅等からインターネットを利用した支払手段も実現しています。さらに手数料の問題が解決すれば、クレジットカードはすぐにでも利用可能ですし、電子マネーについても(コンビニ納税ではすでに使われています)今後は広く対応されそうです。
 現在、国を挙げて電子申告等の普及が進められていますが、地方税においても電子納税を含め、電子化対応が可能な手続や参加自治体の拡大が望まれます。
 併せて、税務事務の効率化・省力化を図ることによって、経費節減という観点からも納税者にその利益が還元されます。

業務改善の努力

 かつては、経費節減よりも省力化のため電算化が行われました。しかし、今後は納税者の利便性を向上させるとともに、徴税経費も減らしていく必要があります。職員が直接やらなくても済むところは機械や外部にまかせ、貴重なマンパワーを有効活用するのです。


 そのためには、まずICTの活用です。
 市町村では、住民税や固定資産税など大量のデータ処理を必要とする賦課税目があるため、かなり早い時期から電算化が進んでいました。最近では急速な技術進歩で税務事務への活用の道も拡がり、固定資産評価や滞納整理、税務調査など、あらゆる場面でICTを活用したさらなる業務改善が可能です。
 次に、新たなビジネスとして民間事業者(委託などのアウトソーシングを含む)の活用です。
 これまで、「税」は市場化になじまないとされてきましたが、電算処理や印刷、配送など事務の一部委託という方式を用いて、すでに民間の力を用いています。個人情報の保護や税務事務のノウハウの継承、法律の制約など課題は多くありますが、最終的な課税内容の認定、処分や滞納処分など、直接公権力を行使するもの以外は業務の核心部分も含めて、今後は民間活用が拡がるものと思われます。
 これらの取り組みを進めるにあたっては、いずれも費用対効果と公平・正確な業務執行の確保との両立が鍵となります。

変化への柔軟な対応を

 少し観点は変わりますが、今後は事務処理の共同化も考える必要があります。
 自治体の住民に対する債権は税だけではなく、国民年金や国民健康保険などの公課のほか、貸付金、使用料などの私債権もあります。所管部門で債権回収努力を怠ることは問題ですし、自治体の中で別々に処理していては非効率です。このため、債権管理部門間の協力を進めてはどうでしょうか。すでに実施している自治体もあります。
 また、個人の住民税に対する道府県と市町村の徴収協力関係が進んでいます。規模の小さな団体では、特定の事務に職員を割けないため、こうした自治体間の協力も有効です。
 さらに、事務の質的な変化も忘れてはなりません。時代の流れ、技術革新へ敏感に反応して、十年一日のように見える税務行政でも工夫をしていく必要があります。
 例えば、東京都においては、特に滞納整理に関連して、ここ数年他団体の先鞭となるような新しい取り組みを行っています。「インターネット公売」「自動車のタイヤロック」「コンビニ収納」「住民税の徴収支援(都による直接徴収、職員派遣等の間接支援)」などです。他団体ですでに実施していたものもありますが、先行団体が直面していた課題等に対処しながらの新たな挑戦です。
 なかでもインターネット公売は、現在のようにICTがない時代に作られた、国税徴収法では予定していないことです。実務上、法との不整合が生じる場合も考えられますが、無理だ、法律が対応していない、などとあきらめることはありません。有効性が分かれば、必要な法律の改正が行われます。
 基本的なことは変わらない税の賦課徴収事務でも、世の中の変化へ柔軟に対応していく必要があります。自治体の合併も業務改善を行うよい機会です。制度のどこに問題があるかは、現場の実務担当者が一番知っています。何が住民・納税者にとって好ましいのかという視点で、常に制度や業務を見直していくことが地方自治の進展にもつながります。

プロフィール
かとう・たかし 1981(昭和56)年、東京都採用。主税局、総務局、衛生局、都市計画局に勤務。葛飾都税事務所徴収課長、主税局税制調査課長、税制課長などを経て2007年4月から現職。



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