自治体経営へ会計を活かせ

タイトル

 財務書類の作成目的やその活用方法など、新地方公会計制度についての質問を受ける機会があります。新地方公会計は、ストック情報や将来負担情報など現行の現金主義会計を補完する大きな役割を担っています。そこで、今回は財務書類を利用した熊本県宇城市公会計改革の取り組みについて説明します。

財務書類作成の目的

 本誌7月号で述べた通り、宇城市では新市としてスタートする時点での財政状況と資産・負債の状況を把握するため、平成17年6月に「総務省方式」による連結財務書類を作成し、市民に公開しました。これは、新市のありのままの姿を市民に理解してもらうことで、財政状況に適応した市政の展開を図ろうと考えたものです。
 連結財務書類に基づく財政状況分析の結果、平成11年度から15年度にかけて資産が1.1倍増加したのに対し、負債は1.2倍となり、また地方債は275億円から335億円(増加率122%)と大幅に増加。さらに正味資産比率は50.6%と悪化していました。これらは、宇城市の資産形成が将来世代の負担に依存していることを意味し、抜本的な見直しが必須でした。そこで、宇城市では財務書類の作成目的を以下の通り定めました。

1.新市としてスタートを切るにあたって、市の財政状況を明らかにする。

2.市の社会資本の整備状況や将来負担の状況を把握することで、今後の行財政運営に活用する。

3.行政コストの削減余地、費用対効果を検証することで、今後の行財政改革を進める上での方針策定の基礎とする。

4.財政計画の検証を行う。また、目標を達成するために、(1)職員数を平成22年度までに120人削減、(2)施設の統廃合や民営化、事務事業の見直しにより、物件費を毎年2,500万円ずつ削減、(3)一部事務組合の運営の効率化等により、平成21年度までに補助費等を毎年4,000万円ずつ削減、(4)繰出金の財政健全化などにより、毎年4,000万円ずつ削減──など歳出改革を目指す。並行して、遊休地や施設の統廃合により不要となる資産を売却し、新たな財源の発掘によって歳入を上乗せする──など歳入面での取り組みを行う。

具体的な活用法

 これらの取り組みを達成するため、宇城市では「施設白書の作成・公表」、「施策別財務書類の作成」、「固定資産台帳の整備」などを通じて公会計改革へ取り組んでいます。以下にそれぞれの取り組みを紹介します。
1.施設白書
 旧各町において公共施設等の整備を進めてきた結果、維持管理経費や地方債債務の増大などが財政運営に大きな影響を及ぼしていました。有形資産形成は維持管理費の増加要因となります。そこで資産の費用対効果を検証し、資産管理のあり方を見直すため、平成20年3月に「施設白書」を作成しました。これは施設の統廃合や活用策、今後のあり方を検討するとともに、改築・改修の計画や維持管理経費を推計分析し、管理運営の改善策等をまとめたものです。
 具体的には、まず施設担当者自らが施設別のバランスシートと行政コスト計算書を作成し、次に施設ごとの資産・負債の状況、人件費や減価償却費なども含めたフルコスト、コストに対する受益者負担の状況を明らかにしました。これにより、事業評価などの有効なツールとして活用することができ、また職員のコスト管理意識の醸成や効率的な施設運営を考えるきっかけにもなっています。
2.施策別財務書類
 財務書類を行政経営の羅針盤とするために、行政評価制度や総合計画と連携させて進捗管理として活用していきます。具体的には、5大政策と45の行政コスト計算書を作成することで、受益者の負担状況を明らかにするとともに、これらを政策評価などの有効なツールとして活用し、効率的な行政運営などに役立てていきます(下記表参照)。

3.固定資産管理台帳
 宇城市の有形固定資産の算定については、前号で述べた通りです。現在、モデル部署を選定して固定資産管理台帳の検証を行っていますが、そのなかで、さまざまな問題点が顕在化してきました。例えば、固定資産の取得年月日が不明、補助金の実績報告書がないため取得財源の内訳が分からないなどです。
 一方で、決算統計データではわからなかった昭和43年以前の有形固定資産や、除売却されたものの反映など、固定資産台帳の精緻化に大きく役立っています。

 今後は、行政評価や総合計画と連携させるために、施設別資産データや事業別コストデータの整備も視野に入れ、固定資産データベースを構築します。このデータベースは、施設改修の優先度把握にも有効だと考えています。

 さて、財務書類は行財政改革の特効薬ではなく、あくまでも健康診断書です。ここからは治療のためのさまざまな手段が見えてきます。また、他の団体との積極的な情報交換も有用で、互いに切磋琢磨し日本に「新地方公会計」が定着することを祈念いたします。

●宇城市 www.city.uki.kumamoto.jp/

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