自治体経営へ会計を活かせ

タイトル

前回に引き続き、本号では「業績管理会計」について説明します。「業績管理会計」とは、理念・ビジョンに裏付けられた大綱を定量化した意思決定会計から導き出された計画について、執行段階での調整や結果との比較による差異の分析、分析結果を受けての改善活動により、同年度および将来的な目的、ひいては理念に即した結果をもたらしていくための管理ツールです。

自治体の特殊性と業績管理会計

 予算主義・計画主義を中心に据えた地方自治体では、一般に予算を確保する、新しい組織を作る、人員を増やすといった「計画(Plan)」の場面においては活発に討議検討が行われます。しかし、その計画を執行する「段階(Do)」、さらには「評価(See)」「点検(Check)」、「改善(Action)」のプロセスを経るにつれ、公益に資するという事業の特殊性もあって、恣意性を排除した画一的・標準的な評価尺度を用いることが難しいとされていました。
 しかしながら、近年では国・地方における財政構造の悪化、行政に対する社会的ニーズの多様化、地方分権と自律的マネジメントの必要性、NPM(ニューパブリックマネジメント/※1)の潮流など、地方自治体も限られた資源で高いパフォーマンス(成果)を実現することが期待されています。
 パフォーマンスを評価するにあたっては、その計画体系を構成する政策・施策・事務事業などに従って、管理会計サイクルの視点から「行政活動の経済性・効率性・有効性」を測定・評価し、「中長期の計画策定や予算編成・業務改善」へ活かす仕組みの構築と、その結果を住民へ報告することが求められます。その場合、主に非財務指標を用いて業務の流れに従い、@インプット(投入)、Aアウトプット(結果)、Bアウトカム(成果)の尺度を加工して、比較検討を行うことになります。そのための最も有名な尺度として、「3E基準」が挙げられます。
 3Eとは、「Economy(経済性)」「Efficiency(効率性)」「Effectiveness(有効性)」の頭文字をとったものです。図書館を例にとると、対象を貸出図書数とした場合、図表1の項目がベンチマーク(指標)となり、「期間比較」「他団体との比較」で事業評価が行われます。

 また、3E指標とは別に、業務プロセスに着目して原価計算におけるABC(※2)、ABM(※3)の手法を利用した付加価値の最大化を意図した手法もあります。個々の状況に合わせて、最適な手法を選択すればいいでしょう。

業績管理会計の視点から

 さて、地方公共団体が実施する事業をそれぞれ一つの「プロジェクト」として見立てた場合、業績管理指標の考え方を援用することで、多角的な視点から事業分析が可能となります。
 一般に、業績管理指標は、@収益性(全社的な利益の捻出力)、A効率性(各資産の利益貢献度)、B生産性(人や設備の利益貢献度)、C安全性(経営の健全度)、D成長性(将来の見込)──を計画・実行・事後評価の各段階で総合的に分析し、その結果が当初の目的に適合しているかどうかを見るために利用するものです。
 市場メカニズムが十分に機能しない公共財の世界では、こうした成果主義の浸透は必ずしも容易ではありませんが、管理会計の枠組みに当てはめると図表2のような指標が作成され、その結果を行政運営に活かすこともできることから、これら業績管理手法を採り入れることは有効と考えます。

 それぞれの団体では、事業ごとの成果を検討するため事業評価書を作成し、このなかで事業費や指標の比較を行っています。当然、事業費は別途会計記録等から抽出するのではなく、元の会計データと連動して作成し、信頼性を高めることが肝要です。また、間接費の配賦なども納得のいく合理的なものとすべきでしょう。
 さらに、評価指標は非財務指標であり、また財務指標の先行指標であることからも合理的なものが求められます。これらを決定し、活用するためにも管理会計の知識は重要です。

(※1)NPM=民間企業における経営理念、手法、成功事例などを公共部門に適用し、そのマネジメント能力を高め、効率的で質の高い行政サービスの提供を目指すという考え方。

(※2)ABC=人件費などの間接費を、一つのサービスにかかる実際の活動量に応じて配賦する手法。

(※3)ABM=ABCによって得られた結果に基づき、その改善策を策定する過程・手法。

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