電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【巻頭言】

地方公共団体における会計・監査環境の変化
日本大学商学部教授
小関 勇
こせき・いさむ 1946(昭和21)年生まれ。現在、日本大学教授(会計監査論担当)、自治大学校講師(監査論等担当)、市町村アカデミー講師。日本監査研究学会理事、公認会計士試験委員などを歴任

 ここ10年余の地方公共団体の会計および監査を取り巻く環境は、いくつかの段階を経ながら、まさに激変ともいえるほどの大きな変化を遂げてきている。
 第一段階は、1996年11月に当時の橋本首相によって提唱された『日本版ビックバン三原則』である。このうち透明かつ信頼性の高い社会の構築を目指した「Fairの原則」は、営利組織のみならず非営利組織や地方公共団体等の会計・監査制度改革の萌芽を含むものであった。
 第二段階は、2001年6月に小泉政権下において閣議決定された『聖域なき構造改革』の推進を挙げることができる。改革の骨子は、(1)規制緩和とIT化を含む民営化・規制改革、(2)グローバル化の推進と地方自立・活性化(地方分権)、(3)簡素で効率的な地方公共団体の実現を図るための財政改革の3本柱からなる。この改革は、営利組織を主な対象としてきた改革構想を、これまで聖域扱いされてきたパブリック・セクターを代表とする政府機関や地方公共団体にまで拡大し、適用しようとするものといえよう。
 第三段階は、2001~2002年にかけて起きたエンロン社等の経営破綻に代表される米国における会計・監査不祥事の影響である。一連の事態を受けて成立した「米国企業改革法」は、米国はもとより日本をはじめとする主要先進国の会計・監査に対しても大きな影響を与えている。さらに、この法律を支える立法精神は、株式会社等のプライベート・セクターのみならずパブリック・セクターに対しても同様に適用されるべき内容を包含している。
 第四段階は、最近におけるわが国の会計・監査不祥事の及ぼした影響を挙げることができる。このうちプライベート・セクターの領域では、上場会社の粉飾決算等を含む会計・監査不祥事の続発がある。これに対してパブリック・セクターにおいては、社会保険庁の年金問題にかかる不祥事、いくつかの地方公共団体における不明朗な会計処理(裏金事件)、夕張市の財政破綻事件等が次々に明らかにされてきている。
 このような現状を踏まえ、公会計制度改革の一環として、4種類の財務書類の作成・公表や連結会計の導入等といった地方公共団体のディスクロージャーの充実強化が図られ、加えて「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」が成立するなど、地方公共団体を巡る会計・監査環境は大きな変革期にある。
 かかる激変する事態に対処してゆくためには、首長および職員からなる執行機関、議決機関たる地方議会、監視機関としての監査委員等といった地方公共団体関係者による積極的な関与と相互協力体制の確立が欠かせない。