電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【巻頭言】

鈴木

 「埼玉県三芳町」といっても、全国的にはほとんど無名に近い町だ。存在さえを知らない人が大半だろう。そんな町が今年9月、全国の町村では初となる地方税の電子申告サービスを開始した。
 わが三芳町のキャッチフレーズは“都心から一番近い緑のオアシス”。東京に最も近い「町」であり、武蔵野の美しい雑木林と整然と区画された畑を残すまちである。この三芳町で、いまわれわれは「協働のまちづくり」に取り組んでいる。「協働」とは、行政だけが公共サービスを担うのではなく、住民・団体・企業など地域の構成員がまちづくりの情報を共有して役割を分担し、知識や技術などそれぞれの特徴を活かしながらまちづくりに貢献するという考え方だ。例えば、町内にいまも残る武蔵野の雑木林は年に最低一度は下草を刈らないと荒れてしまう。美しい状態を維持するには、単にこの緑がいつまでも残ってほしいと願うだけの傍観者的スタンスではなく、住民もまた一緒に汗を流すことが求められる。協働とはそういうことである。
 従来のように住民と地方公共団体が依存的・固定的な関係にあっては、われわれが期待する町の姿は望めない。価値観が多様化し、求められる行政サービスがますます複雑化していくこれからの時代、住民・団体・企業など地域の構成員がまちづくりの主役として行政活動に関わり、行政のパートナーとして信頼関係を築くなかで、自治の意識を高めていくことが不可欠と考えたのである。
 われわれが描く町の将来像は、住民の財産である緑を子孫に引き継いでいけるようそれぞれが協力し合い、誰もがいきいきと生産活動を営み、生活の安心と温もりを実感できる町だ。協働のまちづくりの成否は住民と行政の間の、あるいは職員のなかにある旧来の思考パターンや暗黙のルールを打ち壊し、新たな関係を創造できるかにかかっているといっても過言ではない。
 この6月には協働の理念を町民全体で共有し、住民参加によるまちづくりの輪を広げていくための「協働のまちづくり条例」を施行した。さらに住民が主体となってまちづくりを進めるための中核組織「協働のまちづくりネットワーク」も、9月末に数百人規模でスタートした。また、9月に開始した地方税の電子申告サービスも、もちろん協働のまちづくりの一環である。
 このほか、子供たちを地域全体で守ろうと今年4月に運営を開始した「青色防犯パトロール車(青パト)」、あるいは近隣自治体に先駆けて導入した、小学校卒業までの医療費を無料にする子供医療制度など、協働のまちづくりを実践する事業がさまざまな形で具体化してきている。こうしてみると、私は住民や職員が相手のコーディネーター兼ディレクターのような役割を担っていることになるが、住民の誰もが「住んでよかった」「生まれてよかった」と思えるよう、今後もこの立場に徹して住民が一人でも多く参加できるまちづくりに挑戦していくつもりだ。