電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【巻頭言】

小室

 このほど、2007年度における「地方公共団体の情報化進展度」に関する調査結果を公表した(詳しくは月刊LASDEC5月号と6月号参照)。過去に4回、本調査を実施してきたが、いま電子自治体の現状は “踊り場”状態にあるといえよう。
 前年度の調査と比べても、庁内の情報通信インフラや推進体制は、都道府県・市町村を問わずほぼ整備を完了しており、先進的な団体と取り組みが十分ではない団体との情報化の進捗度格差も、依然として大きいまま落ち着いた感さえある。
 しかし、電子自治体の取り組みは、一過性で終わるべきものではない。例えば、セキュリティ対策への取り組みを見ると、「インターネットへのアクセス制限」などは多くの団体で進んだものの、「データのバックアップの保管場所をコンピュータ室とは別の場所に設置」している町村は、いまだ31.7%に留まっている。自然災害などを想定した危機管理の点で、これは大きな課題であり、早急な対策が必要であろう。また、ITの投資対効果という点でも、まだまだ全体的な遅れが指摘される。
 新たなIT投資による業務の効率化や住民サービスの向上は、極めて重要な課題だ。財政状況がより厳しさを増すなか、体力のない自治体の投資には限界があるのも事実だが、このまま二極化が進むと行政としての業務品質の差にもつながりかねない。この閉塞感を打開するには、主に以下の方法が考えられる。
 一つは、レガシーシステムを見直し、オープンシステムへ移行する方法である。これにより削減したコストを新たなIT投資へ充てるものだが、その取り組みはいまだ一部の団体に限られている。
 二つ目の方策は、情報システムの「共同アウトソーシング」であろう。GISや文書管理、電子入札など業務システムのみならず、データのバックアップやセキュリティ対策、情報システムの外部監査など、共同化の利用範囲は広い。京都府では全国で初めて広範囲な府・市町村の税務共同化を計画しており、今後の行方が注目されるところである。
 そして三つ目が、ASP・SaaSといった民間企業が提供するサービスの積極活用だ。安価な料金で柔軟に利用できるASP・SaaSサービスは、財政面・人事面で制約が大きい小規模団体においても有効な手段である。なかでも公共施設予約や電子申請・人事給与・公営住宅・庶務事務などは、基幹業務との切り離しが比較的容易で、ASP・SaaSの活用に適した分野といえ、業務改革も視野に入れた取り組みが求められている。 
 こうした新たな“波”は行政経営のあり方にも大きな変化をもたらす。その一つの波が、「市民が主役の電子政府」という考え方の登場だ。いくら自治体の情報化が進んでも、住民の視点を置き去りにしたままでは、世界に冠たる電子国家の実現は困難である。市町村においては、こうした動向も踏まえ、住民が便利さと安心を実感できる電子社会を実現されることを期待してやまない。