電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【巻頭言】

タイトル

 先日、弊社では英国政府のポータル改革へ取り組んだビル・エドワーズ氏を東京に招き、セミナーを開催した。
 英国では、2001年に「オンラインGov」がスタートしたが、日本と同様に利用は低迷していた。そこで、各省庁のサイトにリンクを張っただけの縦割りのオンラインGovを、国民目線の「ダイレクトgov」へ進化させることで、飛躍的に利用を伸ばすことに成功した。
 いまや英国国民は、ポータルにログインすればほとんどの行政情報に辿り着け、担当者とやりとりできる。実に英国の4人に1人にあたる国民が、この政府ポータルのIDを保有している。日本と同様、税関係の業務から始まり、現在、4,500以上のサービスがこのポータル経由で提供されているそうだ。
 当初、ポータルの利用に後ろ向きだった行政組織の担当者にも、その恩恵が理解され、独自のシステム構築を行わなくなったという。ポータルに掲載されていないと「なぜポータルに載っていないのか」という利用者の声も多いため、ポータルの活用に積極的になったそうだ。やはり、実績は強い。
 同様の取り組みは、欧州全体で進んでいる。デンマークでは国民の半数が電子政府のIDを保有している。2010年には、すべての手続きを電子化して行政手続きから紙を撲滅するそうだ。電子申請に書類の添付は不要である。申請内容をIT技術で分析し、不正の可能性が高い申請についてのみ追加の書類提出を求める、あるいは申請自体を否認する、などの対応を取っている。
 電子申請以外にも、ICT活用事例は枚挙に暇がない。
 日本と同様、欧州諸国でも少子高齢化が進み、医療・介護の制度が何度も見直されている。英国では行政のみに頼るのではなく、地域で要介護者をケアするコミュニティケアが進められてきた。このような制度改正時には、全体設計のなかにそういった制度改正を支援するシステムの構築も組み込まれているところが、実に羨ましい。
 要介護者の情報はCRM(顧客満足度向上へ、顧客との関係を構築する経営手法)で管理され、家族、医師、自治体、介護事業者、ソーシャルワーカー、地域のボランティアなど、関わる人たちの間で効率的に共有されている。複数のソーシャルワーカーや家族の間での円滑な情報引き継ぎは日本でも課題だが、ITを活用することでその壁を乗り越えようとしている。この情報共有システムは、自治体によって関係者に提供されているが、その費用は制度改正時に政府より助成されたそうである。
 新政権発足に伴い、各省庁の来年度予算も政策公約実現のための施策中心に大きく配分が変わるようである。新政権は、さまざまな施策について諸外国の実績を参考にしていると聞く。政策だけではなく、政策を実現する際のICT活用や予算配分についても、諸外国の先進事例を取り入れて欲しいと切に希望する。