電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【巻頭言】

タイトル

 下條村は、長野県の最南端下伊那郡のほぼ中央に位置する人口4,176人の天竜川沿いにある小さな村だ。
そんな村がにわかに注目を集めるようになったのは、出生率2.04人(2003~06年平均)によるところが大きい。国の特殊出生率が1.32人に落ち込むなか、下條村では出生率を高めてきたのだ。14歳以下人口も710人と、全人口の17%を占めている。
 この数字は私にとって感慨深いものがある。最初の村長選挙で掲げた公約が、まさに「人が増える村」であったからだ。
 村長として最初に取り組んだのが、職員の意識改革である。「人が増える村」というビジョンの下、役場を民間企業にも負けないスピード感とコスト意識を持った燃える集団にしようと考えた。強烈な反発はあったが、そこをうまくまとめていくのがリーダーの役割というものだろう。考えた末に行ったのが一種のショック療法。全職員を民間の物品販売の店頭へ研修に行かせ、その厳しさを実感してもらい自分達の甘さに気づかせたのである。
 効果は抜群だった。職員にやる気が生まれれば仕事はどんどん効率的になる。92年度に51人だった正規職員を08年度には34人へ減らしたが、行政サービスの質も量も落ちることはなかった。
 組織が固まったら、次は歳出のカットだ。村民増加計画を推進するにはそのための財源確保が不可欠。これを捻出するため、無駄な公共事業の見直しに着手した。ここで鍵となったのが、村民に過度な役場頼みの姿勢を改めてもらうこと。「道路を直せ」「排水溝を整備してくれ」といった陳情に対して、軽微な土木事業については「資材は提供しますから、村民の皆さんで工事を行ってください」とことごとく突っぱねた。
 半年ほどは村民との強烈な攻防が繰り返されただろうか。さすがにいくら陳情しても埒があかないと諦めたのか、やがて村民による土木事業の第一号が行われる。そして前例ができた後は、まるで雪崩を打つように村中へと波及していった。この「資材支給事業」は現在も続いている。
 職員の強化と財政スリム化ができたら、いよいよ人口増のための政策だ。ここでは郊外に勤める若い夫婦に移住してもらう戦略を立てた。
 具体的には、12年前から格安の村営住宅(戸建ても含めて合計178戸)を用意し、子どもが増える見込みがあることや、消防団への参加などコミュニティに積極的にとけ込むことを入居条件に移住を促進した。
 加えて村営の保育園も統合し、この2年間で保育料を20%値下げした。また医療費は中学3年生まで無料。これら政策によって若者定住者が増え、05年には人口が35年ぶりに4,200人を突破したのである。
 ほかに文化芸能交流センター、道の駅なども整備してきた。それでも実質公債費比率は5.3と財務状況は超健全だ。過疎に苦しんだ村がここまでこられたのも、村民と関係者の協力のお陰と感謝している。