電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【巻頭言】

タイトル

 厳しい経済情勢が続くなか、中小企業の活性化は自治体においても大きな課題となっている。中小企業は税収の一翼を担うとともに、雇用を支え、イノベーションの原動力となるからである。大田区には4,000社を超える中小製造業の産業集積があり、企業は日々生き残りをかけた戦いを続け、役所もさまざまな施策で中小企業を支援している。
 中小企業支援というと補助金や融資などの「お金」による支援が注目されがちであるが、それらが経済的効果につながるかどうかは受け手の企業の「経営」にかかっている。公的資金をつぎ込んでも、受け手企業の経営が良くなければ売上は伸びないし、雇用も創出されない。一方、企業経営がよければ、売上、雇用が増加し、税収も上がる。企業経営の向上は支援効率の向上、経済効果の増大を生み出す。
 この「経営」の向上を図る支援が「経営革新」支援である。中小企業経営者が自社の強みと弱み、市場や競合の動向を分析し、中期的視野を持って目標を設定した上で、その実現への道筋を考える。これを経営革新計画として策定し、実行することを公的に応援するものである。「中小企業新事業活動促進法」による国・都道府県の経営革新計画の認定と支援のスキームは、多くの経営者に気づきと経営向上の方法を提供し、政策的成果を実現している。混迷の時代だからこそ必要な支援といえる。
 しかし、小職が大田区の現場で感じたことは、規模の小さい企業(例えば、従業員30人未満で、生産、営業、管理等の機能分化のない企業)にとっては、この経営革新支援は「敷居が高い」ということである。日々の業務に追われる経営者にとって、計画の必要性は理解しづらく目標値や必要書類の要求も厳しく映る。そこで小規模な企業に焦点をあて、区で独自に創設した制度が「ものづくり経営革新緊急支援事業」である。
 この制度は国の経営革新支援を簡素化し、経営者が経営革新のための簡易な事業計画を策定することを促す。新たに加えたのは、計画策定の動機付けとしての50万円の助成金と専門家の派遣だ。助成金は計画実施のきっかけづくりの費用として3分の2の助成率とし、人件費等を含め幅広い経費を対象とした。専門家については、経営者の話を聞き、企業の立場に立って計画作りを応援する若手の中小企業診断士、税理士を登録し、企業の求めに応じて派遣している(専門家に俯瞰的視野は必要だが、「上から目線」は厳禁)。
 この制度は昨年度の補正事業として短期間で実施したにもかかわらず、約100社が経営革新に取り組んだ。利用企業経営者からは「経営を見直すきっかけとなった」「新しい取り組みの結果、新しい顧客が見つかった」「厳しい経営環境のなか、もう少し頑張ろうという気持ちになった」といった声があり、手応え十分である。
 経営革新支援は、計画策定や助成事業の実施で終わるのではなく継続的に評価・支援していく必要があるが、現時点でも一定の政策効果をあげていると考えられる。
 各自治体におかれても、簡易な「経営革新」の支援で中小企業の活性化を試みられることをお勧めする。