電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【巻頭言】

タイトル

 厳しい財政状況を反映して、自治体ではコンピュータの更新、制度改正に伴うシステム改修等の情報処理関係経費の抑制や、ICT関係要員の削減等が強く求められている。こうしたなか、総務省から本年6月に『自治体クラウド推進本部有識者懇談会とりまとめ』が公表されたことに加え、情報通信環境の進展なども相まって、いま自治体クラウドの導入機運が盛り上がりを見せている。
 平成21年度から実施された総務省の「自治体クラウド開発実証事業」へ参加した北海道、京都府、徳島県、佐賀県、大分県、宮崎県の6道府県78市町村においては、実証事業終了後、クラウドの本番移行に向けた実践的な取り組みも始まった。
 このように自治体クラウドの利用が現実化してきた背景には、クラウドコンピューティング技術の進展に加えLGWANをはじめとする高速大容量ネットワーク環境の整備や、多くのICT機器を安全に集中運用し大規模な情報処理を可能とするインターネットデータセンターの充実等が進んできたことがある。
 自治体クラウドの基幹業務への導入効果としては、システム開発やシステムリソースの導入・運営、制度改正に伴うシステム改修などにかかる経費の軽減や、アウトソーシングによるICT関係要員の削減等が挙げられる。加えて自治体クラウドには、情報システムやデータ等の安全性の確保や障害対策などセキュリティ向上の効果も期待されることから、東日本大震災のような広域・大規模災害におけるICT部門のBCP対策としても評価が高まっている。
 導入する自治体クラウドについても、ベンダーが提供するサービスを利用する方式、共同運営組織により新たに構築する方式等があり、また、システムやサーバーの構築にも多種多様な方式がある。それぞれメリット・デメリットがあり、導入にあたっては個々の自治体や業務の実情に合わせ十分な検討が必要である。
 さまざまな効果が期待できる自治体クラウドだが、導入にはいくつかの“障壁”もある。例えば、自治体独自仕様(カスタマイズ)の制限を伴う場合、業務現場の抵抗があるかもしれない。また、クラウドの“割り勘効果”は、共同利用団体数が多いほど有利といえるが、そのためには団体規模の大小や、地域に依存するさまざまな要件に対処できる柔軟な情報システムが不可欠となる。そうした障壁を克服してクラウドを導入するには、自治体の積極的な取り組みとクラウドサービス提供事業者の創意工夫が欠かせない。
 さらに、自治体クラウドの全国普及までには、新たなベンダーロックインを生まないよう相互運用性の確保や外字の問題、情報セキュリティ対策など技術面でもまだまだ解決すべき課題は少なくない。しかし、厳しさを増す自治体の財政状況と行政サービスの一層の向上を考えたとき、クラウドが有効な手段のひとつであることは間違いない。いまこそ、クラウドの導入に向けた自治体の英断が待たれるところである。