電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【巻頭言】

タイトル

 東日本大震災により、被害を受けられた皆さまに心からお見舞い申し上げます。
 平成7年1月17日、阪神淡路大震災が発生し、私が勤務していた西宮市も甚大な被害に見舞われました。当時の実感は「予想外の出来事」というもので、恐らく被災地の皆さんもまったく同じ思いを抱いておられるのではないでしょうか。
 いま改めて感じているのは、我々がいかに最善と思う備えをしていたとしても、常に予想外の事態が発生することを想定しておかなければならないということです。その意味では“想定外”を想定することが、自治体の危機管理といえるでしょう。
 そうした予想外の危機が発生した時、重要となるのが「迅速な決断」です。地方公共団体は、災害発生直後はもちろん、その後も物資配布や被災状況の把握、義援金交付、仮設住宅など次々と決断し、対応し続けなければなりません。そうした正しい決断を下すには、情報が不可欠です。阪神淡路大震災直後、情報が錯綜し現場が混乱するなか、このことを痛感した我々は、「住民の安心確保へ、できる限りのことをする」との思いから、自分たちで震災業務支援システムを作り上げました。
 それが、「被災者支援システム」の原点です。このシステムは、「被災者台帳」「被災住家等台帳」を管理する被災者支援システムを核として、6つのサブシステム(避難所関連、仮設住宅管理、緊急物資管理、犠牲者遺族管理、復旧・復興関連、倒壊家屋管理)から構成されています。
 現在、財団法人地方自治情報センターの業務用プログラムライブラリへ登録され、地方公共団体へ無償で提供されています。また、今回の震災を機にオープンソースとして公開されたほか、地域情報プラットフォーム対応の検討も始まりました。これにより住民基本台帳システムとの連携が進むなど、地方公共団体にとってより使いやすい環境が整うことを期待しています。
 災害が起きてから被災者支援システムを導入しても間に合いません。そのため平常時から導入し、(1)住民情報を通常のシステムとは別に確保する、(2)職員が操作に慣れておく、など準備しておくことが重要です。
 過去には、定額給付金の支給管理に活用された例がありました。また、平常時から障害者や高齢者など災害弱者の情報を把握しておくことで、例えば洪水が発生するおそれがある場合に、要援護者を事前に避難誘導するなど危機の予防・回避に役立ちます。さらに、危機管理情報を日頃から組織全体で共有しておくことで、いざという時に円滑な連携を可能とする効果も期待できるでしょう。
 地方公共団体には「住民の生命と生活を守る」という使命があり、危機発生時にこそ、その実力が試されます。その時、被災者支援システムは、大きな支えとなるはずです。今回の震災をただのエピソードで終わらせず、危機管理を見直す機会となることを切に願います。