電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【特集】

タイトル

平成21年の干支は「丑」。『漢書』によれば「丑(ちゅう)」は「曲がる・からむ」を意味し、芽が地上に出る前のまっすぐ伸びきれずにいる状態を表すそうだ。
「うるう秒」で通年より1秒長い今年は、市町村にとってどんな年となるのか…。「地方税」「社会保険」「財務会計」の3つのキーワードから21年を占ってみる。

 21年に起こることといえば、まず「2009年問題」が挙げられるだろう。派遣労働者の契約期間が切れる時期と急速な景気悪化が重なったことで、非正規労働者の大量失業という事態を招きかねない深刻な問題だ。あるいは野球好きならば、WBCの開催や史上初の女性プロ野球選手誕生を思い浮かべるだろうか。
 社会トレンドからは、朧気ながら住民ニーズの変化も見えてくる。
 SMBCコンサルティングが発表した『2008年のヒット商品番付』によれば、平成20年は「生活防衛意識のなか選択と集中が進んだ」一年だったという。背景には景気減速や原油高に加え、食の安全への脅威などがある。時代を表すキーワードは「価格」「安全」「エコ」「健康」「交流(つながり)」で、この傾向は21年も続くと分析している。これにより見直されたのが「家庭」で、WiiFitなど“家ナカ”関連のヒット商品につながった。また、4月に始まったメタボ検診の影響では、ランニングや自転車関連商品の販売数も伸びたそうだ。こうした何気ない価値観や認識の変化に、行政サービスの“未来”へのヒントが隠れていることに注目したい。
 そして、21年は携帯電話の買い換えラッシュを予測。番号ポータビリティ制度で始まった2年間の長期契約期限が切れることに加え、パソコン並みの性能を持つ携帯電話の発売が予定されているためだ。この活用を考えない手はない。
 12年前の平成9年といえば、山一證券をはじめ大型企業倒産・銀行破綻が相次ぎ、未成年による凶悪犯罪が増加し、コンピュータが初めてチェス世界チャンピオンを破り、地球温暖化防止京都会議で京都議定書が採択され、介護保険法が公布…などの出来事があった。また、『情報化白書』が、「21世紀に向けた行政情報化の推進」をテーマとしたのもこの年。いま振り返れば、平成9年は時代の大きな転換点だったといえる。
 21年は世界的な景気減速のなかの幕開けとなった。後述したように制度改革も急ピッチで進む。市町村にとっては激動の年といえるだろう。だが“未来”に美しい花を咲かせるには、この一年に何をするかにかかっていることもまた確かなのである。

地方税

 平成20年10月30日、政府・与党から発表された新しい経済対策「生活対策」によれば、平成21年度の税制改正において、次の施策を実施するものとされています(ただし、編集時点ではこれらの施策がそのまま実行されるかどうかは不透明な情勢です)。詳細な内容は今後、『平成21年度与党税制改正大綱』などにより明らかにされる予定です。

【金融証券税制】

●金融所得課税の一体化を推し進め、制度を簡素化

●上場株式等の配当等について、3年間現行税制の延長

●金融所得課税の一体化のなかで、少額投資のための簡素な優遇措置の創設

【中小企業対策税制】

●中小企業に対する軽減税率の時限的引き下げ

●中小企業の欠損金の繰戻し還付の復活

【「成長力強化税制」の導入】

●省エネ・新エネ設備等の投資促進税制

時限的に即時償却を可能とする、省エネ・新エネ設備等の投資促進のための税制措置

●海外子会社利益の国内還流

わが国企業が、海外市場で獲得する利益の国内還流に向けた環境整備のための税制措置

【住宅投資の促進等】

●住宅ローン減税の延長・拡充など

住宅ローン減税の期限延長、最大控除可能額の過去最高水準までの引き上げ、環境・高齢化問題等のための省エネやバリアフリー等の住宅リフォーム減税について投資型減税の導入などの検討

●各種土地税制の延長・拡充など

エルタックスの利用拡大

「個人住民税の公的年金からの特別徴収制度」が21年4月1日から施行されます。従来の徴収方法(普通徴収・給与からの特別徴収)に、公的年金からの特別徴収が加わることで、10月の特別徴収スタートに向けて、次のような準備が必要となります。
●年金受給者等への新制度の周知・広報
●年金所得に係る特別徴収税額等の計算処理の対応
●納税通知書の様式変更
●収納、消込処理の対応
 なお、本制度では、社会保険庁等と市区町村との情報授受の経由機関として、社団法人地方税電子化協議会が指定されています。これに伴い、21年3月までに、1,200以上の市区町村がエルタックスに接続し、このうち239団体において、このほど地方税の電子申告の受付サービスが開始されました。
 また、エルタックスは、23年1月申告データ分から「国税電子申告・納税システム(e─Tax)」との連携が予定されています。これが実現すると、市区町村における確定申告業務の大幅な効率化も期待されることから、今後の動向が注目されます。

納税手段がますます多様化

 地方税の納付は、これまで窓口や口座振替が一般的でしたが、近年はコンビニやクレジットカードの活用、あるいはMPN(マルチペイメント・ネットワーク)による電子納付など、住民のニーズに合わせて手段が多様化しています。特に、平成16年から始まった「コンビニ納付」は、順調に採用団体数を伸ばし、総務省によれば、平成19年1月現在で167団体となりました。
 また、「クレジット納付」についても、成人一人当たりのカード保有枚数が平均3.1枚弱という時代を反映して、導入団体は年々増えています(図1)。クレジット納付が可能になることによる納税者のメリットは、「支払手段が増える」「ポイントなどサービスの享受」「現金が不要」などで、一方、地方公共団体にとっても「収納率アップ」「収納データの電子化による業務効率向上」といった効果が期待されます。
 しかし、導入の最大のネックが「手数料」の問題です。現在、手数料を利用者に負担してもらっているのは北本市のみで、そのほかは市町村が負担しています。手数料は一般に1件あたり1%程度とされ、例えば固定資産税では数千円から数万円の手数料がかかることから、まだ軽自動車税や水道料金などの支払いに限定されているのが実状です。なお、手数料を利用者が負担する場合は「Web型」と呼ばれる方式に限られます。
 さらに20年3月には、国民年金保険料もクレジット納付に対応し、住民のニーズは一段と高まるものと想定されます。

図表1

 もう一つ注目したいのが、e─Taxで21年9月から導入される「ダイレクト方式」(図2)と呼ばれる電子納税です。納税者が予め口座振替契約を締結しておくと、電子申告した際に納付手続まで完了するもので、インターネットバンキングが不要なことから納税者の利便性も著しく向上します。地方税においても、今後この方式の導入検討が期待されます。

図表2

社会保障制度(社会保険)

 平成20年11月、10か月の議論を経て、政府の社会保障国民会議が『最終報告書』をとりまとめました。
 報告書では、現状の課題を指摘し、基本的な考え方を整理した上で、年金・医療・介護などの社会保障の機能強化、ならびにその試算まで行っています。また、大胆な制度改革が不可避であると述べる一方、その有効な手段として「社会保障番号制」の導入検討にも言及しています。社会保障番号は、現在議論されている「社会保障カード(仮称)」の議論とつながるものと思われ、改革を喫緊の課題としながら、並行して将来を見据えた議論もなされています。
 そうしたなか、今年の市区町村事務に関する主な改正内容を紹介します。

【介護保険】

●平成21年度改正

1.認定調査項目の変更

平成21年度より、認定調査項目が変更になります。新しい認定調査を行う時期は更新申請分が2月(60日前から申請可能なため)、他の申請は4月となることから、申請種類に応じて新・旧認定ソフトを使い分けるなど運用上の留意が必要となります。

2.介護保険料の政令改正対応

20年10月24日に公布された政令で、第三期における激変緩和措置を踏まえ、第四期において保険料負担段階第四段階で公的年金等収入金額、および合計所得金額の合計が80万円以下の方について、保険者の判断によりその基準額に乗じる割合を軽減することができるようになります。

3.介護報酬改定

制度施行後、初めて介護報酬額が引き上げられます。介護報酬改定に伴い、国保連合会とのインターフェイス改訂の可能性があります。

●高額介護医療合算制度

 20年3月までは、医療費・介護サービス費それぞれで自己負担が高額になった場合に、個々に負担軽減が図られていました。20年4月より、医療費・介護サービス費のそれぞれで高額処理を行った後でも負担が高額になる方については、さらに合算して自己負担を軽減する制度が開始されました。この制度は、4月1日に施行されましたが、年単位(8月~7月)の処理であり、かつ初年度特例により、初めての処理が21年8月から開始されます。
 また、国保や後期高齢者医療と同様、希望者に対する特別徴収から普通徴収への変更も検討されているようです。

図表3

【後期高齢者医療】

●保険料軽減措置

1.均等割額の軽減

均等割額が7割軽減されている被保険者の一部が、9割軽減となります。

2.所得割額の軽減

所得の低い被保険者(旧ただし書き所得58万円以下)について、所得割額が50%軽減となります。

3.被用者保険の被扶養者であった方の保険料負担軽減が、1年間延長されます。

●特別徴収の見直し

 未納なしなど、特別徴収から口座振替による普通徴収に切り替えられる要件が撤廃され、申し出によって徴収方法を変更できるようになります。
 また、この見直し内容を該当者に通知する必要も出てきます。

●均等割7割軽減者に係る平成21年度の保険料徴収の周知対応

 昨年度保険料の均等割が8.5割軽減された方は、20年10月以降、保険料徴収がされていませんが、21年度には再開されます。そのため、対象者へ十分な周知を行うことが求められています。

●普通徴収と特別特徴の併徴期間見直し

 4月から特別徴収仮徴収を開始している方が、何らかの事情(例えば18万円未満になる等)により、10月からは特別徴収の対象とならなくなった場合、普通徴収の納期と特別徴収の納期が重複し、被保険者の誤解を招きます。
 このような誤解をなくすため、普通徴収と特別徴収において重複の出ない期割が必要となります。

【国民健康保険】

●75歳到達月の自己負担額変更

 月の途中で75歳となり、後期高齢者医療制度に移行する場合、移行前後の医療保険において、それぞれ自己負担限度額を支払うと限度額が2倍になってしまいます。そこで従前と同様の限度額となるよう、75歳に到達した月において、移行前後の医療保険制度における自己負担限度額が、それぞれ本来額の2分の1となります。これは21年1月からの実施です。

●高齢受給者の医療費自己負担増(1割→2割)の凍結延長

 20年の制度施行時に凍結された措置が、さらに1年間延長されます。そのため高齢受給者証の交付に影響があります。

●特別徴収の見直し

 後期高齢者医療と同様、特別徴収から普通徴収(口座振替)に切り替える要件が撤廃されます。

●21年1月導入の産科医療補償制度に伴い、加入医療機関で出産した方の出産一時金が38万円に変更になります。

 今年は社会保険の分野だけでも、これだけの改正が予定され、担当者にとっては気の抜けない1年となりそうです。

財務会計

 平成20年9月、地方財政健全化法に基づき、「地方公共団体の健全化判断比率(平成19年度分)」が公表され、地方財政の危機的状況が明らかにされました。
 20年度決算以降、「財政再生団体」になると国の監督下で財政再建を進めることになり、また「財政健全化団体」の場合は再建計画に基づく早期是正が迫られます。急速な景気悪化による地方税収の大幅減少が避けられないことから、財政再生・健全化の基準に達する団体は今後増えることも懸念されています。
 さらに、昨今の地方公共団体の不正経理問題を受け、「不正経理防止法」(仮称)制定に向けた動きも活発となり、地方財政に対する住民監視の目は一段と厳しさを増しています。
 こうした状況を克服するには、財政立て直しに向けた構造改革へ取り組むとともに、発生主義・複式簿記による会計手法の導入とその活用を図る「公会計制度改革」が不可欠です。

21年秋までに連結4表を整備へ

 新公会計制度においては、当初「取り組みが進んでいる団体、都道府県、人口3万人以上の都市は平成21年までに、取り組みが進んでいない団体、町村、人口3万人以下の市は平成23年までに4表を整備または四表作成に必要な情報を開示」(平成18年8月31日/総務省事務次官通知)とされています。しかし、1年後の事務連絡では、(1)21年度までに資産・債務改革の方向性と具体的な施策策定を要請している、(2)21年度には最初の財政健全化計画などの策定が義務付けられている──ことから、すべての団体において「21年秋をめどに連結ベースの財務四表の作成が重要」と表現が改められました。
 市町村の18年度版財務書類の作成状況を見ると、1,064団体が何らかのモデルで作成済みですが、このうち「基準モデル」「総務省方式改訂モデル」で作成しているのは47団体で、現在作成中を含めても200団体に届かず、公会計制度改革への対応の遅れは歴然としています。
 こうしたことから、総務省では「地方公会計の整備促進に関わるワーキンググループ」を発足。中小規模団体でも円滑に財務諸表の整備が進むよう、作成手順や住民への提示方法などを検討し、今春中にも一定の成果物を提示する見込みです。
 公会計の整備は法的に位置付けられるものではありませんが、地方財政健全化法や行政改革推進法などと考え合わせても早期対応は避けられない状況で、市町村では21年以降、従来の業務プロセスの見直しなども含めて新たな財務会計体制の構築が求められます。

図表4

 ここで重要な点は、公会計の目的は「発生主義・複式簿記」の導入ではなく、効率的財政運営に向けた第一ステップに過ぎないということです。そのためには、会計制度は単一であるべきで、最終的により精度の高い行政評価を行うためにも、「総務省方式改訂モデル」を採用する団体では財務会計システムの更新時期などに合わせて早期に「基準モデル」へ移行していくことが必要です。
 同時に考えなければならないのが、行財政運営の透明性と信頼性をいかに確保するかということです。特に「財務報告の信頼性」の確保は喫緊の課題といえ、総務省では「地方公共団体における内部統制のあり方に関する研究会」で検討を始めました。内部統制とは、組織内のすべての者によって遂行される「業務の有効性および効率性」「財務報告の信頼性」、事業活動に関わる「法令等の遵守」ならびに「資産の保全」が達成されていることを保証するための仕組みのことです。
 現在、市町村では財務会計のほか、さまざまな情報システムを整備・運用していますが、これらを内部統制上の不正や誤謬に対応できる“経営管理”の視点を取り入れた新財務会計システムへと再整備していくことも考える必要があります。この点、20年3月に公表された研究会の中間報告は今後の方向性を示唆するものとなっており、21年度以降、内部統制に関する議論の本格化も予想されることから、今後の研究会の動向に注目したいところです。