電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【特集】

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エルタックスへの接続団体が、1,321団体となった。だが、このうち電子申告を開始したのは301団体と、地方税の電子化はいまだ道半ばだ。電子申告はなぜ必要なのか? そのメリットは? 先進事例を交え、電子申告の効果を検証する。

 今夏、新たなIT国家戦略「デジタルジャパン」(仮称)が誕生する。このうち先行発表された『3か年緊急プラン』では、電子化を加速すべき重点分野に「行政」「医療」「教育」が掲げられた。
「e─Japan戦略」以降、行政内部の電子化は飛躍的な進歩を遂げたが、本誌巻頭言で市川市の井堀幹夫情報政策監(CIO)も指摘する通り、いま電子行政サービスには“三つの壁”が存在する。それが「デジタル化されていない壁」「つながらない壁」「活用を妨げる制度・人材の壁」である。地方税の電子申告は、まさにその典型例といえるだろう。
 まず思い浮かぶのが、未だ8割の市区町村が電子申告を実施していない「デジタル化されていない壁」だ。
 また、納税者と行政、国と地方の間に存在する「つながらない壁」により、電子データをわざわざ紙にして相手に渡し、受け取った側が再びデータ入力するなど、社会全体で無駄なコストや労力が発生している。総務省自治税務局の大村慎一税務管理官(当時)は、本誌3月号のインタビュー記事で、納税者と行政の間に存在するつながらない壁が「漏れや入力ミスの発生リスクを高める」とし、適正・公平な賦課徴収の観点からもこの現状に警鐘を鳴らす。
 最後の「活用を妨げる制度・人材の壁」では、電子申告できる明細数の制限などにより、納税者(特に中堅大企業)には電子申告に加えて紙でも郵送するという手間の二重化が発生している。

 緊急プランでは、未曾有の経済危機を脱し、“世界最先端のデジタル社会・ニッポン”実現へ、国をあげて三つの壁を突破するとしている。これにより住民と行政がICT本来のメリットを実感できる「次世代電子行政」が、3年のうちにも現実のものとなる。地方税の電子化は、もはやその通過点に過ぎない。

愛知県市町村は納税者の効果も試算

 さて、電子申告のメリットの一つは、納税者と行政の〝無駄〟なコスト・労力を削減できることだ。これについて、大村税務管理官は本誌3月号で、「愛知県市町村税エルタックス導入検討ワーキンググループ」の『エルタックス導入に係る報告書』を参考に例示していたが、本号ではその続報として詳細を紹介する。
 報告書によれば、「利用率が50%の場合、名古屋市を除く県下34市24町2村全体で約3億4,000万円のコスト削減効果があり、エルタックスの導入・運用に係る経費を差し引いてもほとんどの団体で費用対効果がプラスになる」とし、「費用対効果の面からは、公的年金の特別徴収だけでは不十分で、電子申告導入が不可欠」と結論づけている。

 では実際に、どの程度の効果があるのか、人口レンジごとの試算結果を図にまとめた。これを見ると人口規模に比例して削減額が増え、小規模団体でも十分な効果があることが読み取れる。また、「公的年金等に係る市町村民税」だけでは効果が激減することも明確となった。
 さらに報告書では、納税者側のコスト削減額も試算し、利用率50%(約74万社)の場合で6億3,000万円の削減効果があるとしている。その大半を占めるのが「給与支払報告書に係るコスト」で、削減効果は約5億6,600万円になる(繰り返すが、この試算は名古屋市を除いたものだ)。市町村は納税者に対して、それだけの負担を強いているのだということを認識しなければならない。
 ちなみに市町村側の費用(2億4,300万円)を加えると、給与支払報告書だけで約8億円の無駄が減る計算となる。

先陣をきった東京都墨田区

 では実際にサービスを開始した市区町村は、どんなメリットを感じているのだろうか。そこで昨年12月、東京23区としては初めて電子申告サービスを開始した墨田区の事例を紹介する。
 墨田区によれば、今年約2,500件の給与支払報告書が提出されたという。浮田康宏税務課長は、詳細な分析はこれからとしながらも、初年度からかなりの効果があったと語る。詳しくは事例記事をご覧いただければと思うが、墨田区ではコスト面もさることながら、特に労力や適正・公平な賦課徴収の面でメリットを強く感じているようだ。
 ここで特筆すべきは、墨田区が納税者と行政との間の双方向性に着目している点だろう。電子申告利用者を対象に、特別徴収税額通知書の電子データ提供を始めるという。墨田区は“つながらない壁”を破し、次世代電子行政サービスを模索しつつあるのだ。これこそ、地方税の電子化の大きなメリットといえるのではないだろうか。
 先進団体は進化のスピードを上げ始めた。他団体にも、思い切った決断が求められているのである。