電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【特集】

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新年を迎え、地方税の電子申告は秋田市と和歌山県田辺市で新たに受付サービスを開始するなど、いよいよ本格的に動き出す。社団法人地方税電子化協議会へオブザーバー会員として参加する市町村も180団体(平成19年12月10日現在)へと拡大した。電子申告への関心が一段と高まるなか、改めてTKCプライベートフェアに同時開催された「電子自治体セミナー」から、静岡県で行われた講演要旨をご紹介する。

わが国における電子政府・電子自治体の取り組みが本格化したのは、平成13年1月に策定された『e―Japan戦略』に始まります。〈5年以内に世界最先端のIT国家を目指す〉としたこの戦略において、一つの柱に掲げられたのが申告の電子化です。そして、平成16年2月、全国に先駆けて名古屋国税局管内から国税の電子申告がスタートしました。
 当初はわずかな申告件数でしたが、いまや国税の電子申告件数は急激に増加しています。国税がこれだけ普及すると、地方税の電子申告ができないことは非常に不便です。いま多くの市町村が財政難という問題を抱えていますが、間違いなく時代の流れは電子化の方向へ進んでいます。ぜひ皆さん方にも、1日も早く電子申告の体制を取っていただければと思います。

なぜ電子申告を推進するのか

 さて、TKC全国会ではいま電子申告を積極的に推進しています。しかし、国税については円滑な電子申告が実現できていますが、残念ながら地方税は未だ紙の申告書を各市町村へ提出しています。国や県では電子申告が実現されているのに、納税者に一番身近な市町村がなかなか動いてくれないというのが現状です。これは納税者にとって非常に残念なことであり、見方を変えれば市町村にとっても不便な状況といえるでしょう。いま皆さんは、恐らく紙の申告書を見ながら庁内のシステムへデータを手入力しているのではないでしょうか。

 TKC全国会が電子申告を推進する理由の一つには、「租税負担の公平を担保したい」ということがあります。

 なぜ、電子申告を行うと租税負担の公平が保たれるのでしょうか。

 我われ税理士は、日頃から適正担保、適正な申告を心掛けています。一方、税務署には税務調査という重要な業務があります。しかし、近年、業務量の増加などにより国税の実調率は著しく低下しています。これが電子申告になれば最初から電子データが届くため、国税のシステムへデータを入力するといった間接業務が不要となります。つまり、「電子申告によって業務の合理化を図り、悪い納税者の税務調査や滞納整理を強化し、租税負担の公平性を実現していただきたい」というのが私たちの願いです。これは地方公共団体でも同じだと思います。

 また二つ目が、税務行政を効率化し、その結果、「行政改革や歳出削減を実現していただきたい」ということです。さらに国際競争力という点では、いまや電子申告は世界的な潮流であり、「世界最先端のIT国家を目指す」という国家戦略の一端を納税者や税理士も担っていかなければいけないでしょう。

 では、その実績はどうでしょうか。

 TKC全国会では平成18年度、78万483件の国税の電子申告を行いました。国全体では126万8406件です。内訳を見ると、法人税の電子申告10万857件のうち、TKC全国会が8万1189件を実施しました。全体の8割をTKCの税理士がやっているんですよ。所得税では49万584件のうち、30万3985件を実践しています。また、地方税についても全体の86.4%に当たる4万488件を実践しました。この数字からも、我われが本気だということがお分かりいただけると思います。

 ここで注目していただきたいのが、法人税です。法人税は、法人市町村民税に当たります。皆さんはこれを毎月処理しているわけです。前述の通り、我われは8万1189件の法人税の電子申告を実践しました。しかし、法人都道府県民税は3万1622件と、国税に比べて非常に少ないですよね。なぜならば市町村が連動していないためです。市町村で電子申告の受付が開始されれば、法人市町村民税の電子申告件数は確実に伸びます。

住基カードの新たな活用方法を

 現在、電子申告が可能な税目は、法人都道府県民税と法人事業税、法人市町村民税、固定資産税(償却資産)です。特に償却資産は数が多いため、いまや手書きでこれを処理する企業や会計事務所はまずありません。特に大企業の場合は、償却資産に加えて給与支払報告書など膨大な数を申告しなければならず、電子申告をして作業を軽減したいと考えています。皆さん、ぜひ、そこをご理解いただきたいと思います。

 地方税の電子申告の利用状況を見ると、平成19年4月を境として利用届出件数が急激に増加しています。これは4月から電子署名等の一部省略が実施されたためです。

 3年前、電子申告をスタートした当初、我われも住基カードを活用していましたが最初は大変でした。市町村の皆さんも慣れていないため、住基カードを作るのに長時間かかり、なかには窓口で「止めた方がいい」といわれたこともありました(笑)。これが、税理士が税務代理として申告する場合に限り納税者の電子署名等を省略できることになって、eLTAXの利用届出件数も一気に伸びました。きっとこれまでは多くの税理士が、顧問先に自己負担で住基カードを取ってくださいと言えなかったんでしょうね。

 では今後、住基カードがなくなるかといえば、私はそうは思いません。

 ご存じの通り、国税では電子証明書を取得した個人が、電子署名および電子署名に係る電子証明書を付して電子申告を行う場合、平成19年分または平成20年分いずれかに限って5000円の控除を受けることができる「電子証明書等特別控除」が始まります。

 これは税理士の電子署名等のみによる申告の場合には適用されず、あくまでも個人が電子署名を付けた場合だけです。つまり、より多くの国民に、住基カードを取得してもらおうという国の施策といえます。皆さんもお勤めですから年末調整があると思いますが、給与所得者であっても国税庁の確定申告書等作成コーナーから電子申告を行うことで、特別控除の適用を受けることができます。そうしたことから今後、住基カードを取得する人が増えることが予想されます。

 そこで皆さん方へお願いですが、住基カードのコンテンツをぜひ増やしていただきたい。住基カードは何に使うのでしょうか。身分証明書だけですか? 住基カードが普及すれば、住民はもっと便利なコンテンツが欲しいと思うようになります。ぜひ、住民にとって便利な活用法を考えていただきたいと思います。

税理士が市町村の強い味方となる

 さて、いよいよ平成20年1月から個人住民税(給与支払報告書)が電子申告できるようになります。これは、給与支払報告書を市町村ごとへ提出している企業にとっては朗報です。また、給与所得者の異動届など約10種類の申請・届出もできるようになります。

 さらに3月からは電子納税がスタートします。これにより納税者は銀行へ行くことなく、国税も地方税もすべての税金をインターネットバンキングで納税できるようになるわけです。電子納税についても、ぜひ、早期に実現していただきたいと思います。

 一方、市町村の皆さんにとって電子申告のメリットは、やはり「税業務の効率化」といえるでしょう。いま、地方財政は非常に厳しい状況にありますが、私は一市民として職員数を減らす必要はないと考えています。電子化で浮いた人員は、ぜひ他のサービスへ振り向けていただきたいと思います。例えば、先述した住基カードのコンテンツを考える、あるいは税務調査や滞納整理を充実していただくなどですね。

 特に、償却資産税の場合、申告されたものについてはきちんとチェックされますが、申告しない人はそのままです。申告した人が税金を払う――これは当たり前のことですが、申告しない人が税金を払わないのは不公平です。やはり、ここは徴税コストをかけてでもきちんと調査すべきだと思います。そうしなければ「租税負担の公平性」が保てません。

 また、それによって税収を増やし、サービスをさらに拡充することが、「行政経営」に求められる本来の姿でしょう。その意味でも、電子申告の早期実現を切に願います。

 電子申告サービスを開始しても、実際にどのぐらいの納税者が使うのかという心配はあると思いますが、その点はご心配なく。事業者の申告・納税は、税理士が積極的に推進していきます。皆さんには強い味方がついています。ぜひ安心して1日でも早く電子申告を実現していただければと思います。