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【特集】

タイトル

少子高齢化の進展やグローバル化など社会構造の変化を踏まえ、いま「公平・透明・納得」を基本原則とする税制改革が進んでいる。市町村においては「徴収率向上に向けた体制・方法の強化」と「納税者の利便性の向上」の二つが改革の基軸となる。そこで本号では、栃木県における市町村税の徴収率向上への取り組みと、新たなチャネルの活用により納税者の利便性を図る2市の事例を紹介する。

タイトル

「所得税から個人住民税への税源移譲」以後、個人住民税の滞納額も大幅に増加し、それを始めとする市町村税の徴収率の向上は市町村のみならず多くの県に共通した課題となっている。
 栃木県では、平成19年度からの3年間、栃木県地方税徴収特別対策室(以下、対策室)を設置し、個人住民税を中心とする市町村税の徴収支援へ取り組んできたが、このほど平成24年度までの期間延長を決めた。なお、こうした支援事業は、ほかにも県税事務所による「個人県民税収入確保対策」(地方税法第48条による徴収の引継ぎなど)があるが、ここでは対策室を中心とした県の取り組みについて説明するとともに、今後の課題について意見を述べることとしたい。

税収確保に向けた取り組み

 本県では、税源移譲を控えた平成18年度に、「市町村税収入確保対策」をとりまとめた。これにより、まずは市町自身がその執行体制の充実・強化と独自の対策強化へ積極的に取り組むことが重要であるとし、その上で個々の団体の事務執行能力を向上させる支援策とすべく対策室を設置することとしたものである。
 この対策室は、平成20年度より全市町から職員の派遣を受けて運営されており、設置以来、3年間で派遣された職員は延べ88名に上り、その間に従事した案件の税額は約292億円、徴収実績は100億円を超えている。
 具体的な活動については、県内市町を三つのチームに分け、対策室の徴収職員(市町派遣職員および県の職員)がチーム内の市町すべてと相互併任することで、市町村税の徴収困難な案件についてチーム全員で財産調査・差押え・捜索など協働して徴収にあたることとしている(図)。これにより、市町から派遣された徴収職員のスキルアップが期待され、職員が市町復帰後には対策室での経験を活かすことにより徴収ノウハウの蓄積を図っている。

 また、こうした税収確保の取り組みとともに、「納付に関する納税者の利便性向上」も必要である。
 例えば、コンビニ納付について県内の例を見ると平成18年度の2市町2税目から、今年度は22市町・74税目(全市町の8割超)までに拡大している。こうした利便性の向上策は徴収率の向上に直接影響するものではないが、納期内納付率の向上や納税指導の効率化に寄与するものである。

今後の課題

 しかしながら、平成20年度の徴収率は全国44位と低迷しており、滞納繰越額の総額は減少傾向にあるなかで、特に個人市町村民税の滞納繰越額は107億円と前年度比で約10億円増加した。厳しい経済情勢を反映して、今後も滞納額の増加が見込まれる状況を踏まえ、県では引き続き税収確保と市町徴収職員のスキルアップを支援すべく、対策室の設置期間を平成24年度までの3年間延長することとした。
 だが、豊富な徴収スキルを持った職員を活用し徴収ノウハウの蓄積を図るためには、市町自身がそれを十分認識し、職員の異動等に配慮することが必要である。加えて、経験豊富な職員と蓄積された徴収ノウハウをもって、いかに税収入の確保に結びつけるかが今後の課題といえる。
 そのため本県では、市町の自立した税務事務執行体制の確立のため、以下の取り組みについても対策室や県税事務所とともに支援することとした。
(1)徴収マネジメント実務研修の実施
 市町税務職員対象の研修体系に、徴収職員の管理監督者を対象とする「徴収マネジメント実務研修」を新設した。これにより、滞納状況の正確な把握とそれに基づく適切な滞納整理の進行管理、また徴収事務における特定の課題への対処等について、それぞれの団体に最も適した手法を県と市町で検討していくこととする。
(2)徴収支援システムの重要性
 現在の行政改革の流れのなかで、徴収職員の増強はなかなか困難である。とはいえ、安易な民間委託の実施はかえって滞納整理を遅らせる足かせとなり、また、県による支援も、市町の自立した徴収事務執行体制の確立に向けた支援でなければ、仮に徴収率が向上しても一時的な成果となってしまうであろう。
 このような状況において市町村税の徴収率向上を図るには、やはり徴収事務を支援できるシステムの構築と、その有効活用ができる管理監督者の育成が必要ではなかろうか。それについても、先述した「徴収マネジメント実務研修」での議題となるものと考えている。

 税制における「公平・透明・納得」の基本原則は、課税という側面から語られることが多いが、徴収においても重要な原則であることはいうまでもない。各団体自らが必要な財源を安定的に確保するためにも、責任ある徴収体制の確立が求められている。