電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【特集】

タイトル

平成22年度、eLTAXは全団体接続によって「地方税の情報ネットワーク」へと進化し、地方税の電子化は新たな局面を迎える。おそらく歴史的出来事の一つとして記憶されることになるであろう大展開を間近に控え、いま地方公共団体に求められることは何か。総務省自治税務局・堀井巌税務管理官に地方税の電子化の動向と今後の展望について聞く。

──eLTAXへの加入団体が、いよいよ地方公共団体の9割を超えました。
堀井
 そうですね。平成17年に6団体からスタートしたeLTAXですが、着実に加入団体数を伸ばし、平成22年度中にはすべての団体が参加する意向を示しています。これとともに、今年1月には電子申告受付サービスの実施団体も706団体となりました。背景には、地方税の電子申告に対する理解増進に加え、今年度よりスタートした「公的年金からの個人住民税の特別徴収」(年金特徴)制度への対応があります。また、平成23年1月実施を目指して検討を進めている「国税庁からの所得税の確定申告データの送信」(国税連携)も追い風となったようですね。その意味では、いまやeLTAXは草創期から本格的な稼働期に入ったといえるでしょう。

eLTAXが持つ二つの“顔”

──年金特徴をターニングポイントとして、eLTAXの役割も拡がりました。
堀井
 もともと、eLTAXには二つの“顔”があります。その一つが「電子申告の総合窓口(ポータル)」であり、もう一つが「地方税ネットワーク」です。接続団体が少ない当初はネットワークとしての機能も限られていましたが、年金特徴において社団法人地方税電子化協議会を経由機関と定めたことを契機に、一気にこちらの側面が注目されるようになりました。いずれ、すべての市区町村がeLTAXへ接続すれば、我が国における安全で確実な「地方税の情報ネットワーク」が整うこととなります。これは非常に画期的なことだと思います。

──「国民の利便性向上」と「行政事務の効率化」を実現するためには、どちらの顔も重要だということですね。
堀井
 そうですね。電子申告は国民の利便性向上のために重要な取り組みですが、市区町村にとっては年金特徴や国税連携などネットワーク機能が進むことへの期待も大きいと思います。特に国税連携については、毎年1~3月の確定申告時期になると、市区町村の担当者が税務署へ出向いて“マル住”用紙をはがし、添付資料をコピーして、それを持ち帰りパンチ入力を委託して…という具合に、課税資料収集のために大きな作業負荷をかけていました。しかし、国税連携が実現すると、いわば“パンチ入力後の磁気テープ”が国税庁から届くようなもので、事務の大幅な効率化につながります。現在、総務省、国税庁、地方税電子化協議会の三者を中心に検討を進めているところですが、その協議のポイントは三つです。第一にeLTAXは機密性の高い情報を扱うことから、何よりも「安全性の確保」が重要で、その強化へ取り組んでいます。また第二に、データを受け取る市区町村側の「利便性の向上」です。現在、各団体はさまざまな基幹システムを保有していますが、国税連携に伴いシステム改修ができる限り生じないよう、(1)データは各団体が処理しやすいXML形式にする、(2)基幹システムに依存しないシステムの構築、(3)操作性の向上──などを検討しています。さらに第三が、現行作業からの「円滑な移行」の実現です。国税連携はまったく新たな試みだけに、税務担当者としては不安もあると思いますが、すべての団体で安心・円滑に作業移行できるよう、平成22年度上半期からデータ送信テストを実施するなど、十分な検証作業を予定しています。詳細は随時ご案内しますので、今後の動きに注目していただきたいと思います。

安全性強化へ仕組みを大改訂

──安全性の確保ということでは、このほどeLTAXの仕組みも全面的に見直されましたね。
堀井
 eLTAXは、現行でも十分安全性に配慮された仕組みですが、“電子政府・電子自治体を支えるネットワークインフラ”として一層の発展を図るためには、安全性向上への不断の取り組みが不可欠だと考えています。また、eLTAXの特徴は、多くの市区町村がASP方式のサービスを利用する「クラウドコンピューティング」の考え方を採り入れたネットワークであることです。これは個々にシステムを構築する場合に比べても効率的な投資といえますが、市区町村の財政状況を考えると、さらなるコスト縮減への取り組みが重要です。そこで総務省では昨年秋、地方税電子化協議会とともに、安全性とコストの両面からeLTAXの抜本的な見直しを行いました。その一つが、LGWANの利用です。これまでeLTAXでは、IP-VPNとLGWANを利用していましたが、新しいポータルシステムが稼動する秋以降できる限り早い時期に、すべての回線をLGWANへ切り替える予定です。LGWANは、財団法人地方自治情報センターが24時間体制で一元的に監視しているため十分な安全性が確保されており、また、既存インフラであることからトータルでみれば経費削減にもつながるのではないでしょうか。
──なるほど。
堀井
 また、eLTAXには地方公共団体をはじめ、地方税電子化協議会やASP事業者など多くの関係者が関わっており、それぞれが安全強化へ取り組んでこそネットワークの信頼性も高まると考えています。そこで、このほどASP事業者の位置づけも見直しました。これまでASP事業者は「構築ベンダ」「サービスベンダ」「代理店」に分かれ、多くの市区町村が「サービスベンダ」や「代理店」とeLTAXにかかる業務委託契約を締結していました。ただ、その場合、実際にデータを管理する「構築ベンダ」との間に契約関係がないことが多く、仮に事業者側で情報漏えいなどが生じても管理監督が及びにくいという懸念がありました。さらに、地方税法の観点からも、市区町村と直接業務委託契約を結んだ事業者がデータを管理することが望ましいといえます。そのため事業者を新たに「eLTAXベンダ」として登録し直し、地方公共団体はここと業務委託契約を締結するようルールを改めました。現在、TKCをはじめ6社が「eLTAXベンダ」に登録しています。この登録を受けるためには、事業者は相当厳しい要件をクリアすることが求められますが、一方、サービスを利用する市区町村側でも現行のセキュリティポリシーを見直すなどの取り組みが重要です。さらに、安全性の観点では、データのやりとりを行う窓口の一元化も重要で、国としても「国税連携のデータ授受はeLTAXを利用する」ことを明確にすべく、地方税法の改正を予定しています。

eLTAXの今後の発展に向けて

──今後、市区町村へ期待されることは何でしょうか。
堀井
 まず何よりも、できるだけ早期に、すべての市区町村が電子申告サービスを開始することが重要です。例えば、いまやほとんどの企業で従業員の給与支払データを電子的に管理していますが、従来はわざわざ紙に印刷して従業員の住所地の市区町村ごとに郵送していました。しかも、これらにかかる事務負担は企業側のコストです。この点、電子申告が実現すれば企業は煩雑な作業から解放され、コスト削減ができます。一方、市区町村にとっても、紙で受け取った給与支払報告書を再び電子データへ変換する手間が不要となり、コスト削減や入力ミス・資料紛失などのリスクを軽減できます。このように電子申告は国民と行政双方へ大きなメリットをもたらしますが、そのためにはすべての市区町村がサービスを開始することが大前提です。現在のように実施団体が“まだら模様”の状態では、企業では電子データと紙データを送る二重の作業が発生し、折角の電子申告のメリットを活かしきれません。小規模団体では費用対効果が分からないということもあるとは思いますが、eLTAXには直接的な費用節減効果に止まらず、社会経済全体での便益効果があることを理解し、電子申告の早期実現へ取り組んでいただきたいですね。
──おっしゃる通りですね。
堀井
 また、各市区町村におけるe-Taxの普及・推進への協力が重要と考えています。国税連携が実現すれば、e-Taxで申告された分はすべて数値データで市区町村へ提供されるようになりますが、紙で申告されたものは技術的な制約から一部イメージデータで提供せざるを得ない状況です。e-Taxによる申告件数が増えれば、その分、市区町村の業務も効率化できるわけで、地元の税務署等と連携・協力を図っていくことを期待しています。
──国税連携以外に、今後予定しているサービスはあるのでしょうか。
堀井
 市区町村や納税者の要望によって、新しいサービスが必要になれば、いずれ検討することになると思いますが、当面は電子申告など現行サービスを着実に軌道へ乗せ、住民の理解を得ることと、国税連携の円滑な立ち上げに注力します。繰り返しになりますが、eLTAXを発展させていくには、電子申告などの既存のサービスを、全地方公共団体が提供できるようになることが重要です。今後、eLTAXで新たなサービスを考える上でも、サービス提供団体の増加がポイントになると考えています。
──我われとしても責任重大です。
堀井
 eLTAXは都道府県、市区町村、eLTAXベンダ等さまざまな方々の連携・協力により運営されているネットワークです。eLTAXを管理する地方税電子化協議会は、国民の利便性向上への取り組みはもとより、ネットワーク全体の安全性確保や地方公共団体の税務システムとの整合性などに留意しながら開発・運営を進めていますが、もちろん国としても今後とも必要な支援策を講じていく方針です。eLTAXの一層の発展に向けて、関係者が一丸となって引き続き取り組んでいくことを期待しています。