電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【特集】

タイトル

いま、「クラウド」など、電子行政分野において新たなトレンドが次々と誕生している。なかでも、これからの電子行政の内外へ大きな影響を与えそうなのが、「コンビニ交付」と「仮想化技術」だ。注目の二つのテーマについて、それぞれの専門家に現状と展望を聞く。

タイトル

──いよいよ証明書などのコンビニ交付サービスが始まりました。
井上
 地方自治情報センターでは、東京都渋谷区、三鷹市、千葉県市川市、セブン-イレブンの協力を得て、「コンビニのキオスク端末による証明書等の電子交付」の実現へ取り組み、今年2月2日より7店舗で試験的にサービスを開始しました。3月1日からは首都圏近郊1都8県約5,900店で、また5月中には38都道府県の約1万2,600全店で、先行3団体の住民票の写しと印鑑登録証明書の取得が可能となります。コンビニ交付は、住基カードの多目的利用により市区町村で導入が進んでいる自動交付機の延長線に位置付けられるものです。コンビニを活用することで、24時間365日、全国どの店舗からも証明書等を取得できることから、住民にとっては役所まで出向く必要がなく、自宅や職場などの最寄りの店舗でいつでもサービスを受けられるというメリットがあります。また、市区町村にとっても窓口混雑の解消などが期待されるでしょう。

──コンビニ交付の特徴は?
井上
 まず、コンビニの店員を介さずに住民自身がキオスク端末を操作する仕組みだということです。この端末は、コンビニでよく目にするマルチコピー機です。住民が交付申請を行うと、住基カードの情報を読み取り、証明書交付センターを経由して市区町村の証明発行サーバへ問い合わせます。そこで問題がなければ、キオスク端末があたかもその市区町村の自動交付機のように動作して、必要な証明書等が発行されるという仕組みです。また、もう一つの特徴は、一般に自動交付機では偽造・改ざん防止を施した専用紙を使用しますが、コンビニ交付では通常のコピー用紙を使っていることです。そのため、証明書は表面と裏面に3種類の偽造・改ざん防止処置を施しました。これらによって証明力を担保し、安心してお使いいただけるようにしています。

参加団体は順次拡大

──サービス導入へ必要な準備は?
井上
 サービスにあたっては、まず住民記録システムから証明書の発行・交付に必要なデータを抜き出して送信する「証明書発行サーバ」の構築が必要です。証明書発行サーバには、暗証番号など利用者情報を管理する機能や、証明書データをPDF化する機能などが求められます。なお、証明書サーバと証明書交付センターはLGWANで接続されるため、「LGWANセルフASPセグメント」の構築も必要となります。二つ目は、住基カードで多目的なサービスを提供するためのシステムの構築です。なお、地方自治情報センターでは全国の市区町村が共通で使える「ICカード標準システム」を無償で提供していますので、ぜひご活用ください。そして三つ目が「住民への広報活動」で、コンビニ交付を利用する場合、予め住基カードへ必要な情報を書き込んでおかなければならないことから、その事前周知も欠かせません。

──必要な費用は?
井上
 コンビニの手数料は、証明書1件あたり120円です。また、証明書発行サーバ等の構築・運用にかかる経費とは別に、参加団体には証明書交付センターの運営費負担をお願いしています。負担額は団体規模に応じて異なり、例えば人口15万人未満では年間300万円となっています。なお、平成23年度までは実証実験と位置付けていることから、3年後に60団体程度での利用を見込んだ負担額の計算としており、その後、導入団体が増えれば負担額を下げられるのではないかと考えています。なお、地方自治情報センターではコンビニ交付への参加に係るシステム整備についての支援事業を行うこととしています。詳しくは、研究開発部までお問い合わせください。
──サービス範囲の拡大計画は?
井上
 現在はセブン-イレブンのみとなっていますが、全国展開を考える上では他のコンビニ事業者を始め、郵便局やJA、あるいは大規模商業施設などにも参加していただければと思います。また、サービス内容については、現時点では住民票の写しと印鑑登録証明書に限定していますが、今後拡大は可能です。例えば、市川市では介護タクシー券や鍼灸マッサージ補助券なども自動交付機で発行しており、いずれこうしたものも対象としていければ、住民にとってさらに身近で便利なサービスになるでしょう。さらにコンビニなどサービス拠点が増えることで、そこからまた新たなサービスが創造されることも期待されます。まだスタートラインですが、住民の利便性向上へ、コンビニ交付サービスのより一層の強化拡充に取り組みます。

タイトル

 厳しい経済環境のなかで、組織が継続的に成長していくためには、ITコストの抜本的な改革と経営戦略を支えるIT投資へのシフトが必要です。いま、ITシステムのスリム化と強靭化の両面を実現する「仮想化ソリューション」への期待が高まっています。

仮想化とは何か

 仮想化とは「物理的な性質や境界を覆い隠し、論理的な資源利用に分割して提供する」ことで、昨今話題の仮想化技術としては「サーバ仮想化」「クライアント仮想化」などがあります。
 「サーバ仮想化」とは、1台のサーバをあたかも複数台のコンピュータのように論理的に分割し、それぞれで別のOSやアプリケーションを動作させ、CPUやメモリなどの資源を最大限に活用する技術です。サーバを集約化することで、コスト削減や、OSやアプリケーションのハードウェアに対する依存性を解消し、柔軟な運用を実現することができます。

 また、「クライアント仮想化」とは、クライアント側の実行環境を、ユーザーが利用しているパソコン上ではなく、センターに配置したサーバ側に用意するものです。このためクライアントパソコンは、画面表示とキーボードやマウスから入力を行うだけの“入力端末”となります。
 クライアント仮想化を実現する方式としては、大きく2種類があります。一つが、「1台のサーバ上に複数のパソコンを仮想的に構築し、クライアントパソコン環境を丸ごとサーバ上に用意する」(下図参照)もので、もう一つが「Windows ServerOS上にクライアントパソコンとしてのアプリケーションの実行環境だけを用意する」ものです。いずれの方式もクライアントとしての実行環境をセンターのサーバに集中し、さらにドキュメントやデータをセンターのファイルサーバで集中管理します。

 これにより、運用管理工数の削減やパソコン環境の統制に効果を発揮するとともに、情報を集中管理することでセキュリティ強化や情報漏えい対策に効果を発揮します。また、センターに接続できればどこからでも利用できるため、最近では新型インフルエンザの感染拡大時や、災害発生時の事業継続基盤としても注目を集めています。

仮想化の効果

 では、すでに利用しているユーザーは、どんな点に効果を感じているのでしょうか。まとめると次の4点に集約されます。
1.コスト削減効果
 これは、即効性の点から多くのユーザーが仮想化の目的に掲げる項目です。実際に仮想化技術によりサーバ集約を行うことで本来必要なサーバ機器を削減でき、初期導入コストを下げることができます。また、柔軟な運用により運用管理コストも含めて経費を抑制できます。
 さらに、OSやアプリケーションとハードウェアの依存性が解消されることで、それまで使っていたOSやアプリケーションなどをそのまま新しいハードウェア上で使うことができます。こうした旧資産の延命に加え、資源利用率の向上、電力削減(CO2削減)、省スペース化など、さまざまなシーンでTCO削減を図ることができるのも仮想化の特徴です。
2.インフラ標準化を加速する
 部門ごとにサーバが分散している状態では、情報システム部門がすべての業務システムの上流工程に関与することは難しく、ITガバナンスの推進を阻む要因にもなっていました。この点、仮想化技術を活用してサーバ集約を図ることで、情報システム部門主導によるアーキテクチャーの選定を実現できます。
3.業務部門への迅速なサービス提供
 新規サーバを導入する際、従来は見積もりやハードウェアの手配などで1~2か月を要していました。しかし、仮想化の場合、新規サーバの導入も仮想サーバを構成するファイルの複製で実現できるため、大幅な効率化ができます。
4.安全性強化と運用管理の効率化
 情報漏えいのリスクを減らすためには、データを個人のパソコン上に置かないことが有効といわれています。クライアント仮想化では、OSとアプリケーション、データは、センターに配置したサーバ側で管理されるため、個人のパソコンにはデータが存在しない仕組みとすることができます。また、管理される対象がすべてセンターに集中することになるため、クライアント環境の新規作成やバックアップ、ウイルス対策などの作業が一括して行え、システム管理者にとっても運用しやすい環境が構成できます。
 さらには、システム全体の運用管理の効率化、在宅勤務やモバイルワークなどの新たなワークスタイルの創出、省電力による環境対策など、数多くのメリットが期待されます。

 さて、仮想化技術はこれから本格導入の時代を迎えますが、実際に導入する場合、「仮想化の導入効果が不明確」「最適な製品・規模の選択が難しい」などの不安を持たれている方が少なくありません。これらを解消するには、事前アセスメントやシステム最適化など、各分野横断での総合的なコンサルティングや技術サポートが非常に重要なポイントになります。
 地方行政の現場では、ITの活用範囲がどんどん拡大しており、団体規模を問わず「効率的な構築・運用」と「コスト削減」は喫緊の課題となっています。仮想化技術は、そうした課題を解決する一つの手段であり、今後の動向に注目いただければと思います。