電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【特集】

タイトル

──これまでの行政情報化の取り組みについて教えてください。

五十畑 佐野市は平成17年2月に旧佐野市、田沼町、葛生町が合併して誕生しました。これにより行政区域の規模も拡大したことで、市民が不便さを感じないよう2町の旧庁舎に総合窓口課を置いて、住民票の写しや各種税証明書の交付申請、介護・福祉関係の手続きを可能としています。そのため、各庁舎と支所・出先機関を結ぶ高速大容量の通信回線も整備しました。また、『第二次佐野市行政改革大綱』でも、「市民サービスの向上」の観点から電子化の推進を改革の推進項目へ組み込み、これまで計画に沿って着実に拡充を図ってきました。代表的なところでは、デジタル防災無線や公共施設案内・予約システムを構築したほか、庁内ではGISやグループウェアの整備、情報セキュリティの強化などです。

課題解決へ民間活力を有効活用

──平成22年9月には、ハウジングサービスを導入されました。
五十畑
 現在、住民情報や税情報など基幹系システムのサーバ一3台を、TKCインターネット・サービスセンター(TISC)へハウジングしています。現在のところ、スピードダウンなど大きなトラブルもなく順調に動いています。

櫻井 サービスの利用を決めた理由は主に二つで、一つ目が「住民情報の安全性の確保」でした。現在の本庁舎は昭和37年に建築されたもので、地震に見舞われた場合には甚大な被害を受けることも想定されます。また、昨年の夏は記録的な猛暑となり、全国各地でゲリラ豪雨による被害が発生しました。佐野市は昔から自然災害が少ない地域ですが、いままで何もなかったから、これからも大丈夫ということはありませんからね。また、第二の理由が「職員による運用管理の限界」を感じていたことです。昨今、行政情報システムは複雑化の一途を辿り、担当職員には高い専門性が求められるようになっています。それならば、サーバの保守・運用管理は知識も経験も豊富な専門家へアウトソーシングし、情報政策課は電子化の推進へ集中した方が効率的です。折しも、ハウジングやクラウドなどが注目される時代背景もあって、基幹系システムのサーバ更新を機にハウジングへ踏み切ったわけです。
──導入に不安はありませんでしたか。
櫻井
 やはり、初めてのことだけに不安はありました。例えば、TISCとは物理的に距離が離れていることから、回線切断による業務停止や情報漏えいといった危険性がないのか、回線速度による事務処理への影響は大丈夫か──などです。こうした不安を解消するため、実際に関係各課職員による事前テストを3回実施し、その結果をシステムの改善やネットワークの見直しにつなげてもらいました。また、情報セキュリティ対策としては、専用回線により安全性を確保したことに加え、メイン回線の切断時に備えて別にサブ回線も用意しました。さらに、メイン・サブともに回線が切断した場合を想定して、庁内の「照会発行サーバ」でデータの二重化を図るなど、第二、第三の対策を打っておくことで不測の事態にも業務を停止しない体制を整えました。

未来を見据えた“先行投資”

──行財政改革が進むなか、財政面での反対はなかったのでしょうか。
五十畑
 厳しい財政状況のなかで、佐野市でも職員一人ひとりがコスト意識を持つことが求められています。その意味では、ホストを自庁導入している団体とは違って、従来からパッケージシステムを利用していた佐野市ではハウジングサービスによるコスト削減効果は期待できません。むしろ、回線コストや運用監視など新たな経費が発生しました。しかしながら、市民の大切な財産である住民情報を“守る”という目的達成において、「物理的・人的・技術的」に万全な対策を講じることは、単純にコスト面だけで導入効果を計れるものではありません。だからこそ、最終意思決定を行う「政策会議」(市長主宰)でも、住民情報保護の重要性が認められハウジングサービスの活用が決定されたのだと思います。また、導入に際しては20名以上の市議会議員の方々もTISCを視察したのですが、その設備環境を実際に見たことで取り組みの重要性を再認識していただけたようです。
──今後の計画について教えてください。
五十畑
 「市民サービスの質・利便性の向上」と「行政経営の効率化」の推進は今後も変わらぬテーマです。例えば、公共施設案内・予約システムの充実や電子入札システムを導入するほか、コンビニの活用についても注目しています。また、グループウェアや財務会計システムも時期を見てハウジングの検討をする考えです。中長期的には「自治体クラウド」などの動向も踏まえながら、平成24年度をめどに新たな情報化計画を策定する予定です。その意味で、今回のハウジングサービスは本格的なクラウド利用に向けた先行投資ともいえますね。また、これからは医療・福祉・防災など暮らしに密着した分野でもICTの活用が求められていくと思います。市として何をすべきか、何ができるか…。情報政策課も知恵を絞り、一層の「電子化の推進と質の高い窓口サービスの提供」を目指します。