電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【特集】

タイトル

──情報化の取り組みについて教えてください。

三口 平成17年4月1日の合併を契機に、それまで汎用機で運用してきた基幹システムを刷新するとともに、市の主要施設を光回線で接続するなどインフラ整備を進めてきました。一方、「市民にとって便利で使いやすいサービスの提供」という観点から、施設予約や地方税の電子申告などもスタートしています。こうした“市民本位”の視点から電子市役所を進めるなかで、業務のあり方も柔軟に変わりましたね。例えば、施設予約の管理では紙の台帳をすべて廃止するとともに、運用ルールもシステムに合わせて統一することで、業務の簡素化・効率化につながっています。
田中 さらに、「市役所の最大の痛手は市民の信頼を失うこと」であるとの考え方に立ち、情報セキュリティ対策にも注力してきました。例えば、研修を繰り返し実施することで職員のセキュリティ意識の徹底を図るとともに、基幹系システムを利用する場合には必ずICカードによる認証を行うなど物理的な対策も採り入れています。職員からすれば多少使い勝手が悪いかもしれませんが、メカニズムとしてしっかりとしたセキュリティ対策を施すことが何よりも大切だと考えています。

BCPの観点からもクラウドに注目

──電子市役所を推進する上でも、市民本位の行動原理が徹底されていますね。

田中 そうですね。基幹システムをTASK.NETシリーズへ切り替えたことで、以前に比べ大幅にコストが削減され、また業務の効率化も進展しました。でも、さらに市民サービスの迅速化や利便性を向上するために、我々が基幹システムに求める“ハードル”はどんどん高くなっています。例えば、いま国民健康保険料の引き上げなどもあって市民からの問い合わせが増えていますが、そうした場合でも職員の経験やスキルに関わらず正確かつ迅速に均一なサービスを提供できるような機能が充実すると便利ですね。その意味で、TASK.NETには、もっともっと進化してほしいと思います。また、いまやどこの市町村でも財政状況が逼迫していますが、海南市も例外ではありません。限られた財源のなか、市民サービスの質の向上を図る一方で情報化コストをできるだけ圧縮する努力も必要です。そのための打ち手の一つとして、注目しているのがクラウドサービスの活用です。この点でもTKCには大いに期待したいところです。
──ありがとうございます。
三口
 クラウドサービスには、(1)住民情報という大切な資産に対して安全性を確保できる、(2)不測の事態にあっても業務の継続性を確保できる──という点でも着目しています。実は、我々が最初にクラウドサービスに興味を持ったきっかけは、セキュリティや業務の継続性だったんですよ。紀伊半島沖の海域では、歴史的に見ても100~150年周期で巨大地震が発生しており、海南市は地震が発生すると甚大な被害を受けるおそれがある「東南海・南海地震防災対策推進地域」に指定されています。また、最近では局地的な豪雨や新型インフルエンザなど新たなリスクも発生しています。そのため海南市では、以前から遠隔地でバックアップされたデータを使った復旧訓練などへ取り組んできましたが、どんな時にも必要な業務をなるべく中断しない、停止してもできるだけ早急に復旧する継続性の確保は我々の責務といえるでしょう。クラウド環境でネットワークを介してサーバ等を活用するようになれば、この点でも安心です。また、セキュリティ確保の観点では、クライアント側で情報をもたない「シンクライアント」方式の導入も検討したいと考えており、クラウドサービスの動向から当分目が離せませんね。

変わるもの、変わらないもの

──今後の情報化計画について教えてください。
田中
 電子市役所は、いま行っている業務を単に電子化するだけでは不十分です。やはり、市民本位・成果重視の視点から市民サービスの見直しや窓口業務の改善を進めるとともに、「市民にとって便利で使いやすいサービスの提供」へ優先的に取り組むべきだと思います。その点では、平成24年度からコンビニ収納を開始できるよう現在計画を進めているところです。また、これに併せて収納窓口のワンストップ化など、窓口サービスのあり方も見直していく方針で、コンビニ交付にも注目しています。
三口 限られた職員数、限られた財源で市民サービスの向上を図るには、ICTをより一層有効活用することが求められるでしょう。また、これにより業務の効率化・簡素化も一段と進むと思います。しかし、行政にとって最も重要な仕事は、窓口対応や場合によっては自宅を訪問するなど、市民と直接コミュニケーションをとることです。これはどんなに情報化が進展しても削減できるものではなく、今後も重要な仕事であることに変わりはありません。これからも職員一人ひとりが柔軟な思考と行動力をもって、多様化する市民ニーズへ迅速かつ適切に対応しつつ、サービスの向上のため絶え間ない改革を続けていきたいと思います。