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【特集】

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平成22年2月、2市1区でスタートした「コンビニエンスストアにおける証明書等の交付(コンビニ交付)」は、実施団体が21へと拡大し、利用件数も順調に伸びている。政府の『新たな情報通信技術戦略』でも、コンビニ交付の普及促進が掲げられるなど、次世代の電子行政サービスとしても大きな期待がかかる。サービスの導入効果や今後の展望について、財団法人地方自治情報センターの井上賀博上席研究員に聞く。

──「コンビニエンスストアにおける証明書等の自動交付(コンビニ交付)」がスタートして1年が経過しましたが、取り組み状況はいかがでしょうか。

井上 平成23年2月7日現在で、全国21団体がコンビニ交付を実施しており、今年度中をめどに、さらに20団体がサービスを開始する予定です。
 実施団体は、北海道から熊本県まで全国に分布していますが、やはり関東近県に集中している傾向が見て取れます。なかでも特徴的なのは、6市町村が一斉に参加された長野県上伊那地域のケースです。もともと上伊那広域連合が中心となって8市町村で広域による自動交付機サービスを提供していましたが、そのうちの6団体が今回コンビニ交付にも参加されたものです。上伊那地域は、生活圏が地域内でほとんどクローズしていることから広域での自動交付機へ取り組んだ経緯があり、コンビニ交付のスタートでさらに住民の利便性が向上するとしています。このように、一つの市町村内で完結した住民サービスとして考えるのではなく、より幅広な生活圏内で利用が可能な住民サービスということでも、コンビニ交付を捉えることができると思います。
 また、利用状況については、昨年12月末時点で合計1,187枚の証明書が発行されました。その時点でサービスを実施していたのは実質四団体ですから、なかなか順調な立ち上がりといえます。平成22年度末には41団体でサービスが実施されることから、来年度には利用件数が1万件を突破することも見込まれ、証明書交付の一形態として着実に定着していくことを期待しています。

実施団体で立証された二つの導入効果

──先行団体の状況から、コンビニ交付の導入効果をどうご覧になっていますか。
井上
 コンビニ交付には大きく二つの効果があると考えています。
 一つは、住民の利便性の向上です。コンビニ交付の特長として、(1)早朝・深夜、休日でも証明書が取得できる、(2)居住する市町村に関わらず最寄りのコンビニで取得できる──ことが挙げられます。そのため、日中は都市部で仕事をしているなど、住民の生活圏と行政エリアが異なる場合でも勤務先近くで取得でき、また窓口が開いていない早朝・深夜の時間帯や休日に取得することも可能となります。
 すでにサービスを実施した市町村では、導入効果についていろいろ調査をされています。例えば、福島県相馬市の調査では、窓口時間外(平日6時30分~8時30分、17時15分~23時および休日)の利用が全体の41%を占めていました。また、千葉県市川市の調査では28.4%が市外での取得で、大阪や山形、福島、静岡などで利用された事例もあったそうです。これはコンビニ交付が多様化する住民の生活スタイルに適合し、利便性を大幅に向上する可能性を秘めている、一つの証しといえるでしょう。

──もう一つの導入効果とは?
井上
 それは、行政のコスト削減や事務の効率化です。
 東京都三鷹市では、交付証明書1枚当たりのコストを試算しています。これは、「窓口」「自動交付機」「コンビニ交付」のそれぞれのケースについて、職員の人件費や機器使用料など総額コストを、証明書の発行枚数で割って算出したものです。この試算結果を見ると、「窓口」が639円、「自動交付機」が501円であるのに対し、「コンビニ交付」では242円と、コンビニ交付における交付証明書1枚当たりのコストは、窓口や自動交付機に比べて50~60%の削減効果があることが分かりました。もちろん、すべての団体で同様の結果になるということではありませんが、コンビニ交付への参加を検討する際の一つの目安となるのではないでしょうか。
 また、行政事務の効率化の効果も期待されます。そもそも窓口には、住民に対して必要なサービス内容や手続方法を案内するといった “コンシェルジュ”としての役割が求められています。住民サービスが多様化したことで、窓口では説明等に多くの時間を必要とするようになり、住民の待ち時間も長くなる傾向にあります。そのため、市町村では住民が証明書の交付を受けるだけのために長時間待つことがないよう、自動交付機を設置して住民の利便性向上を図ってきました。これにより、市町村にとっても事務の効率化につながってきたと思います。
 いくつかの団体では、自動交付機をショッピングセンターや駅などへ設置し、さらなる活用を図っている例もありますが、コンビニ交付へ参加することで、この部分を代替することも可能と考えています。もちろん、コンビニ交付に参加したから自動交付機がすべて不要ということではなく、本庁舎や支所等に設置しておくことは必要でしょう。とはいえ、自動交付機の設置場所を増やすよりも、コンビニ交付に参加する方が、コスト面で有利なのではないかと考えています。

コンビニ交付の促進に向けた方向性

──住民への利用推進策としては、どんなことが考えられますか。
井上
 住民が証明書を取得する場面においてコンビニ交付へ誘導するには、何らかのインセンティブも必要ではないかと考えています。その一つとして、手数料を差別化する方法は住民にもわかりやすく、有効です。すでにコンビニ交付を実施している団体でも、住民票の写しを1通取得する場合、窓口では350円の手数料をコンビニ交付では300円とするなど、差別化を図っている例があります。

 今後の調査により、そうした団体のコンビニ交付の利用率が高いといった結果が見えてくるのではないかと思っています。
 また、コンビニ交付を利用するには、住民が住基カードを取得することが必要となります。これまでも、住基カードの普及に向けて多くの市町村に取り組んでいただけるよう、「住基カードと印鑑登録証の一体化」や「住基カードの無料交付」を推奨してきました。これらに加えて、コンビニ交付という住民にとって利便性の高いサービスを開始し、さらに「手数料の差別化」も行うことで、住基カードの普及につながり、コンビニ交付の利用率も高まるものと考えています。
──コンビニ交付の一層の推進策として、検討されていることを教えてください。
井上
 現在、検討しているテーマは三点あります。
 まず、コンビニ交付できる証明書の範囲の拡大です。いまは住民票の写しと印鑑登録証明書の2種類ですが、平成23年度には標準化しやすい課税証明書、納税証明書のほか、固定資産税関係の証明書を加えることができないか検討しています。ただし、固定資産税関係の証明書など市町村ごとに証明書に記載される情報項目等が異なるものについては、統一的な操作画面を展開する現在の方式に加え、市町村側にWebサーバを独自に立ち上げて、キオスク端末で画面を展開する新たな方式も検討しているところです。この方式では、各市町村が自由に新たな証明書等のコンビニ交付へ取り組むことが可能となります。また、市町村のニーズや必要となる経費等についても十分な研究が必要と考えています。
 次に挙げられる証明書として、戸籍謄抄本があります。
 昨年6月に公表された『新たな情報通信技術戦略』でも〈国民の便益が高いサービス(例:住民票、印鑑証明、戸籍謄抄本等の各種証明書の入手等)を特定し、それらをオンライン又は民間との連携も含めてオフライン(例:行政キオスク端末)で利用できるようにする〉と取り上げられており、所管省庁である法務省の議論の進展に注目しつつ、検討を開始したいと考えています。その他にも、市町村や住民にとってニーズの高い証明書としてどのようなものがあるのか、市町村とも議論を進めているところです。
 二点目は、コンビニ事業者の新たな参加や、コンビニ事業者以外の事業者への拡大になります。コンビニ交付へ参加するには、キオスク端末としての要件を満たすための投資を伴うことから、コンビニ事業者には店舗内の機器の入れ替え時期に合わせて参加する方向で検討を進めていただいています。また、コンビニ交付が必要とする情報セキュリティを確保し、かつキオスク端末を設置・管理できる事業体ならば参加できることから、コンビニ事業者以外の他の業態にも徐々に広まっていくだろうと期待しています。

 現時点では、関東近県の市町村の参加が多いような状況ですが、今後はもう少し地方の都市にも広がっていくと思っています。また、上伊那地域のように生活に密着したエリアの市町村が複数で広域的に参加することも有効でしょう。このようなケースにおいては、全国的に展開している事業者でなくても、一定のエリアに複数の店舗を展開しているような事業者の参加が十分考えられます。
 三点目は、新たな市町村の参加という観点です。平成22年度においては、コンビニ交付への参加に係るシステム整備についての支援事業を行い、多くの団体にご活用いただきました。この支援事業については、平成23年度においても継続する方向で調整しているところです。予算確保にかなり苦労しているため、同等規模とはいかないと思っていますが、市町村の積極的な取り組みに対して支援していきたいと思います。
──なるほど。より利便性の高いサービス実現へ、ますます期待がかかりますね。
井上
 コンビニ交付は、多くの市町村や事業者に参加していただくことで、国民が利便性を身近に実感できるサービスとして全国に定着するものと確信しています。我々としてもコンビニ交付の一層の拡充と普及促進へ、今後も積極的に取り組みたいと考えています。