電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【トレンドビュー】

「公的年金からの住民税の特別徴収」開始で、地方税の電子申告導入に向けた動きがにわかに慌ただしくなってきた。秋田市や田辺市に次いで、埼玉県三芳町が町村では全国初となるサービス開始を表明。LGWAN─ASPへの問い合わせも相次いでいる。そこで、地方税の電子申告について基本的な事項を整理する。

なぜ電子申告を行うのか

 地方税の電子申告の意義は、納税者の利便性向上と行政の効率化の2点にある。
 例えば法人税申告の場合、納税者は事業所がある都道府県・市区町村ごとに申告手続を行うが、そのための作業に多くの労力を要し、コストも馬鹿にならない。実際、全国規模で事業展開するある企業では、「現在、数名で10日ほどかかっているが、すべての市区町村で電子申告が始まれば作業は4分の1になる」と語る。
 また、市区町村にとってはパンチ入力の費用を軽減できるほか、申告書のチェック業務の効率化や業務プロセスの見直しなどの効果が期待できる。
 地方税の電子申告の普及で、最も重要なのは「市区町村の参加」だ。なぜならば、市区町村の参加なしに電子申告の効果は期待できないからである。先述の企業も「すべての市区町村が対応しない限り、作業が煩雑となりミスも起こりそうで電子申告に踏み切れない」としており、これは多くの事業者の本音であろう。
 これまで市区町村が電子申告導入に踏み切れなかった要因の一つに、費用対効果の問題があった。そこで、地方税ポータルシステム「エルタックス」を運営する社団法人地方税電子化協議会では、平成20年度に電子申告を開始する市区町村に対して、運用関係費負担金を2年間免除するなどインセンティブを打ち出している。
 また、国も電子申告の普及促進策を講じており、その一つが「公的年金からの住民税の特別徴収」だ。これは市区町村からの長年の要望が実現したもの。今後、年金情報に関する社会保険庁と市区町村とのやりとりは、エルタックスを使って電子データで行われることになる。

LGWAN─ASPとは

 地方税の電子申告サービスを開始する場合、審査システムの構築が必要となる。その方法は、(1)単独で設置する、(2)県域など複数団体で共同運用する(協議会方式)、(3)民間企業が構築・運用する審査システムを利用する(ASP方式)──の3つ。
 このうちサービスのみを有料で受けるASP方式は、ほかの方式に比べて機器調達や運用にかかるコストが安く、利用料金の負担が安定しているなどの特長を持つ。これを、LGWANを介して行うのが「TKC行政ASP/地方税電子申告支援サービス」だ。LGWANを使うことで、既存インフラを有効活用でき、セキュリティ面でも安心できる。
 本サービスでは〈審査システム〉と〈データ連携システム〉を提供している(上図)。納税者(法人および税務代理人)から送られた申告データは、エルタックスで振り分けられ、民間事業者の〈審査システム(審査サーバ)〉を介して市区町村の〈審査システム(審査クライアント)〉へ届く。また、〈データ連携システム〉は、基幹税務システムとのデータ連携を容易にする仕組みだ。例えば、TKCの基幹系税務システムを利用する市区町村は、ボタン一つで申告データを取り込むことができる。
 なお、市区町村がより円滑に電子申告を導入できるよう、TKCでは全国の主要なベンダーに対して、各社の基幹系税務システムとのデータ連携協力を提案している。具体的には、各社システムへ申告データを自動連携する機能を付加し、ASPサービスも提供してもらうもの。これにより、協力ベンダーのシステム利用団体では、最小のコストで「電子申告サービス」と「税務業務の効率化」を実現することができる(詳しくはベンダー各社へ)。早ければ7月中にも協力会社が決まる予定だ。

始めるには何をするのか

 エルタックスとは本来、電子申告を行うためのインフラであり、公的年金からの住民税の特別徴収とともに電子申告サービスを実施する・しないに関わらず、基本的には同じ環境を整備することになる。
 なお、電子申告を開始するためには、以下の準備作業が必要となる。
●協議会への参加
 理事会の承認事項のため、タイミングによっては参加が確定するまでに時間がかかることから、まずは電話で参加意思を伝えることが肝要だ。
 また、エルタックス導入接続時期は予め決まっており、当面の予定は9月、12月、21年4月となっている。ASP方式の場合、従来はサービス開始の5か月前までに協議会への参加が求められていたが、この期間は多少短縮されそうだ。
●庁内の準備作業
(1)システム環境などの整備
 基本的にLGWANへ接続できるパソコンを用意するだけと、システム側の準備はほとんどない。そのほか、事前にベンダーと調整の上、接続試験や研修を実施する。基幹系税務システムと連携させる場合、その方法の確立とシステム改修も必要だ。
(2)運用マニュアルの作成
 エルタックスは、いわば“郵便局”のようなもので、申告データはそのまま市区町村へ届く。このためデータの重複や電子証明書の添付漏れなどがあった場合の対処法など、業務プロセスの流れに沿って細かい方針を決めておく必要がある。

 そのほか、利用促進を図るためには、納税者や税務代理人(税理士等)へのPRも欠かせない。ちなみに秋田市と田辺市では、ホームページや広報媒体での情報提供のほか、リーフレットを配布したという。
 『IT新改革戦略』では電子政府・電子自治体の推進を“日本社会の改革”と表現する。電子申告は納税者と市区町村双方の税務事務の効率化とコスト削減を図るという点で、最も端的な社会改革といえ、一日も早い市区町村の対応が期待される。