電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【トレンドビュー】

韓国電子政府の新たなサービス
財団法人地方自治情報センター・自治体セキュリティ支援室長
石川家継

2007年11月、「韓・日情報化セミナー」がソウルで開催されました。財団法人地方自治情報センターでは、このセミナーで日本の証明書自動交付機について発表するために韓国を訪問しました。そこで、このセミナーで発表された韓国電子政府【注1】の新たな動きと、ソウル特別市江南【カンナ厶】区のテレビを利用した電子政府サービス、および非武装地帯近くにある統一村における地域情報化の取り組みを視察しましたので、その状況についてレポートします。

キオスク端末

 韓国では証明証の自動交付機を「キオスク端末」と呼んでいます。このキオスク端末は全232自治体に導入され、総数は1600台以上に上っています。発行可能な証明証の種類も、住民登録、戸籍、土地台帳、建物台帳、自動車登録、兵役証明、各種課税証明など40種類にも及んでいます。設置場所は、役所はもちろんですが、デパートや地下鉄、銀行、病院など利便性の高い場所にも設置されているのが特徴です。
 本人確認は住民登録番号【注2】と指紋です。このためキオスク端末には、カードを読み込む装置がなく指紋センサーが内蔵されています。ここが日本の自動交付機と大きな違いです。


オンライン本人確認サービス(G―PIN)

 日本では近年、個人情報の漏えいが社会問題になっていますが、韓国でも同じようにオンラインまたはオフラインで住民登録番号を使用することで、ハッキングやIDの盗用、住民登録番号の漏えいという事件が1950機関で発生しています。韓国政府はこのような事態について、住民登録番号を無分別に使用した結果としています。
 そこでオンライン上で身元確認のために使用している住民登録番号を、これとは異なる個人識別番号に代替し、本人を認証するサービス「G―PIN」【注3】を提供することとしました。これを利用するには、統合ID管理センターに自分の身元情報を提供し、本人確認を受ける必要がありますが、G―PINにより成りすまし等を防止することができます。
 2007年から、この新たな本人確認サービスを展開し、すべての公共機関には、2010年をめどに拡大する計画となっています。今後、韓国ネット社会のトレンドとなるかもしれません。

TV電子政府

 電子申請はパソコンから行うものと考えがちですが、高齢者等パソコンの利用が苦手な方をターゲットとしたサービスが江南区では展開されています。韓国電子政府の最先端を行っているのがソウル特別市江南区です。この江南区では、デジタルケーブルテレビを利用した「TV電子政府」のサービスを昨年から提供しています。
 これは、ケーブルテレビのセット・トップ・ボックス(STB)とリモコンで電子申請ができるというものです。STBにはUSB端子が付いていますので、プリンターが接続できます。パソコンからの電子申請と同様に、STBからの電子申請でも証明証の印刷【注4】が可能です。TV電子政府の電子申請では、本人確認をUSBキーで行います。韓国の公認認証(日本の公的個人認証)の電子証明書は、パソコンのハードディスクやUSBキーに格納することができます。このためSTBからの電子申請でもUSBキーで本人確認ができるのです。


 TV電子政府のサービスとして、電子申請のほかTV教育、アンケート、税金納付、民防衛・災難情報など全部で11のメニューがあります。韓国は学歴社会といわれるほど、子供の教育に非常に熱心です。TV教育は、修学能力試験(日本のセンター試験のようなもの)のためにビデオ・オン・デマンド方式で提供されています。ちなみに子供は学習塾などの授業を2~3か所かけ持ちで受けていると聞きました。また、民防衛・災難情報というのも、北朝鮮と停戦中という韓国の事情が表れています。
 19万件のケーブルテレビの契約に対して、3万件がこのTV電子政府を利用しています。TV電子政府の利用には、専用のSTBをレンタルすることになっています。月額5000ウォン(日本円で630円程度)のレンタル料で利用しやすくなっています。

Invil(インビル)

 韓国では農村、漁村、そして山村のような情報化から疎外された地域に、超高速インターネットや電子商取引などを導入しています。さらに、地域住民へのIT教育を行い地域の情報化を推進するとともに、地域の特産品をインターネットで販売し、地域経済の活性化にも資するという「Invil(Information Network Village)施策」を行っています。
 ソウル北西部に位置する京畿道【キョンギドウ】の統一村。ここは、北朝鮮との軍事境界線から南と北にそれぞれ2キロメートルずつ区切った非武装地帯(DMZ)のすぐ近くにある村です。この統一村は特産品の大豆をインターネットで販売しています。このため地域情報センターでは20台のパソコンを備え、住民への情報化教育を行っています。
 DMZのすぐ近くということで、村に入るには軍隊が管理するゲートを通らなければなりません。そのため、この村を訪問するには政府の許可証が必要となります。このような環境の中でも、韓国は地域の情報化を推進していることには驚かされます。
 このほか、北朝鮮とつながっている鉄道の韓国側最北端の駅である都羅山【トラサン】駅と、北朝鮮の生活が望遠鏡で眺められる都羅展望台を視察しました。さらに北朝鮮が、韓国侵攻用のために掘ったという第3地下トンネルも視察してきました。南北分断という事実を目の当たりにして、やや複雑な思いの視察でした。