電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【トレンドビュー】

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 今回の経済危機は長期化するとの見通しもあり、市町村では直面する緊急対策を講じるとともに、いまのうちから3年後、5年後を見据え“健全経営”への道筋を立てておく必要があります。折しもTKCでは、数年前より行政の経営力強化を支援する新・財務会計システムを研究し、その成果として「TASK.NET公会計システム」を提供しました。今回は、この開発コンセプトをご紹介します。

 今年4月1日より「地方公共団体の財政の健全化に関する法律(財政健全化法)」が全面施行となりましたが、今回の経済危機は、ただでさえ硬直化している地方財政に追い打ちを掛けることになりかねず、今後、早期健全化・財政再生の基準に達する市町村の増加も懸念されます。
 そのため、地方公共団体では財政運営上の課題を広く把握し、目標とする指標や年次を定め財政の健全化を図ることが急務で、そのベースとなる「発生主義・複式簿記」の考え方を採り入れた地方公会計の整備を急ぎ進めることが求められています。
 しかしながら、「健全化判断比率」や公会計の「財務四表」などは、財政健全化のための手段にすぎず、そのままでは行政の経営管理にほとんど役立ちません。重要なのは、これらで示された会計情報から「収入をどのように増やすか」「どの支出を減らすか」といった具体的な打ち手を考え、計画を立案し、実行することです。外部報告を目的に財務書類を作成する「制度会計」に対し、こうした会計情報を内部報告用に加工し経営判断に役立てる手法や考え方を「管理会計」と呼びます。

経営を支える「3つの視点」

 当社は長年にわたり、会計事務所とその関与先である中小企業、地方公共団体へ、主に税務と会計に特化したシステムを提供してきました。
 なかでも近年、税理士・公認会計士の全国組織・TKC全国会(3月末現在:9,861名)が取り組む「中小企業の黒字決算支援」で、活動の一つの柱となっているのが経営者向け戦略財務情報システム「FX2」の利用促進です。このシステムは、経営者の戦略的意思決定を支援するツールとして開発されたもので、商法が定める記帳義務を正しく履行する「制度会計」面に加え、「管理会計」面の機能拡充が図られており、現在約14万社に活用されています。

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 国内法人の7割が赤字といわれるなか、企業が存続・発展していくためには黒字決算が不可欠で、それには経営者が組織全体の動向を正確に把握し、問題点があれば即座に有効な対策を講じることが重要です。こうした管理会計の有効性は、FX2利用企業の黒字割合が55.8%(平成20年版TKC経営指標)を占めるという状況からも明らかです。
 企業会計と公会計は目的や考え方に相違はありますが、財務会計システムの果たすべき“役割”は変わるものではなく、企業の成功例は市町村の健全な経営(財政の健全化)実現にも大いに参考となります。そのため当社では、企業会計と公会計の担当者を一つの設計部門に集め、その成果として、企業会計で培ったノウハウを活かした「TASK.NET公会計システム」を開発しました。
 キーコンセプトは、経営トップ(首長)の戦略的意思決定を支援するツールであること。その最大の特長は、三つの階層別機能を一つのパッケージシステムとして用意したことです。

1.経営戦略レベル

トップ(首長)が、組織全体の動向を即座につかむため利用する機能

2.業績管理レベル

責任者(管理者)が、担当する事業の業績を検証し、次の打ち手を考えるため利用する機能

3.業務執行レベル

実務担当者が、迷わない、失敗しない、法令に準拠した業務を執行するために利用する機能

システムの利用目的が変わる

 これまで、行政情報システムは「事務の効率化」を目的として利用されてきたことから、当社でも「遵法性を担保し、実務担当者が効率的かつ正確に処理できる」ことに主眼を置いた機能強化を図ってきました。しかし、今後の行政経営を考えると、情報システムは「職員視点から住民視点へ」とダイナミックに変わる必要があります。財務会計システムも、その利用を「業務の効率化」や「制度会計」のレベルに止めているとしたら、まさに“宝の持ち腐れ”です。
 そこで、当社は財務会計システムが、市町村にとって3年後、5年後のビジョン・経営計画を立案し、未来のまちづくりを描く出発点となるようにしたい。そのためには「戦略・計画」から「管理・統制」「日常業務遂行」レベルに至る管理会計機能の充実が欠かせないと考えました。
 行政経営において、首長の重要な仕事は、「よりよいサービスを適正な価格で提供する」ために、組織の経営体質を望ましい方向に変えていくことです。その経営判断には、実務担当者が日々入力した仕訳データに基づき、組織全体の業績や資産・負債の推移、あるいは最新の経営管理資料をタイムリーに確認できることが理想です。そして、疑問点があれば、仕訳データにまで簡単にさかのぼって原因を究明できること。
 さらには「他団体との比較」に加え、「過去~現在の時系列の推移」や「将来の予測(このままならこうなる)」、あるいは高齢者比率や地理的条件といった非財務データと関係づけた精緻な経営分析などのシステム利用が想定されます。このように、行政の経営強化を支えるため、財務会計システムも進化し続けていくことが望まれます。
 そのため当社では、第1フェーズ(1~2年)では主に「制度会計」への的確な対応を、第2フェーズ(3~5年)では連結対象も含む「管理会計」機能拡充へと、二段階でシステム拡張を図る計画です。
 30年前、「TASK80」の登場が、市町村のコンピュータの利用を、ホストによる計算処理から、窓口業務でのリアルタイムな処理、あるいは事務の効率化支援へと大きく変えました。いま、行政の経営力強化を支援する財務会計システムは、他社でも研究が進んでいると思いますが、再び新たなシステム活用の世界を創り出すため、当社も「TASK.NET公会計システム」の完成形を追求し続けます。

タイトル

1.戦略的意志決定支援機能の搭載

 市町村全体の最新業績をリアルタイムで要約表示し、トップ(首長)がいつでも確認可能な機能を搭載します。また、財政シミュレーション機能では、将来の見通し(年度末・翌年度末・長期)を把握することが可能で、あわせて時系列比較による動向の把握とドリルダウンによる原因究明を可能とします。

2.事業別業績管理機能の搭載

 事業ごとの責任者(部・課長)が、担当する事業の最新業績を把握できる機能を搭載します。部課長によるPDCAサイクルの組み込みを行い、目標達成に向けた打ち手の検討を可能にします。

3.公会計改革への万全な対応

 予算執行データから複式簿記の仕訳データへのリアルタイムでの自動変換機能を搭載します。実務担当者が、迷わない・失敗しない・完全なデータを作成できる機能を搭載します。また、固定資産管理システムとのシームレスな連携により資産の把握も可能となります。

4.予算制度改革を支援する機能の搭載

 枠配分予算への対応や複数年度予算、予算インセンティブ制度などへの対応を通じて、予算制度改革を支援します。