電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【トレンドビュー】

タイトル

 「企業の地方税、自治体の54%が電子申告使えず」──今年10月、こうしたタイトルの記事が、全国各地の地方紙へ一斉に掲載された。いずれの内容も、地方税の電子申告の早期実現を求めるもので、それだけ一般社会からの期待度が増しているという表れであろう。目前に迫った国税連携を円滑・確実に実現するとともに、こうした納税者の声にどう応えていくべきか、地方税の電子化のいまを考える。

 eLTAXの運用がスタートしてから5年。今春、すべての市区町村がeLTAXとの接続を完了し、これにより地方税務行政に欠かせないサービス運用基盤が整った。
 そして、今年12月には地方税の電子申告受付サービスの実施団体が1,000団体を突破し、市区町村全体の6割に達する。小誌3月号で、社団法人地方税電子化協議会が述べた通り、まさに「平成22年度が転機の年」となったわけだ。確かに1年前と比べたら飛躍的な進展といえるが、見方を変えればまだ700団体が電子申告サービスを実施していないことになる。
 来年1月の運用開始に向けて、国税連携を円滑・確実に実現することは重要な取り組みだ。それとともに、市区町村は、社会から「電子申告受付サービスの早期実現」が求められていることを忘れてはならない。

迫られる“紙”の業務からの脱却

 本誌が発行される頃、市区町村では国税連携の導入準備もいよいよ大詰めを迎えている。特に12月には、国税連携システムやポータルセンター機器更改など各種試験が相次いで予定されていることから、担当職員にとっては、まさに“ラストスパート”の心境であろう。だが、これらは国税連携の“ゴール”ではない。
 国税連携の最大のメリットは、「確定申告書のデータ化に伴う事務とコストの削減」といわれるが、それには基幹システムとの連携が重要だ。
 ご承知の通り、国税連携は、「国税電子申告・納税システム(eTax)」と「国税総合管理システム(KSK)」の申告データが、eLATX経由で市区町村へ提供されるものだ。しかし、紙で提出された確定申告書のイメージデータで届く「KSK」分は、そのままでは基幹システムと連携できない。ちなみに、TKCでは新たに「データ連携サービス」を開発して自動連携を実現したが、基幹システムとの連携は課税処理に直接影響する部分だけに、目先の対応ではなく将来を見通した取り組みが必要といえるだろう。
 また、今年8月に告示された『電気通信回線その他の電気通信設備に関する技術基準及び情報通信の技術の利用における安全性及び信頼性を確保するために必要な事項に関する基準』への対応として、年内には庁内のセキュリティポリシーの見直しや、ネットワークの設定変更などを完了しておかなければならない。加えて、原本データの保管・管理の方法や、万一に備えたデータバックアップのあり方の検討も欠かせない。

 さらに、そうした国税連携の仕組みの構築とともに、電子化によってデータの処理形態が大きく変わることから、従来の“紙”をベースとした業務のあり方についても根本的な見直しが必要になる。
 あまり意識していないかもしれないが、この“紙”をベースとする業務からの脱却は、行政サービスの本質的な変革だ。当面、混乱と慌ただしさのなかに時間が過ぎていくと思うが、国税連携をただのエピソードで終わらせないためにも、この機に業務プロセスの最適化をしっかり検討することが肝要といえるだろう。

テーマは電子申告の利用拡大へ

 さて、先に紹介した地方紙の報道は、9月末現在の地方税の電子申告の実施状態を報じたものだが、これを機に各紙が地元の今後の動向に注目することは間違いない。また、今回の報道を受けて「Twitter」でつぶやく個人も登場し、電子申告への関心は幅広い世代に広まった。市区町村にとっても、こうした動きは無視できないだろう。
 地方税の電子申告の利用件数を見ると、今年9月末現在で約112万件(前年同期比159.9%)となった。このことから、サービス実施団体の増加とともに、利用件数も順調に伸びていることが分かる。
 しかし、今年4月に国税庁が発表した『平成21年度におけるeTaxの利用状況について(概要)』によると、重点15手続の利用件数は1,658件(前年対比116%増)に達し、このうち法人税申告は127万件、給与所得の源泉徴収票等は123万件となっている。一方、地方税の電子申告では、法人市町村民税が40万件、個人住民税(給与支払報告書)は47万件と、いずれも国税の半分にも満たない。
 その要因はただ一つ。すべての市区町村で、地方税の電子申告受付サービスを実施していないことだ。
 全団体で電子申告の受付が始まらなければ、企業にとっては業務効率化にもコスト削減にもつながらない。特に、全国で事業所を展開する中堅・大企業の場合、地方税が実現されない限り電子申告をするインセンティブは低い。そのため、国税でも大規模な法人ほど電子申告の利用率が低下しているのである。
 こうした企業では、「電子申告は時代の流れ」と認識しながらも、「紙による申告と電子申告が混在すると、作業が煩雑となり、現状では見送らざるを得ない」のが実情なのだ。
 すべての市区町村がサービスを実施すれば、これまで電子申告できなかった企業の利用が進むのは確実で、国税・地方税の電子申告利用は相乗効果で増えていくことになるだろう。その結果、市区町村の業務効率化やコスト削減も進むわけだ。その意味では、6割の市区町村で電子申告が実現したいま、取り組むべき最大のテーマは利用件数をいかに伸ばすかに変わったともいえる。
 国税連携の実現は、地方税務の現場にとって恐らく歴史的転換点となる。これをベースに、『新たな情報通信技術戦略』の動きのなかで、今後さらなる業務改革も検討されていくことだろう。新戦略は「利用者視点の行政サービス・行財政改革」を掲げているが、電子申告の実現とはいわばそのための試金石なのである。残り700団体が、未来への“スタートライン”へ一日も早く立つことが強く望まれる。