電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【トレンドビュー】

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 総務省は、自治体クラウドを推進するための法案を来年1月の次期通常国会へ提出する方向で調整に入った。11月までにクラウド導入の推進策を具体化する。そうした国の後押しもあって、今後急速に拡まるであろう「自治体クラウド」だが、アプリケーションの話題ばかり先行し、その効果が実感できないという声もある。そこで、「TKCクラウドサービス」を例に、行政情報システムを取り巻く環境がどう変わるか、について考えてみる。

 地方財政が厳しさを増すなか、市区町村では情報化コストの抑制が喫緊の課題となっている。これを解決する一つの手段として期待されているのが「クラウドコンピューティング(以下、クラウド)」の活用だ。その効果をひと言で表せば、「電子自治体の最適化」ということになる。

 TKCでは、これまで(1)バックオフィスサービスを支援する「TASK.NET」、(2)フロントオフィスサービスを支援する「TKC行政ASP」、(3)大量一括処理を支援する「アウトソーシング・サービス」を提供し、電子自治体の構築を支援してきた。ただ、これらはクラウド時代になっても欠かせないコンポーネントであることに変わりはない。
 そこで、「TKCクラウドサービス」では、3つのサービスを最新技術によって統合し、電子自治体の最適化を支援するサービスへと進化させる方針を打ち出した。その特徴は、(1)システムの最適化とトータルコストの抑制、(2)業務プロセスの簡素化・効率化、(3)最高度の情報セキュリティ確保、(4)住民サービスの向上──の支援などである。今後の各種施策の動向なども見ながら、段階的にサービスを拡充していく計画だ。

目的により活用法も変わる

 国がクラウドの利用促進へ本腰を入れ始めたことで今後、多くの市区町村が採用に向け動き出すだろう。そこでポイントとなるのが“所有”から“活用”へ発想の転換だ。
「TKCクラウドサービス」のうち、LGWANを基盤とする「TKC行政ASPサービス」については、平成15年11月より提供を開始し、現在9つのサービスが述べ1,000団体超で利用されるまでに広まっている。狭義の意味では、すでにこれだけの市区町村がクラウドを“活用”していることになるわけだ。
 この「ASP/SaaS」技術は、庁舎内外の利用者をネットワークでつなぐという点で大きな強みを発揮する。そのため住民向け電子行政サービスのほか、本庁舎や出張所、小学校など出先機関も含むすべての部門が利用する財務会計システム等での活用が有効といえるだろう。この分野においては、来年春をめどに「証明書コンビニ交付システム」の提供を開始するなど、今後も技術特性を活かしたサービスメニューの強化拡充を計画している。
 一方、住民課や税務課など閉じられた世界で利用される基幹システムの場合は、利用者の広がりよりも、業務特性に合わせ、より高度な情報セキュリティ対策や操作性・処理スピードの向上に主眼を置いた仕組みが求められるだろう。そこで今秋のパイロット提供(平成23年春正式提供予定)を目指し、仮想化技術による「TASK.NET」のシンクライアント対応へ取り組んでいる。

 ちなみに「シンクライアント」とは、システムやデータなどはサーバで集中管理し、クライアントパソコンでは必要最小限の処理しか行わないようにする仕組みのことだ。これにより、「処理スピードの向上」「トータルコストの抑制」などの効果が期待され、なかでも「情報セキュリティ対策」は格段に強化される。
 この「TASK.NET」は、現在、全国100団体以上で同一のパッケージシステムが活用され、また、システムの利用料は「月額レンタル」制で、例年発生する軽微な制度改正に伴う改修もその範囲内で対応する──など、もともとクラウド環境に馴染みやすい特徴を持つ。
 加えて今回、シンクライアントに対応したことで、市区町村ではシステム整備状況や業務形態など個々の事情に合わせ、「サーバを庁内に設置」「TKCインターネット・サービスセンターへハウジング」「システムの共同利用」のいずれの方式でも自由に選択して、TASK.NETを活用できるようになる。
 こうした活用の“柔軟性”も、クラウドだから実現できる世界といえるだろう。

長期的な視点で考える

 さて、総務省ではすべての自治体において、システム更新時期に合わせて順次導入を推進するとしている。
 だが前述の通り、何を目指すかによって、システムに活用する技術や仕組みは大きく変わるのである。その意味では、市区町村がクラウドを導入する際にも、何を目指すのか目的を明確にし、各社のサービスやそれを支えるインフラ(例えば、サービス拠点となるデータセンターなど)が目的を達成できるものかどうかを十分に見極め、時には使い分けをすることも必要となるだろう。

 また、情報資産を活用するということでは、“長期的な視点”を持つことも大切だ。
 クラウド導入の目的で、すべての団体に共通するのが「コスト削減」だろう。しかし、その場合でも、長期的な視点でトータルコストの削減に焦点を当てて考えるべきである。特に、国民ID制度や標準仕様書の策定などに伴い、今後、大規模なシステム改修が発生することも想定される。未来予測はなかなか困難だが、例えば過去五年間の改修費を含むトータルコストを比較分析するなどにより、コストの“最適化”を図る努力は欠かせない。
 また、情報セキュリティの観点では、民間事業者へ住民情報を預けることへの心理的抵抗感が根強いことから、市区町村としては、とかく情報漏えいなど「安全性」に意識が向きがちだが、外部の情報資産を活用するということでは、これまで以上に「事業(業務)の継続性・安定性の確保」が必要となる。
 多くの市区町村にとって、クラウドが有効な選択肢となることは間違いない。それらをうまく活用して電子自治体の最適化を図るためにも、まずはじっくり研究し、市区町村自ら最適なものを選ぶ“眼”を養うことが肝要といえる。