電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【トレンドビュー】

タイトル

 いま、市区町村の課税・徴収業務において、新たなICTの活用が意識されるようになってきた。背景には、「納税者の利便性向上」と「職員数削減に伴う業務の効率性の向上」の追求がある。
 前者の代表例が「コンビニ収納」など収納チャネルの拡大であろう。
 総務省の『地方税の収納・徴収対策等に係る調査』によると、平成22年7月1日現在で、「コンビニ収納」を実施している市区町村は486団体(前年度378団体)、「クレジットカード納付」は25団体(同18団体)、「マルチペイメントネットワーク(ペイジー)収納」は25団体(同21団体)と、住民視点のICT活用が着実に増加していることが分かる。
 最近では「ペイジー口座振替受付サービス」なども注目されている。これは、銀行届出印の代わりに市区町村窓口でキャッシュカードを提示すれば口座振替の申込手続きが行えるもので、住民は手続きの煩わしさから解放され、行政にとっては口座振替推進の打ち手となることが期待される。また、電子申請で市税等の還付金の口座振込の申し込みサービスを開始する団体も増えてきた。
 さらには、電子申告の利用が広まることで、今後、電子納税への対応準備も急速に進むと予想される。
 こうした収納チャネル拡大の第一の効果は、時間や場所に捉われないという「納税者の利便性向上」である。平成22年度からクレジット収納を開始した栃木県さくら市では、利用件数の3分の1が20~24時に集中しており、その便利さが住民に受け入れられているのであろう。

 そしてもう一つ、「新たな滞納を極力発生させない」という効果も期待される。収納チャネルの拡大とは、いわば納税者が“税金を納めやすくする”環境の整備にほかならない。
 これについて、今春にクレジット収納サービスを開始した茨城県下妻市の鈴木静夫収納課長は、「クレジット収納の場合、現金が手元になくても納付ができ、支払い方法も納税者の都合に合わせて選べる。カード会社のポイントが貯まる点も納税者のメリットだ。また、徴収する側としても手間をかけずに期限内納税を推進できる点が魅力」と語る。

地方税滞納は3年連続で増加

「業務の効率化」という点では、徴収・滞納整理におけるICT活用の動きが注目される。限られた職員で徴収率向上を図るには、ICTの活用で削減できた事務作業の時間を滞納者との折衝等にあてるなど、業務の“選択と集中”が必須となっているのである。
 市区町村では、この5年間で『集中改革プラン』の策定により職員数やその配置の適正化を図ってきた。その結果、平成17年4月1日から平成22年4月1日までの5年間で、職員数は政令指定都市が10・6%の減少、その他市区町村が9・9%の減少となった。
 一方、地方税の滞納額は、平成14年度の2兆3,468億円をピークに改善しつつあったが、平成19年度から再び増加に転じ、平成21年度決算ベースでは2兆816億円(前年度比1・7%増)となっている。景気低迷による個人住民税の滞納増が主因で、これにより3年連続の増加となった。国民健康保険料(税)の滞納分と合わせると、3兆5,170億円と税収の約1割に相当し、市区町村の財政悪化の一因ともなっている。つまり、担当者が削減傾向にあるなかで、処理すべき滞納額は年々増加していることになるわけだ。
 こうした現状に対応するには、本誌巻頭言で長瀞町の野原寿彦税務課長が述べているように、「公平公正な税徴収には、なるべく初期段階で滞納の悪循環を断ち切り、滞納額を増やさないことが重要」といえるだろう。そのため長瀞町では、民間委託により平成22年に「納税コールセンター」を開設し、自主的納付を呼びかけることで一定の成果を挙げているという。
 また、徴収・滞納整理業務のあり方や組織体制を見直す市区町村も相次いでいる。
 長崎県平戸市では、平成20年度に「市債権管理条例」を制定し、それまでの臨戸徴収を主体とした徴収業務を一転。悪質滞納者には捜索などの徹底した財産調査やタイヤロックなどの差押え、インターネット公売、合同公売会(複数自治体共催)を開催するなど法的整理を進め、徴収率向上を図ってきた。昨年4月1日には、税務課へ滞納対策室を新設し、市税の徴収強化や市営住宅賃料、給食費など私債権についても、支払い督促などの裁判所への法的手続きを行い、収入未済額や不納欠損額の縮減でも大きな成果を上げている。

 同様の取り組みは、いま全国へ拡大しているが、これに伴う管理業務の増加も避けられない。実際、平戸市が“最少の職員数で最大の効果” を挙げている裏には、実務に即した業務システムの活用がある。
 各部門にまたがる膨大な件数の滞納情報を一元的に管理するのはもちろん、公売による法的整理段階となれば1円でも高く落札されるよう物件ごとに公売方法・見積価額を検討し、換価までの進捗を管理しなければならない。しかも、担当者依存ではなく誰もが等しく処理できるよう、納税者の状況やそれに対する今後の対応など詳細情報の共有化を行い、業務の平準化も実現できる仕組みが不可欠となっているのである。

住民視点の課税・徴収業務へ

 さて、税負担の公平性は、行政に対する住民の信頼性を確保し、また真の地方分権を実現する上でも不可欠な課題であるといえるだろう。
 平戸市では、捜索をきっかけに多くの多重債務の存在が表面化したそうだ。そこで過払い金返還請求を行うことで、完納につながったケースも少なくないという。
 だが、滞納整理業務の役割は単に行政側の視点に立った徴収率向上や滞納額削減にとどまらない。納税者の視点に立って、根本的な滞納原因を解消するとともに、「司法書士や弁護士、ファイナンシャルプランナーと連携し、納税者の生活再建を支援する」(平戸市)ことでもあるのだ。
 それが結果的に、滞納を繰り返させないことにもつながるのである。
 日本はいま、「少子高齢化」に加え、「非正規雇用の増加等の雇用基盤の変化」や「地域・家族のセーフティネット機能の減退」などといった、社会・経済情勢の大きな変化に直面している。そのなかで、課税・徴収業務もまた一つの転換期を迎えたといえる。
 その意味では、市区町村の課税・徴収業務を支える各種業務システムも、お客さまの声に耳を傾けながら一段の進化を遂げていかなければならないと考える。TKCでは、そのための検討を開始したところである。