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岩手・宮城内陸地震から1年。いまだ復旧途中にあるなか、未来を見据え、市民視点で新たなサービスの提供へ踏み切ったまちがある。
それが宮城県大崎市。昨年12月より、地方税の電子申告の受付サービスを開始したのだ。なぜ、いま電子申告を導入したのか、大崎市総務部税務課に聞いた。

 大崎市は、平成18年3月31日、1市6町(古川市・松山町・三本木町・鹿島台町・岩出山町・鳴子町・田尻町)が合併して誕生した。
 現在、人口では仙台市・石巻市に次いで県内3番目、面積では栗原市に次ぐ規模となった。また、奥州街道が通るこの地は古くから交通の要衝として栄え、いまでは「ササニシキ」「ひとめぼれ」など米どころとして知られるほか、東北地方の縦軸と横軸を結ぶ結節点という利便性の高さから数多くの企業が集積している。
 そうした大崎市が、なぜいま電子申告へ取り組んだのか。大崎市総務部税務課は、「きっかけは税務業務の効率化だった」と語る。「毎年、課税時期になると残業が深夜や土日に及び、職員にも大きな負担となっている。なかでも給与支払報告書は件数も多く、これが電子化できるという点でかねてより地方税の電子申告に注目していた」(総務部税務課)のだ。
 折しも、そこに「公的年金からの個人住民税の特別徴収制度」がスタートしたことで、電子申告へ踏み切ったのである。
 団塊世代の一斉退職などもあって、この「超過勤務時間の増加」の問題は、いまいずれの市区町村にも共通した“悩み”なのではないだろうか。見方を変えれば、これまで目に見えなかった業務の“非効率”性が顕在化したともいえ、こうした状況が続くと市民サービスの低下も招きかねない。だからこそ大崎市では、「電子申告」という手段によって「税務業務の効率化」を目指そうとしたわけだ。

きっかけは税務業務の効率化

 電子申告の利用状況について尋ねると、20年度は法人市民税と固定資産税(償却資産)が、それぞれ全体の1.5%だったという。また、給与支払報告書については電子申告単体では集計していないものの、媒体提出分と合わせて約10%に達したそうだ。数字だけを見るとまだ決して多くはないが、わずか4か月あまりの実績として考えれば、今後に十分期待ができる結果といえるだろう。
 実際、企業の税務を代行する地元税理士も今回の市の決断を一様に歓迎しており、そうした納税者側の評価は「利用届出件数」の増加という形にも表れている。このように電子申告の利用増が予想されるなか、「税務業務の効率化」を実現するには、やはり基幹系システムとのスムーズなデータ連携が不可欠だ。そこで大崎市が選択したのが、「TKC行政ASP/電子申告支援サービス」だった。
 参考までに、大崎市における電子申告の導入効果を図にまとめたが、このうち「保管にかかる手間の軽減」とは一体どういうことなのだろうか。
 大崎市では、住民からの問い合わせなどに備えて、申告書等の原本を10年間程度保管しているという。その方法としては、後日の検索を容易にするため「画像管理システム」を導入し、申告書等を画像ファイルとして磁気媒体で保管し、原本は収納ボックスに入れて保管しているという。これがTKCのデータ連携システムにより、「申告データは自動的にPDF化されてデータセンターで10年間保管されるため、職員は一連の作業から解消され、保管スペースやこれにかかるコストを削減できる」というのである。
 また、繁忙期にも「審査サーバの稼動時間外でも基幹システムで連携されたデータの確認や、プレ申告データを送信できて安心」と話す。ただ、これは一過性の効果と考えているようで、担当者は「電子申告の利用が増えれば、深夜業務そのものが削減できるだろう」としている。

国との連携で住民利便性の向上へ

 さて、地方税の電子申告の最大の課題は、サービス実施団体が未だ一部に限られていることだろう。
 これについては大崎市も、「利用件数を増やすには大企業の動向がカギ。市としても地元企業へ利用を働きかけていくが、まずは実施団体が全国へ拡がらないと大企業は電子申告を利用する気にならない」と、他団体へサービスの早期実現を呼びかける。
 また、もう一つ早急に解消すべき課題として指摘するのが、エルタックス側の受付環境の強化拡充だ。
「現在の受付環境は、大企業が利用するのに決して十分な状態とはいえない。実際、大崎市でもある法人納税者が3,000件の固定資産税(償却資産)の電子申告をしようとしたところ、件数が多くてエルタックス側の制限を超えてしまい、結局、紙で申告した」というのである。
 さらに、税務業務の効率化という点では、国税連携に加えて「軽自動車協会の県ナンバーの課税データや法務局の土地・家屋に関するデータなど、国・地方の組織間を越えた行政情報の利用」への期待感を示す。これは利用者(住民)の利便性向上の観点からも、早期実現が望まれることといえるだろう。
 地方公共団体を取り巻く社会経済情勢が大きく変わりつつあるいま、地方行政の業務プロセスも変化させるのは当然のこと。大崎市では、「地方税の電子化は、そうした動きの一つ。時代の流れをチャンスととらえ、業務の効率化・適正化へ向けて取り組んでいく」と考えているそうだ。