電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【ユーザー訪問】

タイトル

──真岡市の概要を教えてください。
増山
 真岡市は、栃木県の南東部に位置し、東に連なる八溝山地、西に流れる大河鬼怒川を抱える自然環境豊かな都市です。平成21年3月に二宮町と合併し、現在に至っています。

──新地方公会計制度改革への取り組み状況はいかがですか。
増山
 平成19年に総務省より示された公会計の整備指針などを受けて、財務書類の作成に向けた取り組みを開始しました。平成21年度から「総務省方式改訂モデル」による財務書類4表を作成・公表しています。平成20年に合併があったため、実質的に作業を開始したのは平成21年度に入ってからとなりました。作成にあたって、まず栃木県市町村職員研修協議会主催の実務研修会へ財政係と特別会計の担当者が参加し、新地方公会計制度に関する理解を深めました。また、研修後には、財産管理担当や会計担当、特別会計担当係決算担当の職員を対象に、説明会を実施しました。
高松 普通会計の財務書類は、財政係で取りまとめました。また、連結財務書類については、各部署へ専用のワークシートを配布して入力を依頼し、財政係では関係資料と各部署から回収したワークシートを見ながら、相殺処理などを行いました。並行して、これまで紙ベースで管理していた固定資産台帳の電子化にも取り組み、道路・水路を除く土地・建物の情報を整理しました。

職員スキルの維持・向上が不可欠

──財務書類の作成にあたり、課題となった点はどのようなことですか?
増山
 やはり、これまで馴染みのない「新地方公会計制度」へ、いかに慣れるかが課題でしたね。研修会へ参加したことで基本的な知識を得ていましたが、知っていることと実務でできることとは違います。特に、財務書類4表を初めて作成する場合、開始貸借対照表を作る必要があり、かなり苦労しました(笑)。財政を担当する職員は、決算統計について正しく理解するだけでなく、これからは財務書類の作成実務や資産整備などさまざまな知識が要求されます。特に財務書類は毎年継続して作成していくものです。現在は研修会に参加した職員が中心となって財務書類を作成していますが、職員の異動も想定しながら今後、担当者のスキルをどう維持・向上していくかも課題です。その意味では、継続性を担保できる体制や業務プロセスの整備にも急ぎ取り組む必要があるでしょう。
──なるほど。

高松 また、各部署に作成してもらったシートのなかには、どうしても帳尻が合わないものもあります。連結作業では、これらについて各部署の会計担当者と財政係で一つひとつ原因を突き止めていったのですが、これも大変な作業でした。さらに、時間的な制約もあります。真岡市では9月議会の決算参考資料として、普通会計の財務書類を提出していますが、そのためには8月中旬をめどに作成する必要があります。総務省方式改訂モデルの場合、決算統計の数値を組み替えて財務書類を作成しますが、5月の出納閉鎖期間終了後に決算と並行してこの作業を進めなければならず、担当者の負荷は相当なものでした。そうしたなか、TKCが財務書類4表を作成できるシステムを開発していると聞き、担当者の負担軽減や制度改正などへ柔軟に対応するため、「TKC行政ASP/かんたん財務書類システム」を導入しました。今回、普通会計については、システムを使って財務書類を作成したのですが、3週間程度で完了しました。これで、担当者の負担軽減は図れたと感じています。

行政評価との連携を視野に

──財務書類の活用など、今後の計画について教えてください。
増山
 中長期的には、真岡市の状況を多面的な角度から把握できる指標としての活用が考えられると思います。例えば、地方債の償還可能年数や行政コスト対税収等の比率などですね。また、真岡市では、市民に対して透明性があり、成果を重視した行財政運営を行うために、「施策評価」と「事務事業評価」に取り組んでいます。その意味では、行政評価システムと地方公会計との連携が今後は重要になっていくでしょうね。特に、限られた行政財源の効率的な配分という点では、「行政コスト計算書」などが有効なツールになると考えています。例えば、真岡市では施設が老朽化し大規模な改修時期を迎えています。こうした場合に、民間企業の「減価償却」といった考え方を採り入れながら、将来をシミュレーションすることもできるでしょう。
──おっしゃる通りですね。
増山
 また、財務書類の住民向けの公表では、住民視点でもっと分かりやすい説明のあり方を検討していくことも必要です。特に、真岡市では「もおかコットン債」という住民参加型市場公募債を毎年発行しており、投資される方へ安心感を醸成するためにも、民間企業のように財務情報を活用していただける環境整備が期待されます。
高松 新地方公会計制度は始まったばかりで、固定資産台帳の整備など取り組むべきことはまだ山ほどあります。また財務書類の精度を高めるためには、やはり複式簿記の考え方を採り入れた「基準モデル」への早期移行も不可欠です。少ない人数で、これらの業務をこなしていくためには公会計システムの活用が避けられません。TKCシステムに大いに期待したいところですね。
増山 公会計制度は、今後も随時改訂されていくことでしょう。我々のスキルもまだ十分とはいえませんが、新たな公会計制度を活用して行政の透明性を高め、市民と行政の協働のまちづくりを一層推進していきたいと考えています。