電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【ユーザ訪問】

タイトル

──矢板市における、これまでの情報化の取り組みについて教えてください。

石川 電算化した当初から、ずっとTKCの分散処理方式を利用していました。その後、より高い安定性と柔軟な運用を目指して、平成6年の財務会計を手始めにホストコンピュータによる自己導入方式を採用し、平成8年には住基、平成11年には総合福祉・税システムと相次いで切り替えました。そして、平成23年春、再び「TASK.NET」シリーズへ戻したわけです。その理由となったのは、時代環境の変化です。ホストコンピュータを自己導入した場合、初期投資はかかるものの、制度改正がなければ稼働後の運用経費はほぼ一定で推移します。また、庁内で処理を完結できるという点でもホストコンピュータに軍配が上がると思っていました。しかし、平成12年の介護保険制度を皮切りに、老人保健制度の廃止、後期高齢者医療制度の施行など各種制度が目まぐるしく変化するなか、運用経費が導入当初の予想を大きく上回るようになりました。今後も制度改正が続くことは明らかで、さらにコンビニ交付など新たな住民サービスの登場により、従来のやり方では限界が見え基幹システムの見直しが必至でした。その結果、現時点で最適な手段として選んだのが、パッケージシステムだったんです。

絶対条件だったハウジング

──今回のシステム刷新にあたっては、サーバのハウジングを前提とされましたが、その理由は?
石川
 それには大別して、(1)システムの安定運用とそれに伴う経費・労力の削減、(2)業務継続性の確保──の二つの理由があります。私も長い間、電算部門に携わってきましたが、情報システムを安定的に運用するには経費とともに相当のパワーが必要です。それに、庁舎へサーバを設置するとなると、その環境の管理面で職員にはかなり細かい配慮が求められるようになります。その点、ハウジングにすれば、トラブルの予兆監視や障害発生時の対応などはデータセンターに任せることができ、それまでシステムの運用・管理に必要だった人員や作業負担を大幅に削減することができます。また、業務の継続性という点では、電算室自体が古い建物で以前から耐震性が気になっていました。しかし、新たな電算室を造るとなると、かなりの経費が必要となります。そのためこれについても、ハウジングにすることで問題解決がはかれると考えました。その意味では、ハウジングは比較的少ない投資で住民情報を安全に守ることができるため、特に団体規模が小さいところほど有効な手段ではないかと思います。
──データを庁舎外に置くことへの抵抗感はなかったのですか。
石川
 もともとバックアップデータを本庁舎とは別の場所にある電算室で管理していたことに加え、実際にデータセンターを視察して設備や運用の状況を確認していたことで、さほど不安は感じませんでしたね。また、東日本大震災の発生でこの一帯も一時停電に見舞われましたが、電力復旧後、何事もなくすぐにシステムを使えたことは本当に助かりました。この時のことについては、後日、近隣の自治体からも問い合わせを受けましたが、今回の震災を機に、多くの自治体が住民情報など重要データの保全について認識を新たにしたと実感しています。
──なるほど。
石川
 ハウジングによりデータの安全性が確保されたことで、最低限の業務の継続性は確保できました。ただ、災害に限らず、短時間の停電などにより業務の継続に支障を来すということは日常でも十分に起こりうることです。実際に矢板市では以前、工事用車両が誤って近くの電線を切断し、数時間の停電に見舞われたことがありました。業務継続を阻害するリスクを考え出すとキリがないのですが、着実にできる限りの対策をとっていきたいと思っています。

時代とともに考え方も変えるべき

──基幹系システムをハウジングへ切り替えたことで、どのような変化がありましたか。
石川
 情報システムの運用にかかる業務が減ったことで、職員数は削減できました。ただ、各課からの相談を受けるなどの支援業務は思ったほど減らず、これでは部門は廃止できませんね(笑)。その意味では、電算部門に求められる役割が変わったのだろうと考えています。また、各課の業務プロセスも“パッケージに合わせる”という形で変化しつつありますね。原課にとっては“痒いところに手が届く”ホストコンピュータの便利さから、なかなか抜けきれないところもあるとは思いますが、どちらがいい悪いではなく、「時代や環境とともに業務プロセスも変化する」ものと考え方を変えなければいけない。そこから業務改善も始まるのではないかと考えています。
──今後の情報化計画について教えてください。
石川
 システムを切り替えたばかりで、よくも悪くも、評価はまだこれから。まずは、現在の業務プロセスをベストな状況にもっていきたいと考えています。その上で、住民サービスの側面から、総合窓口やコンビニ交付、コンビニ収納なども検討していきたいですね。将来的にはクラウドへの移行も視野に入れながら、国の動向などにも注目していきます。今回、矢板市ではハウジング方式を選択しましたが、これからも、その時点で最適な仕組みを柔軟に採り入れながら、「住民サービスの向上」と「便利で効率的な行政運営の実現」へ取り組んでいきたいと思います。