電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【ユーザー訪問】

タイトル

──公共施設案内・予約サービスを開始したきっかけを教えてください。

橋本 現在の海南市は、平成17年に旧海南市と旧下津町とが合併して誕生しました。合併後は旧下津町で稼働していた自庁構築型の施設予約システムを引き続き運用しましたが、システムと紙の台帳による管理業務とが混在するなど「住民の利便性向上」と「業務の標準化・効率化」の両面から、早急に解決すべき課題が残りました。そこで昨年、システムがリプレース時期を迎えたのを機に、「市民視点に立った行政サービス」という観点から業務全体の見直しを図った結果、海南市としてASP方式によるシステムを導入し、インターネット等を活用した公共施設案内・予約サービスを開始することになったんです。ASP方式を採用した理由は主に、①自庁構築型と比較し低コストで導入可能、②余分な情報資産を持たずにサービスが運用できる、③LGWANの利用で高いセキュリティ環境が保たれる──ことの3点です。最終的に、「住民向けオンラインサービスの実績」に加え、「フロントシステムとバックオフィスシステムとの連携」など将来性も考慮してTKCシステムを採用しました。

市民視点でサービスを見直し

──市民の反応はいかがですか。
南口
 現在、2か所の文化施設(市民会館、海南市民交流センター)と、体育館や運動場など8か所の体育施設で、49の施設を対象に予約受付サービスを提供しています。受付時間は、午前9時~午後9時までです。これは高齢者などインターネットを利用できない方がいることに配慮して、窓口での受付時間と合わせているものですが、住民からは「24時間、空き状況を確認できるだけでも便利」という声をいただいています。

宮尾 サービス開始にあたっては、電話予約を残すとともに、主要な公共施設四か所へKIOSK端末を設置しました。しかし、実際にサービスを開始してみると、団体で施設を利用するケースがほとんどで、グループのなかにはパソコンを利用する方もいることから、当初心配したほど高齢者など情報弱者が不便になるということはありませんでしたね。
──利用件数はいかがですか。
上田
 昨年10月1日にスタートしてから約10か月間で、市民からの予約件数は、パソコンが約4,800件(アクセス件数は約1万6,000件)、携帯電話が約1,300件(約5,200件)、KIOSK端末が約300件(約5,000件)となっています。また、職員の利用件数は約1万件(約1万9,000件)という状況です。利用動向としては、サービス開始直後から同じようなペースで利用されていますね。これは利用時間が限られているためとも考えられますが、今後は情報弱者への配慮ともバランスをとりながら受付時間の拡大を検討したいと思います。
──なるほど。
上田
 オンライン利用は、体育施設の予約が圧倒的に多いですね。体育施設だけを見ると、電話予約はほとんどなく、オンライン予約が90%を超えています。一方、市民会館の場合は高齢者が定期的に使うケースが多く、こちらは窓口や電話による予約がいまもあります。このように施設によって特徴があるため、利用状況を見ながら対象施設を見直し、より効果的なサービスとしていく考えです。利用動向として注目されるのが、当初は携帯電話からの利用が多かったのが、最近ではパソコンの利用が急増したことです。原因は分かりませんが、海南市では3か月先までの予約が可能なため、オンラインサービスの浸透に伴い、定期的に施設を利用する方が、まとめて予約するのに便利なパソコンへシフトしたものと推測しています。

職員の仕事が変わった

──業務面の効果はいかがでしょうか。

南口 管理業務は軽減しましたね。また、システム導入を機に施設ごとにバラバラだった運用ルールも統一したのですが、この時、従来方法を軸に考えるのではなく、思い切ってシステムに合わせて実務面を見直しました。これにより、「業務の標準化」は確実に進んだと思います。そしてもう一つ、大きな効果と感じているのが、利用者の動向や意識変化などを把握できるようになったことですね。
──というと?
南口
 施設予約サービスを利用するには、事前に利用者登録を行います。現在、100団体以上が登録されていますが、この利用者情報管理メニューから、「市内にどんな団体がいくつ存在するのか」「利用が増加しているのはどんな団体か」などが把握できるようになったんです。紙の台帳で管理していたら、こう簡単にはいきませんよね。例えば、近年ではフットサルの団体の利用が増えていますが、こうした情報を把握できると、単に施設予約管理を行うだけではなく、フットサルの備品を優先的に増やすなど、市民視点でサービスの質的改善や新たなサービスの創出へとつながっていきますよね。
──今後の展開を教えてください。
橋本
 現在、和歌県全体で電子申請サービスについて検討しています。また、海南市としては地方税の電子申告を早々にスタートする考えです。さらに、東南海・南海地震への備えとして、「市町村サーバの第2次バックアップサービス」の活用も始めました。9月7日の防災訓練の際には、業務継続の観点からデータ復旧訓練も行う予定です。情報システムの運用・保守を職員がすべて担うのは限界があるため、いずれ基幹系システムもハウジングするなど、アウトソーシングを有効活用していきたいですね。そして我々職員は、ますます高度化・多様化する市民ニーズに即応し、「元気ふれあい安心のまち海南」を目指して、市民視点でさらに効果的・効率的な行政運営を進めていきたいと考えます。