電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

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──上尾市では平成20年から地方税の電子申告を実施されているそうですね。

北川 平成20年12月15日から、法人市民税と固定資産税(償却資産)の電子申告受付を開始しました。今年12月からは、新たに給与支払報告書と電子申請・届出のサービスもスタートします。担当レベルで検討を始めたのは平成17年頃からで、以来、電子申告を導入しなければ課税事務ができない時代が来ると考えていました。
 上尾市に限らず、どの市区町村も財政が逼迫し、また団塊世代の一斉退職などもあって職員数は減少する一方です。電子化の波にうまく乗らなければ、少ない職員数で課税事務を処理することができなくなるでしょう。

コスト削減効果が大きい国税連携

──とはいえ、導入コストの回収は難しいのではないですか?

松木 確かに、当初は投資に見合うだけの効果はあまり期待できません。ただ、ご存知の通り、国税との連携が実現すれば、職員が税務署に提出された確定申告書を取りに行く作業や、申告書の分離・複写作業にかかる人件費、また外部業者へ委託しているパンチ入力の委託料などのコストが削減されます。さらに、給与支払報告書は年間13万枚程度取り扱いますが、これについても将来的には同様のコスト削減効果が出てくるだろうと考えています。「電子申告と国税連携の実現によって、将来的にこうしたコストを減らすことが可能です」と現場サイドから示すことができたのは、導入に踏み切る大きな説得材料になったと思います。
 また、紙の申告書については、現在、7年間保管しています。とはいえ庁舎に置いておけるのはせいぜい2、3年分で、それ以前のものは別の場所で保管しているため、例えば市民や税務署から問い合わせがあるたびに、保管場所まで出向いて確認する必要がありました。この点、データが電子化されると机に座ったまま内容を確認できるようになります。こうした問い合わせは案外多いので、まさに省力化が実現できますね。
──納税者に対する告知はどういった方法で行ったのですか?

島山 市の広報誌やホームページで案内したほか、税務署主催の年調説明会、また、社団法人上尾法人会や税理士会にも告知活動を行ったんですよ。具体的には平成20年秋にチラシを作成し、法人会会報誌に同封してもらいました。これにより、電子申告が開始されることを知ったという方も多く、かなり有効な活動となりました。
──現在の利用率はどれくらいですか?
北川
 開始月である平成20年12月時点では、法人市民税は10.9%の利用率でしたが、今年4月には29.3%まで増えています。これは予想を上回る結果です。この利用率の高さには、さいたま市をはじめ、近隣で電子申告を実施する市町村が多かった影響もあると思います。全国とまではいかなくとも、近隣市区町村が一斉に電子申告を実施することで、より納税者が利用しやすい環境が整うのではないでしょうか。
島山 そうですね。開始当初1年間は、周知をはかるために、すべての法人に対して申告書と一緒に電子申告の開始と概要を書いたパンフレットを送っていました。これだけ利用率が伸びているのは、電子申告を待っていた納税者がいたということだと思います。

納税者は待っている

──納税者からの問い合わせを受けるためにどんな体制をとったのでしょう。
松木
 電子申告をスタートする前に、すべての市民税課の職員を対象に説明会を実施して対応準備を整えましたが、実際に問い合わせ件数はゼロでしたね(笑)。利用するのは税理士さんがほとんどで、すでに国税を通じて電子申告を熟知されている方が多かったからではないかと思います。実は、導入決定以前から、税理士さんを中心に「早く電子申告を導入して欲しい」という声を多くいただいていました。そうした期待が、利用開始月から当初予想の7%を上回る10.9%という利用率に達したことに表れていますよね。
──システム準備はいかがでしたか?
島山
 電子申告システムの導入はスムーズに進んだのですが、基幹システムのリプレース時期と重なったこともあり、開始当初からの基幹システムと電子申告システムの自動連携は考えていませんでした。ただし、データの自動連携はいずれ必要となることで、始めるならば件数が少ないうちが低リスクであることも確かです。
 また、手動でのデータ連携は、情報セキュリティ面や職員の作業負荷という観点から考えても、決して得策ではありません。そこで、「TKC行政ASP/地方税電子申告支援サービス」の「データ連携システム」を活用し、基幹システム側へ電子申告データを自動連携できる仕組みを構築することにしました。平成20年8月から翌年1月まで、基幹システムのベンダーも交えて7回に及ぶ打ち合わせを行い、半年の開発期間で基幹システムと電子申告システムの自動連携を実現しました。手動と自動、両方を経験したからいえることですが、やはり自動連携には高いメリットがあります。
北川 これまで繁忙期には、残業時間が職員1人あたり100時間になることもありましたが、サービス拡大により改善されることを期待しています。住民の利便性向上という点ではまだ課題も多いのですが、電子申告導入により、その一歩を踏み出したのではないでしょうか。

(取材・構成/フリーライター・三浦優子)