電子自治体推進を支援する情報誌「 新風」

【ユーザ訪問】

タイトル

──裾野市では、他団体に先駆けて「手のひら静脈認証」を採用するなど、ICTを有効に活用しながら、市民サービスの向上と業務の効率化に取り組んでおられます。また、今春には基幹系システムについて“プライベートクラウド”の利用形態へ移行されましたが、全体像を教えてください。

河合 財務会計は、以前からクラウドに近い環境で利用していたのですが、今年2月、住記・税務・介護保険など基幹業務にかかわるシステムを、シンクライアント方式の「TASK.NET」に移行し、これらのサーバ(19台)をTKCインターネット・サービスセンター(TISC)へハウジングすることで、いわゆる“プライベートクラウド”環境による利用形態へと切り替えました。本庁舎とTISCを100Mの専用回線で結び、また万一に備えてバックアップ回線(100M)も用意しました。こうした環境下で現在、本庁舎と3つの支所にある約195台のクライアントパソコンが稼働しています。

組織改革で「情報部門」が廃止に

──移行の理由は何だったのでしょうか。

勝又 きっかけとなったのは、サーバ室の問題です。本庁舎のサーバ室が手狭となり電源等も不足してきたことから、将来を考えて別施設への移転を検討したところ、空調設備やセキュリティ対策などで2億円かかるといわれたんです。それだけの投資は難しいため、代替案としてハウジングサービスを考えました。検討にあたって最も心配だったのは、処理速度が業務に耐えられるかどうかです。そして、その解決策として提案されたのが「画面転送型」のシンクライアントでした。システムやデータなどはサーバ側で集中管理し、クライアント側には画面上に表示される必要最低限のデータしか送られないため、処理速度に影響を与えないというわけです。それならば、と切り替えを決めました。心配していた処理速度については、C/S方式に比べてかえって速くなったように感じます。また、シンクライアントは、クライアント側の性能に依存しないため、旧型のパソコンも現役で活躍しているんですよ。
──稼働後、変わった点はありますか。
河合
 利用形態を切り替えただけなので、各課の業務面では従来と何も変わったことはありません。ただ、情報部門にとっては劇的な変化となりました。実は、先頃行われた組織・機構改革で独立した部としての情報部門を廃止したんです。これはクラウド化を機に業務の見直しを行った結果によるもので、現在は企画部企画政策課へ兼務を含め3名の情報システム担当を置いています。私は国保年金課へ異動しましたが、原課にいって視野が広がったなと実感しています。
勝又 私の場合、残業がほとんどなくなりました。これは驚きでしたね(笑)。
河合 ただ、想定外だったのが今回の地震です。これによりクラウドの利点と課題を再認識させられました。裾野市の一帯は、東海地震や神奈川県西部地震が発生すると甚大な被害に見舞われることが想定されています。その意味では万一、庁舎が被災してもデータやサーバは安全な場所に保管されているため喪失などの心配がありません。しかし、電力供給が停止すると、最悪の場合、情報システムが一切使えなくなってしまいます。シンクライアントの場合、瞬電程度ならば継続運用できることを検証していましたが、これだけ長時間にわたり停電することはこれまで想定していませんでした。この震災を教訓として、電力供給が長時間停止しても、窓口の業務を継続させる仕組みを早急に考える必要がありますね。

ポイントは個人情報保護への対応

──切り替えにあたって留意点は?
河合
 やはり、個人情報保護への対応ですね。いずれの団体でも同様の措置をとっていると思いますが、裾野市では紙・電子を問わず個人情報の目的外利用や外部提供をする場合、「個人情報保護審査会」による審査が必要となっています。今回、ハウジングの実施に伴い審査が行われましたが、その結果、この場合は個人情報を預けるのではなくハードウェアごとデータセンターで運用するため、個人情報の情報通信提供にはあたらないという結論が下されました。クラウドに切り替える場合、最短では半年程度で移行可能だと思いますが、個人情報保護の審議には時間がかかることも予想されることから、もし移行を考えているならば早めの準備が肝要でしょう。
──今後の計画について教えてください。
河合
 市では、多様化する市民ニーズに対応した窓口サービスを提供するため、「効率的な窓口サービス」と「窓口サービス機能の充実」に取り組んでいます。すでに実施中の「カルテ方式(窓口連携型)の総合窓口化」について内容の充実を図るほか、コンビニ交付やクレジット収納なども今後検討していく計画です。プライベートクラウドにより、こうした新サービスを展開する場合でもスペースや設備を気にせずに柔軟な対応が可能になります。ICTの革新とともに、新たな行政サービスもどんどん誕生しています。今後も、最新技術を柔軟に活用しながら、市民サービスの向上へ取り組んでいきたいと思います。